福岡高等裁判所 平成22年(ウ)210号 決定 2011年3月28日
申立人(基本事件控訴人)
株式会社Y
上記代表者代表取締役
甲野太郎
上記訴訟代理人弁護士
後藤孝典
後藤勝俊
相手方(基本事件被控訴人)
オリックス債権回収株式会社
上記代表者代表取締役
西海三男
上記訴訟代理人弁護士
黒木和彰
内田敬子
川口珠青
上記訴訟復代理人弁護士
山根義則
染谷翼
主文
本件申立てを却下する。
理由
第1 申立ての趣旨及び理由
申立ての趣旨及び理由は,別紙「文書提出命令申立書(第2回)」及び「文書提出命令申立に関する意見書(被控訴人平成23年1月31日付文書提出命令申立(第2回)に対する答弁書に対する反論)」と題する書面(各写し)に記載のとおりであり,これに対する相手方の意見は,別紙「文書提出命令申立(第2回)に対する答弁書」と題する書面(写し)に記載のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 基本事件の概要
基本事件は,株式会社福岡銀行(以下「福岡銀行」という。)の株式会社ピー・エー・ジー(以下「ピー・エー・ジー」という。)に対する貸金債権を譲り受けた相手方において,ピー・エー・ジーが会社分割して設立された申立人に対し,主位的に法人格否認を理由に貸金債権の元金等の返還を求め,予備的に不法行為又は詐害行為取消権に基づいて,同額の金員の支払を求めている事案である。これに対し,申立人において,これらを争うとともに,相手方が債権譲渡に当たり福岡銀行に支払った対価が4億円以下であり,将来回収することが確実とされる金額の合計額がこれを上回るから,相手方は害されていないなどと主張して,別紙「文書提出命令申立書(第2回)」中の「1 文書の表示及び文書の趣旨」欄記載の債権譲渡契約書(以下「本件文書」という。)の提出命令の申立てをしたものである。
2 提出義務について
申立人が,本件文書について,民訴法220条3号の「文書が挙証者の利益のために作成された」ものに該当するし,同条4号イないしホ所定の除外事由もない旨主張するのに対し,相手方は,本件文書が,同条3号には該当せず,同条4号ニの除外事由のうち「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する旨主張する。
確かに,本件文書は,申立人の権利や法的地位を基礎づけるために作成された文書ということはできず,同条3号の「挙証者の利益のために作成された」ものに該当するとは直ちにいい難い。しかし,本件文書は,相手方と福岡銀行との間で作成された契約書であるから,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部に開示することが予定されていない文書とはいうことができず,同条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」には該当しない。
そうすると,相手方には本件文書を提出する義務がある。
3 必要性について
前記のとおり,申立人は,相手方が債権譲渡に当たり福岡銀行に支払った対価が4億円以下であり,将来回収することが確実とされる金額の合計額がこれを上回るから,相手方は害されていないなどと主張している。
しかし,相手方において,福岡銀行から譲り受けたピー・エー・ジーに対する貸金債権について,これを取得する際に支払った実際の対価如何にかかわらず,額面額の債権を取得するのであるから,その取得の対価が低いからといって相手方が害されないとはいい難い。すなわち,相手方主張に係る譲渡を受けた貸金債権額あるいはこれに伴う損害額と実際の取得対価とには直接の関係がないというべきである。
そうすると,本件文書を書証として取り調べる必要性は乏しいものというべきである。
4 結論
よって,申立人の本件申立ては,必要性がないものとして,これを却下することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小山邦和 裁判官 中園浩一郎 裁判官 石原直弥)
別紙
文書提出命令申立書(第2回)<省略>
文書提出命令申立に関する意見書<省略>
文書提出命令申立(第2回)に対する答弁書<省略>