福岡高等裁判所 平成22年(う)420号 判決 2011年4月27日
主文
1審判決中被告人に関する部分を破棄する。
被告人を懲役10年に処する。
1審における未決勾留日数中300日をその刑に算入する。
理由
第1 弁護人の控訴理由(量刑不当)
被告人を懲役10年に処した1審判決の量刑は,重過ぎて不当である。
第2 職権判断(訴訟手続の法令違反)
控訴理由に対する判断に先立ち,職権で調査したところ,1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるから,破棄を免れない。以下,説明する。
1審判決が認定した(罪となるべき事実)は,次のとおりである(被告人の氏名及び1審相被告人の「被告人」の表示は省略し,以下同様に表記する)。
「被告人及び甲野太郎の両名は,共謀の上,平成21年5月8日午前3時ころから同日午前8時ころまでの間,福岡市中央区天神<番地略>Aマンション111号の丙山花子方において,乙川一郎(当時27歳)に対し,かわるがわるその背部,腹部,胸部等を多数回にわたり手拳で殴打したり,足蹴にするなどの暴行を加え,さらに,同日午後4時ころから同日午後5時ころまでの間,同人に対し,同様の暴行を加え,よって,同日午後6時23分,福岡市中央区天神<番地略>所在の済生会福岡総合病院において,同人を出血性ショックにより死亡させた。」
被告人らは殺人罪の共同正犯(刑法60条,199条)として起訴されたものであるところ,1審は,被告人らに殺人の故意があったとはいえないとして,殺人罪の共同正犯の成立を認めず,縮小認定をして,傷害致死罪の共同正犯(同法60条,205条)が成立するとしたのである。
ところで,傷害致死罪の構成要件は,「身体を傷害し,よって人を死亡させた」というものであるから,同罪に該当する事実を(罪となるべき事実)として認定するには,同罪の構成要件の不可欠の要素と解される,被告人らが加えた暴行の態様,それにより被害者の負った傷害の部位,種類,程度等,そしてその結果被害者が死亡したことを具体的に摘示する必要がある。しかし,1審判決の(罪となるべき事実)には,被告人らが,被害者に暴行を加え,よって被害者を死亡させたとの事実は摘示されているものの,被害者の負った傷害の部位,種類,程度等は全く示されておらず,傷害と死の結果との因果関係も明示されてはいない。もっとも,上記(罪となるべき事実)には,被害者が被告人らから暴行を加えられ,よって出血性ショックにより死亡したという事実が摘示されているが,これは被害者の死の直接の原因(死因)である症状を摘示したものに過ぎないから,これのみで上記構成要件に該当する事実の摘示として必要十分であるということはできない(本件の場合,被告人らが,被害者に暴行を加え,それによって被害者に対し,肝臓挫裂,左肺破裂,肋骨骨折,左右腰椎横突起骨折等の傷害を負わせて,大量の内出血を生じさせ,その内出血により出血性ショックが引き起こされた結果,被害者が死亡するに至ったことを,できる限り明示すべきである)。
そうすると,1審判決は,傷害致死罪に該当する事実を認定するに当たり,刑訴法335条1項が規定する(罪となるべき事実)としての明確性を欠いた事実を認定したものというほかなく,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
第3 破棄自判
以上のとおり,1審の訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるから,刑訴法397条1項,379条により,弁護人の主張(量刑不当)について判断するまでもなく,1審判決は破棄を免れない。そこで,同法400条ただし書を適用して,被告事件について,更に判決する。
(罪となるべき事実)
被告人は,知的障害を有する乙川一郎(当時27歳)が,被告人らの言いなりになることを利用して,同人を偽装結婚等の違法行為に関与させてでも金を作らせ,その金を同人から取り上げようなどと考え,甲野太郎らと居住している福岡市中央区天神<番地略>Aマンション111号の丙山花子方などに乙川を寝泊りさせていた。これに対し,乙川は,被告人らが仲間扱いしてくれているものと信じ,さしたる理由もなく被告人らから暴力を振るわれるなど邪険にされることがあっても,被告人らを頼りにして,被告人らと行動を共にしていた。そのような中で,被告人は,乙川が被告人のことを嫌いなどと言い出したことを知り,その制裁のため,平成21年5月7日午後8時ころから,丙山方リビングで乙川を正座させていたところ,甲野が乙川から自分の行動を見られているとして立腹し,正座中の乙川の傍を通るたびに乙川を足で蹴り付ける暴行を加えるようになったのを見て,甲野と一緒になって面白半分に乙川を痛め付けようと考え,暗黙のうちに甲野と意思を相通じた上,翌8日午前3時ころから同日午前8時ころまでの間,上記リビングにおいて,乙川に対し,かわるがわるその背部,腹部,胸部等を多数回にわたり手拳で殴打したり,足蹴にしたりする暴行を加え,さらに,同日午後4時ころから同日午後5時ころまでの間,乙川に対し,同様の暴行を加えた。被告人及び甲野は,これら一連の暴行により,乙川に肝臓挫裂,左肺破裂,肋骨骨折,左右腰椎横突起骨折等の傷害を負わせて,大量の内出血を生じさせ,よって,同日午後6時23分,同区天神<番地略>所在の済生会福岡総合病院において,上記傷害に基づく出血性ショックにより乙川を死亡させた。
(証拠の標目)<省略>
(事実認定の補足説明)
1 本件公訴事実及び争点
(1)本件公訴事実は,「被告人及び甲野太郎の両名は,共謀の上,平成21年5月8日午前3時ころから同日午前8時ころまでの間,福岡市中央区天神<番地略>Aマンション111号の丙山花子方において,乙川一郎(当時27年)に対し,こもごもその背部,腹部,胸部等を多数回にわたり手拳で殴打したり,足蹴にするなどの暴行を加えるうち,このまま暴行を継続すれば同人が死に至るかもしれないと認識しながら,これを意に介さず,殺意をもって,同人に対し,こもごも力任せにその背部,腹部,胸部等を多数回にわたり手拳で殴打したり,足蹴にするなどの暴行を加え,さらに,同日午後4時ころから同日午後5時ころまでの間,同人に対し,前同様に激しい暴行を加え,よって,同日午後5時35分ころ,前記Aマンション北側敷地内において,同人を出血性ショックにより死亡させて殺害した」というものである。
(2)公判前整理手続の結果,本件の争点は「殺意の有無」,すなわち,被告人らが「このまま暴行を継続すれば被害者が死に至るかもしれないと認識しながら,これを意に介さず,殺意をもって」暴行を加えたと認められるかどうかであるとされた。
2 争点に対する判断
1審で取り調べた関係各証拠によると,被告人が殺意を有していたとは認められず,控訴審における事実取調べの結果を踏まえて検討しても,この結論は変わらない。以下,説明する。
(1)本件の争点は,上記のとおり,主観的な要件である「殺意」の有無であるが,本件の実行行為は,基本的には,手拳で殴打したり足で蹴ったりしたというものであって,一般的には死の結果が発生する客観的な危険性がさほど高いものとは思われないから,殺意の検討に当たっては,客観的な事実経過,すなわち被告人らの暴行の態様,被害者の受けた傷害の内容,死の結果が生ずるに至った経緯のみならず,犯行の動機や犯行後の被告人らの行動等を踏まえる必要がある。
そして,客観的な事実経過を確定するには,できる限り客観的な証拠によるべきであるから,本件についていえば,被害者の遺体の状況や,その司法解剖を担当した丁木医師の供述が,事実認定上最も重視すべき客観的,専門的な証拠である(このような観点からすると,丁木医師には,公判廷すなわち裁判員を含む裁判体の面前で,直接供述してもらうことも十分検討に値すると思われる)。また,被告人らの犯行を目撃していた丙山は,被告人の交際相手であって,被告人らに有利な供述をすることはあっても,嘘をついてまで被告人らに不利な供述をするとは思えない上,その供述内容は,後述するとおり,丁木医師の供述内容と整合しているのであるから,丙山の供述は,基本的に信用できるというべきである。したがって,これらの証拠を事実認定の柱に据え,被告人らの供述の信用性についても評価するべきである(なお,1審検察官は,上記のような立証方針によらず,大筋で合致している被告人らの自白を立証の柱に据えていた。被告人らの供述全体が,客観的,専門的な見地からの証拠によって裏付けられ,信用できるものであればよいが,本件の場合,後述するとおり,被告人らの供述には,客観的,専門的な見地からの証拠と矛盾する部分があって,当該部分は信用することができない。それにもかかわらず,1審検察官は,被告人らの供述が信用できると考えて主張を組み立てているのであり,客観的証拠を軽視し,根拠もないのに自白を重視した結果,立証方針を誤ったものといわざるを得ない)。
(2)以上を踏まえて検討する。
丁木医師の検察官調書及び控訴審における供述(以下「丁木医師の供述」ともいう)によると,被害者には,循環血液量の半分を超える極めて多量の出血が認められ,死因である出血性ショックは,①腰部,背部の傷からの内出血,②胸部,腹部の傷からの内出血,③両手両足の傷からの内出血が競合して引き起こされたものであり,中でも,最も重い上記①は,致命傷になり得るものであり,腸腰筋に守られていて骨折しにくい左右腰椎横突起が8本も折れていたことは,極めて強い攻撃が多数回加えられたことを裏付けていること,上記②についても,被害者の肝臓は強い外力を受けて約5センチメートル引き裂かれ,左肺は折れた肋骨が刺さって破裂し,気胸を起こしており,右肺は圧迫されて押しつぶされているから,被害者は,呼吸が浅くなり,胸部,腹部等に相当の痛みを感じていたはずであるし,合計19箇所の肋骨骨折等も,多数回にわたる極めて強い攻撃を裏付けていること,上記③についても,両手足の筋肉挫滅や両手足表面の夥しい打撲痕から,多数回の強い攻撃が加えられたことが明らかであることなどが認められ,被告人らが,背部,腹部,胸部をはじめ被害者の全身に対して,極めて強力な攻撃を多数回加えたことは明らかである。そして,その攻撃の強さは,被害者の左右腰椎横突起が8本,肋骨は心臓マッサージが原因である可能性のあるものを除くと19箇所も折れるとともに,肝臓が引き裂かれ,肺が押しつぶされるなどしていることからも分かるとおり,圧倒的な破壊力を備えていたと認められる。なお,被害者の出血状況からして,一度の攻撃で急激に出血したのではなく,一定の時間をかけてじわじわと出血したと考えられ,症状は徐々に悪化していったものと推認され,挫滅症候群のような突然死の可能性は低いというのである。
被害者にこれほどの傷害を与えた被告人らの暴行の具体的な態様やその際の被害者の状態については,基本的には,丙山の供述から認定するのが相当であり,丙山の供述によって認定できない具体的な攻撃態様等についてのみ,丁木医師や丙山の供述と矛盾しない被告人らの供述によって認定すべきである。
丙山は,被告人らが,平成21年5月8日午前と同日午後の2回にわたって,被害者に対して,手加減なく多数回にわたって殴る,蹴るなどの暴行を加えていた旨を述べており(ただし,午後の暴行の具体的な態様は判然としない),この供述は丁木医師の供述によって裏付けられているといえる。そして,被告人らからそのような攻撃を受けた被害者の状態についても,丙山は,被害者が徐々に弱っていき,「同日午後4時半ころには,被害者は,台所の棚の所に背を当てて座っていた,棚がなければ倒れていたと思う,両足は伸びた状態で,手は力が入らずぶらぶらしている感じだった,意識は遠い感じで,息は浅かった」旨を述べていて,丁木医師は,丙山の供述する被害者の様子は,被害者の遺体の所見とぴったり合うと述べているのであるから,そのころには被害者の意識障害,呼吸抑制等の症状が顕著に認められ,当時すでに,被害者は,出血性ショックの第4段階(循環血液量の4割を超える内出血が生じ,直ちに治療を始めなければ死に至る状態)に到達していたと推認できる。
これらを踏まえて,被告人らの供述の信用性を検討すると,被告人らの供述のうち,同日午前までの被告人らの暴行の状況や被害者の状態に関する部分については,丙山の供述と明らかに矛盾する部分があるとはいえず,その信用性を否定することはできないものの,同日午後の暴行に関する部分は,丙山の供述と整合しない部分があり,とりわけ,その当時の被害者の状態について述べる部分については,丁木医師の供述や丙山の供述と明らかに矛盾しているというべきであって,到底信用することができない。すなわち,被告人らの供述によると,同日午後4時過ぎころから午後5時ころまでの間,被害者に対して殴る,蹴るの激しい暴行を加えたが,被害者は,午後5時ころ意識を失うまでの間,被告人らに命令されて辛うじて正座をしただけではなく,足にヘアアイロンを挟むと痛がって膝立ちをしたり,ゆっくりとであればどうにか一人で立ち上がったりできるなど,自力で動くことも可能であり,また,被告人らとの会話が成り立っていたというのであって,被告人らが述べる被害者の様子は,痛め付けられて多少は弱っているようにはみえるものの,極めて大きなダメージを受けているようには到底みえないのである。他方,丙山は,同日午後の暴行場面について,重複する部分もあるがやや詳細にみると,「午後3時か3時半ころ,ドスンドスンという床に響くような音で目が覚め,また暴力を振るっていると思ったが,見たくなかったので見なかった,被害者は何発かに1回少し声が出るくらいだった,午後4時半ころシャワーを浴びようとした際,被害者は,台所の棚の所に背を当てて座っていた,両足は伸び,両手にも力が入らずぶらぶらしている感じだった,意識は遠い感じがして,息を吸い込むのも少し,吐くのも少しという感じだった,被告人が,被害者にコップを持たせ水を飲ませようとしていたが,被害者は自分の力でコップを持てる感じではなく,コップを持ったところも見ていないので,多分飲んでいないと思う,シャワーを止めたときにも,ドスンドスンと壁に当たるような音が聞こえていたので暴行は続いていたと思う,シャワーを止めて10分ほどして廊下に出てきたら,被告人は,廊下で焦ったようにして誰かと電話していて,「やばいやばい,やっちまった」などと言っており,甲野はただ立っているだけで,被害者は,いつもの場所に仰向けに横になっていた,甲野が,被害者が気絶している,心臓も段々弱くなっている,動かさない方がいいなどと言うので,被害者の肩を叩いて名前を呼んだり,脈を取ったりした」などと述べていて,午後4時半ころには,意識がもうろうとした状態の被害者を目撃したと述べるのである。そして,丁木医師は,被害者の出血量などからすると,亡くなる直前の被害者は,意識がもうろうとし,呼びかけに対してもほとんど応答できなかったと推察され,被告人らがいうように午後5時ころまで意識がはっきりとしている可能性は極めて低く,被告人らの供述する被害者の様子は「少し動きが激しい印象」であり,「少し元気過ぎる」と思われるが,丙山の供述する被害者の状況は,遺体の所見と合致している,というのである。そうすると,本件当日午後5時ころの被害者の状態は,被告人らが供述するような状態であったと認めることはできず,客観的,専門的な見地からの証拠と矛盾しない丙山が供述するような状態であったと認めるのが合理的である(なお,被告人らは,被害者に対して,本件当日の午後にもかなり激しい暴行を加えた旨を述べているところ,丙山の供述を踏まえると,被告人らが激しい暴行を加えたのは,午後4時半ころよりも前のことであったと思われるのである)。
したがって,被告人らの供述の上記部分は,客観的な証拠と矛盾していて信用することができないのに,これが信用できると認め,これらの証拠を使って事実を認定した1審判決には,看過することのできない経験則違反があるといわざるを得ない(1審判決は,丙山の上記供述について,被告人らの供述と整合しないこと,丙山が被告人らの行動を意識的に観察していたわけではないことから,被告人らの供述を排斥できるほどの信用性は認めがたいというが,上記のとおり,客観的な証拠による裏付けがある丙山の供述こそ信用できるというべきであり,1審が説示するような理由で丙山の供述の信用性を排斥することはできない。また,対立する被告人らの供述と丙山の供述の信用性を判断するに当たって,被告人らの供述が信用できることを前提としているようにも思われ,その点でも相当とはいい難い)。
(3)もっとも,丁木医師及び丙山の供述を前提に検討しても,被告人が殺意を有していたとは認められず,1審判決の結論に誤りはない。
すなわち,確かに,被告人らは,被害者に対して,極めて強力な攻撃を多数回にわたって加え続けたことが明らかであり,特に,丁木医師によると,折れた肋骨が左肺を突き破り,気胸が生じたのは,午後の暴行が原因とみられるというのであるから,被告人らは,すでに相当のダメージを受けていた被害者に対して,肋骨が折れるほど強い攻撃を加えたことも間違いないと認められるのである。しかし,そうはいっても,1審判決も指摘するとおり,被告人らは主として手足で殴る蹴るなどの暴行を加えたにとどまり,それだけでは直ちに被害者を死亡させる危険性が高いとまではいえず,暴行の態様自体から被告人らが殺意を有していたとは推認できない。また,被告人らは,判示のとおり,面白半分で被害者をいじめていたのであり,そのような動機からしても,被告人らとしては,被害者が死ぬかもしれないと考えたかもしれないが,それでも構わないとまでは思わなかったはずである。加えて,午後の暴行により被害者が意識を失った後には,狼狽して知人に電話をかけて相談をしたり,救急車を呼ぶなどして被害者に救命措置を施したりしているが,被告人らが未必的にせよ殺意を有していたとすれば,これらの行動に出るとは思われない。これらを総合すると,被告人らは,最終段階に至るまで,被害者を殺すつもりで暴行を加えていたとまでは認められないのである。
3 なお,被害者の死亡時刻については,1審判決が説示するとおり,被害者は,救急搬送先の病院で救命措置を施され,数分間心拍が再開し,最終的には午後6時23分に死亡が確認され,それが死体検案書の死亡時刻とされているのであるから,判示のとおり認定した。
(法令の適用)
罰条 刑法60条,205条
1審における未決勾留日数の算入 刑法21条(300日算入)
1審及び控訴審における訴訟費用 刑訴法181条1項ただし書(いずれも負担させない)
(量刑の理由)
被告人らは,被告人らを仲間だと信じて頼りにし,抵抗したり逃げ出したりすることができない被害者に対して,面白半分で,極めて激しい暴行を,情け容赦なく長時間にわたって加え,結果的に被害者を死亡させている。特に,被告人らは,被害者が大量の内出血により瀕死の状態にあったとみられる本件当日の午後4時ころ以降も激しい暴力を振るっており,被告人らの非情さは際立っている。また,被告人らの果たした役割や加えた暴行の内容に違いはあるものの,量刑上異なる取扱いを相当視させるほどの違いではないから,共同正犯が成立する以上,被告人らは同等に重い刑事責任を負うべきである。犯情は極めて悪く,被告人は,相当長期間の服役を免れない。
他方,本件には,被害者に対するいじめがエスカレ一トし,度を越してしまったという一面もあり,計画的犯行ではないこと,被告人らは,犯行後逃走しているものの,逃走前に救急車を呼び,被害者の救命を試みていることなど,1審判決も指摘する被告人にとって有利な事情も認められる。しかし,これらの事情を十分考慮しても,犯情の悪さからして,被告人は主文程度の刑を免れない。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 陶山博生 裁判官 溝國禎久 裁判官 岩田光生)