大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 平成23年(お)1号 決定 2011年10月24日

主文

本件再審請求を棄却する。

理由

本件再審請求の趣意は,請求人提出の「再審請求申し立て」と題する書面及び「再審請求申し立てに関する求意見書」に各記載されたとおりであり,要するに,本件控訴審判決は,①審理が尽くされていない,②精神鑑定を実施していない,③性犯罪に対する厳罰化傾向による差別的判断をしている,というものである。

ところで,有罪判決に対する控訴棄却の確定判決に対して再審請求が許されるのは,当該控訴棄却の確定判決自体に刑事訴訟法436条1項各号所定の事由がある場合に限られるところ,上記①ないし③の各主張が上記各号所定の事由に該当しないことは明らかであるから,本件再審請求は,法令上の方式に違反しており,不適法である。

なお,請求人は,本件についての1審の有罪判決(以下「本件1審判決」という)に対して福岡地方裁判所に3件の再審の請求をし,これらの事件が同裁判所に係属している(平成23年(た)第2号ないし第4号)から,現在,本件1審判決に対する再審の請求と本件控訴審判決に対する再審の請求とが競合している状況にある。このような場合,控訴裁判所は,第1審裁判所の訴訟手続が終了するに至るまで,訴訟手続を停止しなければならないとされている(刑事訴訟規則285条1項)が,本件のように,控訴棄却の確定判決に対する再審の請求が不適法であると認められるときは,各裁判所の実体判断が分かれることによる手続の混乱が生じることはないこと,控訴裁判所が第1審裁判所の訴訟手続が終了するに至るまで訴訟手続を停止することはかえって訴訟経済に反することなどに鑑みれば,控訴裁判所は訴訟手続を停止することなく,再審の請求を棄却することができると解すべきである。

よって,刑事訴訟法446条により,本件再審請求を棄却することとし,主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例