福岡高等裁判所 平成22年(行コ)27号 判決 2010年11月30日
控訴人
福岡県
同代表者兼処分行政庁
福岡県公安委員会
同委員会代表者委員長
A
同訴訟代理人弁護士
石橋英之
同指定代理人
古田裕<他6名>
被控訴人
X
同訴訟代理人弁護士
東敦子
溝口史子
吉原洋
福井慎一郎
石田光史
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
第二事案の概要(略称等は原判決の例による。)
一(1) 本件は、犯罪被害者の遺族である被控訴人が、福岡県公安委員会(処分行政庁)に対して、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(平成二〇年法律第一五号による改正前の名称は犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律。同改正前の同法を「法」という。)に基づき、犯罪被害者等給付金(給付金)の支給裁定を申請したところ、処分行政庁が法一〇条二項後段に規定する当該犯罪被害が発生した日から七年を経過した後の申請であることを理由に、給付金を支給しない旨の裁定(本件処分)をしたことから、国家公安委員会の審査請求を棄却する旨の裁決を経て、控訴人に対し、同裁定の取消しを求めた事案である。
(2) 原審は、被控訴人の給付金の支給裁定の申請権が、法一〇条二項の期間制限により消滅したということはできないので、本件処分は違法であるとしてこれを取り消した。
(3) 控訴人はこれを不服として控訴した。
二 事案の概要は、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も、当審において取り調べた証拠を考慮に入れても、被控訴人の請求は理由があり認容すべきものと判断する。その理由は、原判決「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
なお、控訴人は、当審において、法一〇条二項の期間が経過する前に被控訴人から給付金の申請がなされていれば、処分行政庁は、本件刑事事件を捜査した福岡県小倉北警察署に対して照会等を行い、これに対する回答を得て、本件被害者の死亡及びこれが犯罪行為によるものであることを認定して、給付金の支給裁定ないし仮給付金の支給裁定ができたと主張する。
確かに、証拠(乙六)によれば、福岡県公安委員会(処分行政庁)及び他県の公安委員会は、否認事例、犯人未検挙事例及び不起訴事例についても給付金の支給を裁定した実績のあることが認められる。しかし、いずれも被害者の遺体が存在するか被害者が死亡しておらず、その被害が犯罪行為によるものであることが明らかな事案であるところ、本件は被害者の遺体が存在せず、かつ、被告人の一人は捜査段階から第一審判決言渡しに至るまで一貫して犯罪行為を否認していたという極めて特異な事案であって、控訴人が挙示した事例とは明らかに事案が異なるものである。
したがって、控訴人の上記主張は理由がない。
二 よって、原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 古賀寛 裁判官 川野雅樹 齋藤毅)