福岡高等裁判所 平成23年(ネ)564号 判決 2012年2月24日
控訴人
Y組合連合会
代表者代表理事
A1
訴訟代理人弁護士
八坂泰生
浜田宏
田瀨憲夫
石田淳
被控訴人
X
訴訟代理人弁護士
田中久敏
主文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一本件控訴の趣旨
主文同旨
第二事案の概要等
一 事案の概要
(1) 本件は、控訴人との間で火災共済契約及び生命共済契約を締結した被控訴人が、下記の各共済事故が発生したとして、上記各共済契約に基づき、約定の共済金及びこれらに対する各支払拒絶通知日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
記
ア 平成一九年一一月八日発生の火災事故 四六八〇万円(甲事件)
イ 同月二〇日発生の転落傷害事故 五八万四〇〇〇円(甲事件)
ウ 平成二〇年八月一五日発生の交通傷害事故 一二万四〇〇〇円(乙事件)
エ 同年九月一七日発生の暴行傷害事故 四一万円(乙事件)
オ 同年一二月二八日発生の交通傷害事故 一一万円(乙事件)
(2) 原審は、被控訴人の請求を全て認容したので、控訴人がこれを不服として控訴した。
二 前提事実
(1) 控訴人は、各種の生命共済及び火災共済に関する事業を行い、被控訴人が加入していた福岡県民共済(取扱団体・福岡県民共済生活協同組合)の元受団体である。
(2)ア 被控訴人は、平成一四年四月一日、控訴人との間で、被控訴人を被共済者として、以下の内容を含む生命共済契約(共済種目:基本コース総合保障四型)を締結した(以下「本件生命共済契約」という。)。
(ア) 入院保障 交通事故又は交通事故を除く不慮の事故の場合、五日目から一八四日目まで。共済金額:一日当たり一万円。
(イ) 通院保障 交通事故又は交通事故を除く不慮の事故の場合、一四日以上九〇日まで。共済金額:実通院当初から一日当たり二〇〇〇円。
イ(ア) 本件生命共済契約の「ご加入のしおり」では、控訴人の営む組合の共済につき加入者に詐欺の行為があったときは、共済加入が解除される旨、加入が解除された場合には共済金の支払ができない旨規定されている。
(イ) 控訴人の生命共済事業規約(以下「本件規約」という。)及び生命共済事業実施規則(以下「本件規則」という。)には、以下の定めがある。
① 共済契約につき共済契約者に詐欺の行為があった場合には、当該共済契約を解除することができる(本件規約一七条三項)。
② 本件規則に定める場合には将来に向かって共済契約を解除することができる(本件規約一七条四項)。
③ 共済契約を解除した場合には、その解除が共済事故発生の後になされたときであっても、控訴人は共済金を支払う責に任ぜず、既に共済金を支払っていたときはその返還を請求することができる(本件規約一七条五項)。
④ 本件規約第一七条四項の「生命共済事業実施規則に定める場合」の一つとして、「共済契約者が過去に共済金または保険金の請求行為に関し詐欺行為を行った場合」が規定されている(本件規則一四条二号)。
(3)ア 被控訴人は、平成一九年六月ころ、控訴人との間で、被控訴人所有の以下の木造家屋(未登記。以下「本件建物」という。)につき、被控訴人を被共済者として、以下の内容の火災共済契約(共済種目:新型火災共済)を締結し(以下「本件火災共済契約」という。)、以後、毎月の掛金の支払を継続してきた。
(ア) 物件住所 福岡県糟屋郡<以下省略>
(イ) 保障開始日 平成一九年七月七日
(ウ) 構造 木造
(エ) 用途 住まい専用住宅
(オ) 保障額
① 住宅(九八坪) 四〇〇〇万円
② 家財(一人) 四〇〇万円
③ 臨時費用共済金(火災等共済金の二〇%、一回の共済事故につき二〇〇万円の限度)
イ 本件火災共済契約の「ご加入のしおり」では、加入者の故意又は重大な過失による損害に対しては共済金の支払ができない旨、この場合には、共済加入は解除される旨規定されている。
(4) 平成一九年一一月八日午後三時一八分ころ、本件建物において火災が発生し、本件建物及びその中の家財が全焼した(以下「本件火災」という。)。
(5) 平成一九年一一月二〇日午前一一時四〇分ころ、被控訴人が本件火災現場の敷地において脚立から地面に転落するという事故(以下「本件転落事故」という。)が発生した。
(6) 平成二〇年八月一五日午後四時五〇分ころ、被控訴人が自己所有の普通乗用自動車を運転して福岡市<以下省略>先路上を進行中、後方からA2運転の普通乗用自動車に追突されるという事故(以下「本件第一交通事故」という。)が発生した。
(7) 平成二〇年九月一七日午後三時四五分ころ、被控訴人が、a荘四〇一号において、本件建物のかつての賃借人であったA3から木刀で左腹部を殴打されるなどの事故(以下「本件暴行事故」という。)が発生した。
(8) 平成二〇年一二月二八日午前四時一〇分ころ、被控訴人が勤務先のタクシー会社保有の普通乗用自動車に乗務中、福岡県太宰府市<以下省略>所在のf薬局前路上にて信号停車していた際、後方からA4運転の普通乗用自動車に追突されるという事故(以下「本件第二交通事故」という。)が発生した。
(9) 被控訴人は、控訴人に対し、本件火災共済契約(下記ア)ないし本件生命共済契約(下記イ及びウ)に基づいて、共済金の支払請求を行ったが、控訴人は、その支払を拒絶した。
ア 本件火災事故
請求日 平成一九年一一月一二日
支払拒絶通知日 平成二〇年二月七日
イ 本件転落事故
請求日 平成二〇年三月九日
支払拒絶通知日 平成二〇年六月二〇日
ウ 本件第一交通事故、本件暴行事故、本件第二交通事故
請求日 遅くとも平成二一年三月末日
支払拒絶通知日 同年四月二二日
(10) 控訴人は、被控訴人に対し、平成二一年四月二二日付け書面により、本件火災事故及び本件転落事故についての共済金の支払請求が被控訴人の詐欺行為に該当することを理由に、本件生命共済契約を解除する旨通知し、上記書面は、同月二四日、被控訴人に配達された。
三 争点及び当事者の主張は、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」の「二 争点及びこれに関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
第三当裁判所の判断
一 認定事実
上記前提事実と証拠<省略>によれば、以下の事実が認められる。
(1) 本件建物及び近隣建物の本件火災当時の状況等
ア(ア) 本件建物は、延面積約五五一m2の四階建て共同住宅であり、各階の区画(部屋割り)は別紙一ないし四のとおりである。
一階部分は六区画で、うち四区画が鉄筋コンクリート造り、他の二区画が木造であり、車庫、物置兼倉庫、店舗(居酒屋・営業休止中)として使用され、二階ないし四階部分は木造で賃貸用居宅として使用されていた。
二階部分は、東側、中央及び西側の三区画(各二DK)で、東側及び中央の各区画は二階建の構造となっており、いずれも室内にある階段で 三階部分(ロフト)と繋がっていた。ロフト部分は建物の北側部分に位置していた。
三階部分は、東側(一LDK)と西側(一LDK)の二区画で、東側の区画は二階部分の東側及び中央の二区画のほぼ真上に位置し、上記ロフト部分と隣接していた。西側の区画は二階部分の西側の区画のほぼ真上に位置していた。
四階部分は、東側及び西側の二区画(各一DK)で、東側の区画は三階部分の東側の区画のほぼ真上に位置し、西側の区画は三階部分の中央の区画のほぼ真上に位置していた。
(以下、本件建物の二階ないし四階部分の各部屋については、上記区画に従い、「二階東側の部屋」、「三階西側の部屋」などという。)
(イ) 本件建物は、被控訴人が平成六年一一月に糟屋郡<省略>二八七番一の土地(以下、同所所在の土地は地番のみで表示する。)を買い受けた後、同土地及び二八七番二の土地上において建築に着手し、最初に一階部分の鉄筋部分を建築し、その後、数年かけて二ないし四階部分を順次建築したものであり、骨組みを作る際に他の工務店の協力を得た他は、自ら建築材料を調達したり、内装を施したりして完成させた。被控訴人は、建築資金に手持ちの金員を宛て、金融機関から借り入れることはなかった。被控訴人は、本件建物の建築確認申請を行っておらず、未登記のままであった。また、被控訴人は、課税機関の現地調査の立会いを拒否したため、本件建物に対する課税はされていなかった。
イ(ア) 本件火災発生時、本件建物から約一・一mを隔てて東側には、同建物と横並びの形で被控訴人所有の木造三階建共同住宅(以下「本件三階建建物」という。)が存在し、さらに、本件建物から約二・六mないし一〇・八m隔てて西側には、同建物と横並びの形で被控訴人所有の五階建耐火造共同住宅(以下「a荘」という。)が存在していた。さらに、a荘のさらに西側には木造セメント瓦葺二階建居宅(以下「本件自宅建物」という。)が存在していた。
(イ) 被控訴人は、昭和四八年に三一六番二の土地を父親から贈与を受け、昭和五〇年ころ、自ら同土地上に自宅(以下「旧自宅建物」という。)を建築し、同年一〇月一三日付けで、被控訴人名義による所有権保存登記をし、妻A5とともに居住するようになったが、昭和六三年一〇月一七日、火災により焼失した。本件自宅建物は、その後、上記土地上において、被控訴人が建て替えたものであり、同建物につき、新たに保存登記がされることはなかった。
(ウ) a荘は、被控訴人が、昭和六一年に三一六番三の土地を買い受け、同土地及び三一六番二の土地等の上に建築したものであり、昭和六二年六月五日付けで、被控訴人名義による所有権保存登記が経由されている。a荘は、建築当初、鉄筋コンクリート造陸屋根三階建の構造であったが、その後、増築により五階建となった(但し、登記簿上は鉄筋コンクリート・木造スレート葺・陸屋根四階建共同住宅・車庫となっている。)。a荘の戸数は一三戸であった。
(エ) 本件三階建建物は、被控訴人が、本件建物の建築完了後に二八七番一の土地上に建築したものである。本件建物と同じく、未登記のままであり、被控訴人が課税機関の現地調査の立会いを拒否したため、課税されていなかった。本件三階建建物の戸数は三戸であった。
(オ) 被控訴人は、本件火災発生当時、本件建物、本件三階建建物及びa荘の各共同住宅を合計二〇世帯に賃貸していた。
(カ) 本件建物から四・四mないし九・四m程隔てて、南側にはA6(以下「A6」という。)所有の木造平家建て住宅(以下「南側建物」という。)が存在しており、本件火災発生当時、A6が娘家族六名とともに同所に居住していた。
ウ(ア) 本件火災発生当時、本件建物の二階中央の部屋にはA7(以下「A7」という。)及びA8(以下「A8」という。)、二階西側の部屋にはA9(以下「A9」という。)、三階東側の部屋にはA10(以下「A10」という。)、三階西側の部屋には被控訴人、四階東側の部屋にはA11(以下「A11」という。)、四階西側の部屋にはA12がそれぞれ居住しており、二階東側の部屋は空室となっていた。
このうち、A11は、本件火災の約二年前から、A9は、本件火災の約一年半位前から、本件建物に居住していた。また、A7は、平成一三年ころ、本件建物の二階中央の部屋に居住するようになり、その後、A8が同部屋のロフト部分に居住するようになった。
被控訴人は、平成一九年一〇月中旬ころ、A7及びA8が家賃(月額四万五〇〇〇円)を五か月分程滞納したことを理由に上記部屋の玄関ドアノブに鍵を付けてロックしたため、A7とA8は部屋から閉め出された。A7は、被控訴人からa荘の空き部屋で生活することを許された。他方、A8は、本件建物の二階中央の部屋の玄関のガラスを割って同部屋に入って寝泊まりを続けた。被控訴人は、これに気づき、同年一一月一日、同部屋の玄関のガラスの割れた部分にベニヤ板をはめ込んだため、A8は、再び同部屋から閉め出され、以後、A7の居住するa荘の部屋で生活するようになった。ところで、A8は部屋から閉め出される前日の同年一〇月三一日夕刻、ロフト内において電気式ポットでお湯を沸かし、カップ麺を食べるためにお湯の一部を使用したが、相当量のお湯を残した状態でポットの電源を入れたまま(コンセントに差したまま)にしていた。A8は、電気代の節約のため、電気式ポットの湯気の出てくる場所にシールを貼り、水分の蒸発を防ぐ細工をし、常にコンセントに差した状態でこれを使用していた。
A7及びA8の居住していた部屋の隣の二階東側の部屋は空室となっており、被控訴人が同部屋を管理していた。
(イ) 本件建物の各部屋の鍵は三本ずつあり、各入居者が二本ずつ所持し、残りの鍵(予備の鍵)一本を家主である被控訴人が保管していた。
(ウ) 被控訴人は、平成一四年ころ本件自宅を出て妻と別居し、本件建物の三階東側の部屋には平成一七年ころから単身で居住していたもので、本件火災時には、高価なものや貴重品などは同部屋に置いていなかったし、不動産の権利書や健康保険証、実印、預金通帳等の重要書類等も日頃から自家用車中に保管していた。
(2) 本件火災の出火状況等
ア 出火状況についての関係者の説明等
(ア) 本件建物の四階東側の部屋に住むA11の説明(要旨)は、以下のとおりである。
「平成一九年一一月八日(木曜日)、体調不良のため、勤務先を休み、昼ころ、病院に受診し、午後三時ころに帰宅した後、シャワーを浴びて部屋に戻ると、煙臭い臭いがした。南側窓から下方を見ると、真下の部屋の天井の境目にある隙間から白い煙が立ち上がってきていたので、煙の出所を確認するため、本件建物の東側外壁に沿って設置されていた階段を降り、同建物の北側の道路(以下「北側道路」という。)から同建物全体を見渡したが、煙の出所は確認できなかった。そこで、上記階段を使って部屋に戻ったが、真下の部屋の方からパチパチと物が燃える音が聞こえ、部屋の中が白煙に包まれた。そこで、直ぐに部屋を出て、階段を使って避難しながら、同日午後三時二五分ころ、携帯電話で一一九番通報をした。北側道路で向かいの日蓮宗b道場の住職と出会い、一一九番通報したことを伝えた。そのころ、本件建物の三階の東から二番目の窓ガラスが爆発するように割れて炎が外に吹き出したのを目撃した。この火事は三階の中央付近から私の部屋の真下辺りで起きたものではないかと思っている。」
(イ) 北側道路を隔てて本件建物の北西に位置する日蓮宗b道場の住職で同所に居住するA13の説明(要旨)は、以下のとおりである。
「道場の敷地内で長男と庭の手入れ中、用事で北側道路に出て東方向に歩き始め、偶々視線が上に向いた時、本件建物の南東部から真っ黒な煙が上がっているのが見えたので、長男にも聞こえるように『火事だ』と叫んだ。黒い煙は本件建物の南面の東寄りの辺りから出ているように感じた。火事であると思った瞬間、本件建物の東側屋外階段から三〇歳前後の男性が普通に慌てた様子もなく降りてきた。当該男性とは面識がなかったが、同人に一一九番通報を促すと、通報したとの返答があった。当該男性と北側道路上で話している間に本件建物の裏手(南側)から『ドン』という爆発音のような音が二回聞こえ、これと前後して二階北側中央部の窓ガラスが一箇所割れて炎が噴き出してきた。そして、次第に、二階から三、四階へと炎が広がり、最後には一階の中も燃え出した。火の回りは非常に早い感じで、消防車が到着したころには既に建物全体が燃えていた。」
(ウ) 南側建物の居住者であるA6の説明(要旨)は、以下のとおりである。
「南側建物には娘の家族と共に合計七人で住んでいるが、本件火災発生当日、自分も含めて全員が外出していた。当日午後三時ころ帰宅したところ、本件建物が北西の方向から大きな炎と白っぽい煙を上げながら燃えているのを見た。本件建物は、二階から三階の全体が燃え盛っており、強いて言えば西方の勢いが強いように見えた。当時の炎や煙の流れを見て、風が南向きに吹いていることが分かった。心配しながら消火活動を見守っていると、とうとう南側建物にまで燃え移った。」
(エ) 粕屋南部消防本部南部消防署(以下「南部消防署」という。)隊員らの出場時の目撃状況
南部消防署隊員らが通報を受けて現場に到着した際、北側道路から本件建物を見ると、同建物北側の二、三階中央部分の窓越しに本件建物の内部が赤褐色になっており、同内部は炎に包まれており、四階屋根上より黒煙と炎が上昇しているのが確認された。また、本件建物北側の三階部分の軒下からは灰色の煙が噴出中であり、三階中央の窓周囲の外壁は焼きにより縦横に黒いひび割れが発生し、延焼が拡大中であることや、本件建物の二、三階の西寄りの窓及び東寄りの窓が建物内部の黒煙のため、白っぽく反射している状況も確認された。さらに、本件建物の南側に移動すると、同建物南側中央部の四階部分より激しく炎が上昇し、北東の風により火勢が南側へなびいており、南側建物の北側部分の軒先及び外壁部分から炎が確認された。
イ 本件建物等の焼き状況
南部消防署隊員らは、同日午後三時三八分から放水を開始し、同日午後四時三八分には火勢を鎮圧し、同日午後五時五一分に鎮火した。
本件火災により、本件建物は全焼し、二階から四階までは、二階及び三階のサイディングボード張りの外壁が一部残存するだけで、その他の部分は全て焼きないし倒壊している。本件建物二階部分の南西側屋外には灯油ボイラー三基及び灯油タンク三基が設置され、その上部(三階に相当する)の棚には灯油ボイラー一基及び灯油タンク一基が設置されていたが、ボイラー表面は塗料が剥離し、茶又は青黒く変色しているもののボイラー自体に特異な焼きは見分されず、灯油タンクも表面の塗料が剥離し、灯油が残存していた部分は焦げ茶色に変色し、それより上部は白色又は青黒く変色している。
また、本件建物の電気メーター(一階階段室設置)は本件火災により原形を止めない状態になり、配線には短絡跡は認められなかった。
本件建物からの延焼により、本件三階建建物及び南側建物も全焼したが、a荘は建物南東側ベランダ壁体及び塩化ビニール製波板が本件建物からの受熱(輻射熱)により溶融変形しているだけで、その他の焼きは確認されていない。
ウ 本件火災発生当時、A11以外の本件建物の居住者は、仕事に出かける等して不在であった。そのうち、本件建物の三階東側の部屋に住んでいたA10は、本件火災発生当日、午前六時三〇分ころ起床し、午前七時ころ外出して、福岡市東区内のゲームセンターで遊び、翌日午前一時三〇分ころ帰宅した。
(3) 消防署の出火原因の判定
南部消防署消防司令A14作成の火災原因判定書(以下「本件火災原因判定書」という。)における出火原因の判定(要旨)は以下のとおりである。
(ア) 出火箇所 本件建物の三階南側付近
(イ) 出火原因
① たばこ及びボイラーによる出火であるとは考えられない。
② 電気関係については、全般の電気器具類の火災前使用状況が判明しないので不明である。
③ 放火については、本件自宅建物及びa荘の保険契約は平成一七年で解約となっていること等から、所有者が本件建物を含むアパートに放火したと仮定しても、何ら利益を得ることがないため保険金目的の放火は考えられないが、何者かが物取りで侵入し、証拠隠滅を図る目的で放火した可能性は否定し得ない。
④ したがって、本件火災の原因は不明である。
(4) 本件火災発生当日の被控訴人の行動
ア 被控訴人の説明
被控訴人がc商事有限会社名義により売買契約を締結した久留米市宮ノ陣町<以下省略>所在の土地建物(以下「久留米市宮ノ陣町の物件」という。)の件で、事実上売買を仲介したd地所開発に残代金の額を証明するものを貰うために、本件火災発生当日の午後二時ころ、一人で車を運転して自宅を出発し、午後三時ころ、久留米市<以下省略>にあるd地所開発の事務所に着いた。ところが、事務所はブラインドが閉じられており、代表のA15(以下「A15」という。)に携帯電話で連絡したところ、旅行中とのことであった。そのため、途中、上記久留米市宮ノ陣町の物件に立ち寄り、外部から同物件を見た後、帰路につき、午後四時か五時ころ、自宅に帰り着いた。
イ A15の説明
被控訴人はd地所開発の客といえば客の様な人である。これまで、実際の取引はないが、約二年前から、被控訴人が、久留米市宮ノ陣町の物件を買い取りたいということで、仲介業者であるd地所開発がc商事有限会社との間で商談を続けていたが、そのペースは極端に落ちているところであった。不在の間に被控訴人から電話があり、「来週月曜日以降なら店にいます。」と答えたことがあったが、その明確な日時は覚えていない。被控訴人は、以前から来る前に予告があったり、逆に何の前触れもなく来店したりしていた。
(5) 本件火災発生前の被控訴人の言動
ア 被控訴人は、これまで工事代金や暴力団員に対する貸付金の回収の相談を行ったことのある知人のA16(元右翼団体役員。以下「A16」という。)、同じく知人のA17(暴力団員。以下「A17」という。)と、本件火災発生の二、三か月前ころの昼間、福岡市<以下省略>所在のファミリーレストラン「サンデーサン」で飲食を共にした。その際、被控訴人は、四人掛けのテーブルに対面して座っていたA16及びA17に向かって、「家を燃やしてくれんか。」(A17の証言によれば「家を燃やす人は誰かいないか。」)との趣旨の発言をした(以下、これを「本件放火依頼発言」という。)。A16及びA17は、冗談半分の発言であると理解しつつ、A16において、被控訴人に対し、「ばかたれが。人がおって死んだら殺人やぞ。死刑になるぞ。」と言ってたしなめ、A17も、被控訴人に対し、「そんなばかなことを言うたらいかんよ。」と言ったところ、被控訴人は、それ以上、放火に関する話を続けることはなかった。
イ 被控訴人は、本件火災発生後、A17から上記アのやり取りを聞いた知人のA18(以下「A18」という。)夫婦から福岡県二日市市内のレストランに呼び出され、A18から、「おまえが火を付けてくれと頼んだろが。」と言われた。これに対し、被控訴人は、特に反論することもなく黙っていた。
(6) 被控訴人の生活状況等
ア 被控訴人(昭和二三年○月○日生)は、中学校卒業後、親戚の経営する工務店で大工として働く等した後に独立し、「○○工務店」の屋号で建設業を営むようになった。被控訴人は、昭和四四年四月一七日、妻のA5(昭和二一年○月○日生)と婚姻し、長女A19、長男A20及び次男A21を儲けた。
被控訴人とA5は、平成一二年以降家庭内別居の状態となり、平成一四年ころには被控訴人がA22(以下「A22」という。)と交際していることがA5の知るところとなり、被控訴人は、本件自宅建物を出て、以後、完全な別居状態となった。被控訴人は、他所を転々とした後、上記のとおり、平成一七年六月ころから、本件建物の三階東側の部屋に単身で居住するようになった。他方、A5は、別居後も長男のA20とともに本件自宅建物に居住し続けた。
被控訴人は、平成一七年七月、建築工事請負業、不動産賃貸借業及び管理業務等を目的とするc商事有限会社を設立して代表取締役に就任した。もっとも、被控訴人は、これまで、従業員を雇用したことはなかった。被控訴人の体調の関係もあり、建築関係の仕事(大工工事の手間受け)は徐々に減少し、本件建物やa荘等の賃料が主たる収入となった。また、被控訴人は、平成二〇年以降、タクシー会社に乗務員として勤務するようになった。
イ A5は、平成一七年一〇月、被控訴人を相手方として、離婚、財産分与(五〇〇〇万円)及び慰謝料(一〇〇〇万円)の支払を求める訴えを提起した(福岡家庭裁判所平成一七年(家ホ)第一六〇号離婚等請求事件。以下「別件離婚等請求事件」という。)。福岡家庭裁判所は、同事件につき、平成二〇年五月二〇日、A5の離婚請求を認容するとともに、被控訴人に対し、慰謝料三〇〇万円と財産分与として本件自宅建物の分与及び八〇八万一八〇五円の支払等を命じる判決を言い渡し、同判決は、同年六月四日に確定した。被控訴人は、支払う資金がないことを理由に、現在まで、A5に対し、上記慰謝料及び財産分与(金銭分)の支払をしていない。
また、被控訴人は、上記判決後、a荘の入居者である暴力団員のA23に依頼してA5に本件自宅建物からの退去を強く要求し、その結果、A5は、同建物から退去した。現在、本件自宅建物には被控訴人が再婚相手の女性と同居している。
(7) 被控訴人の資産(収入)及び負債等の状況
ア 資産等
(ア) 被控訴人は、本件火災発生当時、本件建物、本件自宅建物、本件三階建建物及びa荘以外にこれらの敷地に当たる二八七番一、二、四及び五の各土地、三一五番三五の土地、三一六番二及び三の各土地と駐車場として使用していた三一二番七の土地(地目山林)並びに糟屋郡<省略>二五七番の土地(原野)及び同所二六二番の土地(山林)を所有していた(但し、三一六番三の土地は平成一七年一二月二八日付けで、同月二七日贈与を原因として、被控訴人からc商事有限会社に所有権移転登記が経由されている。)(以上の各不動産を一括して「本件各不動産」という)。本件各不動産のうち、本件建物及び本件三階建建物並びに宇美町所在の二筆の土地を除く物件には、株式会社西日本シティ銀行を根抵当権者、被控訴人を債務者、極度額三六〇〇万円とする根抵当権(共同担保)が設定されていた。
本件火災発生当時、別件離婚等請求事件の当事者であるA5と被控訴人との間において、本件各不動産(但し、三一六番三の土地については時価相当額。)が財産分与の対象となる共有財産であることについて争いがなかった。
(イ) A22は、平成一六年ころ、保険外交員を辞め、被控訴人が賃借する久留米市宮ノ陣町の物件で喫茶店を営んでいた。被控訴人は、平成一八年七月七日、c商事有限会社名義により、上記物件を代金一〇〇〇万円で購入する旨の契約を締結した。もっとも、その代金のうち六七八万円余りは毎月四万七〇〇〇円(毎年盆と正月に一〇万円ずつ加算)の分割払となっており、被控訴人は、その支払を続けていた。
(ウ) 平成二二年度課税資産明細書(須惠町作成)によれば、本件建物及び本件三階建建物を除く本件各不動産の固定資産税評価額は、二八七番一の土地が四一六万二一九四円、二八七番二の土地が八二万五四一四円、二八七番四の土地が三六万八八〇二円、二八七番五の土地が一七万五六二〇円、三一二番七の土地が四一九万七三一八円、三一五番三五の土地が五五万一五七二円、三一六番二の土地が五二二万〇二三五円、本件自宅建物が六六四万二一二四円、a荘が二八九五万七三〇三円となっていた。
なお、別件離婚等請求事件において、被控訴人が提出した時価評価書によれば、平成一八年時点において、本件建物の評価額が一〇二三万九〇〇〇円、本件三階建建物の評価額が七〇九万六〇〇〇円とされていた。
(エ) 被控訴人には、不動産以外の預貯金や現金等の資産はほとんどなかった。
イ 負債等
(ア) A5は、平成六年一一月三〇日、被控訴人が株式会社西日本シティ銀行(当時の商号は株式会社西日本銀行。以下「西日本シティ銀行」という。)から二八〇〇万円(毎月の返済額は一五万六〇〇〇円)を借り入れる際に連帯保証人となっていた。被控訴人は、平成一九年七月、その支払を停止したため、同銀行からA5宛に平成一九年九月二八日付で延滞金(元金四四四万四〇〇〇円)の支払督促状が送付された。被控訴人は、その後も上記借入れの支払を停止したままである。
また、被控訴人は、A20を連帯保証人として、西日本シティ銀行から、平成一六年三月二五日に五〇〇万円(毎月の返済額は六万円)、平成一七年七月一四日に二〇〇万円(毎月の返済額は三万三四〇〇円)をそれぞれ借り入れた。平成一九年一一月末現在の借入残高は合計三四二万円余りであった。これらの借入れについても、同年一〇月ころ、西日本シティ銀行から本件自宅建物の固定電話にA20宛の支払督促があり、A5がこれに応対した。
被控訴人は、平成一九年初めころ、西日本シティ銀行に対し、追加融資を申し込み、同銀行から、被控訴人所有の不動産の価値に基づいて追加融資可能額の提示を受けたが、融資は実行されないままであった。
(イ) A5は、平成一九年一〇月ころ、西日本シティ銀行以外にも複数の金融機関(ほとんどが匿名)から、被控訴人の借入金債務の返済督促の連絡を受けた。さらに、A5は、同月ころ、東京火災海上保険株式会社から、口座の残高不足により被控訴人を契約者とする車両保険の保険料(一万円)の引落手続ができない旨の連絡を受けた。
(ウ) 被控訴人は、その他にも、以下の借入れがあった。
ⅰ 株式会社しんわから、平成一八年四月一四日、一〇〇万円を借り入れ、これを一旦完済した後、平成一九年一月二二日に五〇万円(返済月額は約二万円)を借り入れた。平成一九年一一月末現在の残債務額は四一万七八八六円であった。
ⅱ 株式会社ロプロから、平成一八年四月一四日、二〇〇万円(毎月の返済額は八万四〇〇〇円)を借り入れた。さらに、同社から同年七月六日に四〇〇万円(毎月の返済額は一四万円)を借り入れ、上記二〇〇万円の借入金の残債務を返済した。平成一九年一一月末現在の残債務額は二九九万二四三二円であった。
ⅲ 日本政策金融公庫(当時の名称は国民生活金融公庫)から、平成一八年五月二四日、c商事有限会社を主債務者、被控訴人及びA20を連帯保証人として、合計四三〇万円(毎月の返済額は約一〇万円)を借り入れた。平成一九年一一月末現在の残債務額は二八二万一〇〇〇円であった。
ⅳ その他にも、平成一六年以降、国内信販株式会社、日本信販株式会社及びオリックス・クレジット株式会社等から本件自宅建物を住所地として、被控訴人宛てに支払催告書(振込依頼書)が送付されてきていた。これらの書類によれば、平成一六年後半から平成一七年にかけて、被控訴人の上記三社に対する債務残高は合計三二〇万円余りに達していた。
(エ) 被控訴人は、平成一八年七月ころ、須惠町長から、督促状での税金の納付依頼を受けたが納付しなかったことから、平成一二年二月二九日から平成一八年二月二八日までを各納付期限とする固定資産税二二九万六八〇〇円並びに督促手数料一七〇〇円及び延滞金八一万三三〇〇円の納付催告書の送付を受けたが、これらを納付せず、その後に納期限が到来する固定資産税も納付しなかった。さらに、被控訴人は、同年六月三〇日以降を納付期限とする町県民税、軽自動車税も納付せず、同年一〇月一七日時点でのこれらの未納額は合計四〇六万五一〇〇円に達していた。
被控訴人の平成一八年度の固定資産税は年額六一万一八〇〇円であり、同年度の町県民税は年額二四万六八〇〇円であった。
ウ 収入等
(ア) 本件火災発生当時、本件建物、本件三階建建物及びa荘の入居者は合計二〇世帯であり、世帯当たりの賃料月額は平均して四万円程度であった。これらの入居者には賃料の滞納者が多く、中には滞納額が一五〇万円に達する者もいた。入居者には日雇い労働者等が多く、中には生活保護受給者もおり、被控訴人は、入居者との間で賃貸借契約書を作成することはなく、保証人を立てることも求めなかった。そのため、被控訴人は、賃料の回収に苦労していた。
また、被控訴人は、平成一九年一〇月当時、元請け業者の下で大工工事の手間受けの仕事をして日当を貰っていたが、収入はほとんどない状態であった。
(イ) 被控訴人は、法人ではなく、個人で確定申告を行っていた。平成一五年度ないし平成一八年度の確定申出書の内容は以下のとおりである。
① 平成一五年
所得合計 一一九万六〇七〇円
(事業所得一五万五八七〇円+不動産所得一〇四万〇二〇〇円)
② 平成一六年
所得合計 四三五万〇四〇五円
(事業所得二九九万四五六五円+不動産所得一三五万五八四〇円)
③ 平成一七年
所得合計 四五〇万六一三七円
(事業所得三〇六万九七一〇円+不動産所得一四三万六四二七円)
④ 平成一八年
所得合計 一五二万三六五八円
(事業所得-二三八万五六四八円+不動産所得三六四万二三〇六円+給与所得二六万七〇〇〇円)
(8) 被控訴人の保険(共済)契約に関する諸事情
ア 控訴人との間の共済契約歴
被控訴人の控訴人との間の共済契約歴は以下のとおりである。
(ア) 火災共済契約
① 物件 旧自宅建物
保障開始日 昭和六三年一〇月一日
保障額 建物一六七〇万円・家財一二〇〇万円
掛金 月額二〇〇九円
支払日 昭和六三年一一月一日
支払実績 火災共済金三〇七〇万円
② 物件 本件自宅建物
保障開始日 平成四年一一月一日
保障額 建物三〇〇〇万円・家財一二〇〇万円
掛金 月額二九四〇円
支払実績 なし
その他 掛金延滞により平成一七年六月三〇日終了
③ 物件 a荘
保障開始日 平成四年一一月一日
保障額 建物三〇〇〇万円
掛金 月額一二六〇円
支払実績 なし
その他 掛金延滞により平成一七年六月三〇日終了
④ 本件火災共済契約
物件 本件建物
保障開始日 平成一九年七月七日
保障額 建物四〇〇〇万円・家財四〇〇万円
掛金 月額三〇八〇円
(イ) 生命共済契約
① 保障開始日 昭和六三年九月一日
支払実績 なし
その他 取消しにより終了
② 本件生命共済契約
保障開始日 平成一四年四月一日
支払実績 二〇六万七二〇〇円
疾病四件・交通事故一件
イ その他の保険会社との間の保険契約歴
被控訴人の控訴人以外の保険会社との間の保険契約歴は以下のとおりである。
(ア) 明治安田生命保険相互会社
① 種類 定期保険特約付終身保険
契約日 平成七年八月一日
支払日 平成一三年一〇月二二日~平成二〇年一二月三日
支払額
疾病入院給付金 二七二万円
手術給付金 三〇万円
退院給付金 一一〇万円
災害入院給付金 一一一万円
合計 五二三万円
② 種類 五年ごと利差配当付医療保険
契約日 平成一八年四月一日
支払日 平成一八年一一月二日~平成二〇年一二月三日
支払額
疾病入院給付金 一〇九万円
災害入院給付金 一二三万円
合計 二三二万円
(イ) 株式会社かんぽ生命保険
① 種類 全期間払込一〇年満期二倍型特別養老保険
効力発生年月日 平成一一年一月五日
満期日 平成二一年一月四日
支払日 平成一三年一一月一二日~平成二〇年一一月二八日
支払額
入院保険金 一四三万九六九五円
手術保険金 四三万五四七一円
通院療養給付金 二万八〇〇〇円
合計 一九〇万三一六六円
② 種類 全期間払込三〇年満期養老保険
効力発生年月日 昭和五九年二月二三日
(保険料未払のため平成一〇年五月二三日失効)
(ウ) 東京海上日動火災保険株式会社
① 種類 傷害保険
保険期間
平成一七年四月六日~平成二〇年四月六日
平成二〇年三月二七日~平成二三年三月二七日
(いずれも一年ごとの更新)
事故日
平成一七年六月二三日
平成一九年一一月二〇日(本件転落事故)
平成二〇年八月一五日(本件第一交通事故)
平成二〇年九月一七日(本件暴行事故)
平成二〇年一二月二八日(本件第二交通事故)
支払日 平成一七年一一月一六日~平成二一年六月三〇日
支払額 二二〇万四五三〇円
② 種類 自動車保険
保険期間
平成一〇年八月一日~平成一一年八月一日
平成一二年八月一日~平成一三年八月一日
平成一三年六月三日~平成一四年六月三日
平成一四年七月一五日~平成一五年七月一五日
平成一四年八月一日~平成一五年八月一日(二口)
平成一五年八月一日~平成一六年八月一日
平成一五年八月一日~平成一六年三月八日
平成一五年一〇月一七日~平成二〇年一〇月一七日
(一年ごとの更新。保険料不払により失効)
平成一六年四月六日~平成一七年四月六日
平成一六年八月一日~平成一七年八月一日
平成一七年三月一九日~平成二〇年三月一九日
(一年ごとの更新)
平成一七年八月一日~平成一八年八月一日
平成一八年三月一五日~平成一九年三月一五日
(平成一九年一月二六日解除)
事故日
平成一一年一月一二日
平成一二年八月二一日(車両損害)
平成一四年一月一七日(交通事故による追突被害)
平成一四年九月一九日
平成一五年三月三一日(車両同士の接触事故)
平成一六年二月二六日(車両損害)
平成一六年一一月二七日(車両損害)
平成一八年一二月二七日(交通事故による追突被害)
支払日 平成一一年二月五日~平成二一年一一月二四日
支払額 一四〇万一〇七九円
③ 種類 火災保険
保険期間及び保険金額
ⅰ 平成一四年四月四日~平成一五年四月四日
一三一〇万円
ⅱ 平成一四年一〇月一七日~平成一五年一〇月一七日
四〇〇〇万円 地震二〇〇〇万円
ⅲ 平成一四年一二月八日~平成一五年一二月八日(四口)
合計一億二八六〇万円
ⅳ 平成一五年四月四日~平成一六年四月四日
一〇〇〇万円
ⅴ 平成一五年一〇月一七日~平成一六年一〇月一七日
四〇〇〇万円 地震二〇〇〇万円
ⅵ 平成一五年一一月二四日~平成一六年一一月二四日
五〇〇万円 地震二〇〇万円
ⅶ 平成一五年一二月八日~平成一六年一二月八日(四口)
合計一億二八六〇万円
ⅷ 平成一六年四月五日~平成一六年一二月八日
五〇〇万円
ⅸ 平成一六年一〇月一七日~平成一七年一〇月一七日
四〇〇〇万円 地震二〇〇〇万円
ⅹ 平成一六年一二月八日~平成一七年一二月八日
一億九八〇〇万円
ⅹⅰ 平成一七年一〇月一七日~平成一八年一〇月一七日
四〇〇〇万円 地震二〇〇〇万円
(但し、保険料不払により平成一八年六月二六日失効。)
ⅹⅱ 平成一七年一二月八日~平成一八年一二月八日
九八五〇万円
(但し、保険料不払により平成一八年六月二六日失効。)
事故日
平成一六年八月三〇日(風災・台風一八号)
平成一七年九月六日(風災・台風一四号)
支払日 平成一六年一〇月八日~平成一七年一〇月一八日
支払額 三〇五万二七〇四円
(エ) 日本興亜損害保険株式会社
① 人身傷害保険
事故日 平成一八年一二月二七日(交通事故による追突被害)
支払日 平成一九年二月一三日~平成二二年一月二七日
支払額 一〇八万一四一七円
② 対物賠償保険
事故日 平成二〇年八月一五日(本件第一交通事故)
支払日 平成二〇年一〇月二三日
支払額 二二万二〇〇〇円
③ 対人賠償保険
事故日 ②の事故と同一
支払日 平成二〇年九月一七日~平成二一年九月二五日
支払額 一二〇万〇〇〇〇円
(オ) 全国共済農業協同組合連合会
種類 建物更生共済
物件 本件自宅建物
契約日 平成五年七月二日
共済期間 同日から三〇年間
共済金額
火災共済金額 一〇〇〇万円
満期共済金額 二〇〇万円
事故日 平成一六年八月三〇日(自然災害)
支払額 四万三五五〇円
(カ) 朝日生命保険相互会社
種類 普通養老保険
契約成立日 平成一七年八月一日
保険金額 八〇〇万円
(平成二〇年一〇月三〇日 解約により消滅)
(キ) 財団法人福岡県消防協会・福岡県民火災共済生活協同組合
種類 火災共済契約
① 物件 旧自宅建物
加入年月日 昭和六〇年一〇月九日
契約金額等 建物 一五〇〇万円
支払日 昭和六三年一〇月三一日
給付金額 一五〇〇万円
② 物件 a荘
加入年月日 昭和六三年一〇月九日
契約金額等 建物 九六〇万円
③ 物件 本件建物
加入年月日 平成一三年一〇月九日
契約金額等 建物 一五〇〇万円
以上、三件とも平成一八年一一月六日に被控訴人の申出により解約。
(ク) その他
以上の他にも、被控訴人は、①朝日生命保険相互会社から、平成一三年九月から平成一六年一〇月までの間に、疾病入院給付金及び手術給付金等として合計九四万四〇〇〇円の、②アメリカンファミリー生命保険会社から、平成一三年八月から平成一四年一月までの間に、疾病入院給付金及び手術給付金等として合計三五万円の各支払を受けている。
ウ 保険料
被控訴人は、解約した場合の返戻金の範囲内で未納保険料に充当し保障を存続させる保険料振替貸付制度を利用しているところ、これを前提にした場合の平成一九年七月から同年一一月までの間の保険料・共済掛金の額は、月額一四万円前後で推移している。同期間における上記貸付制度による振替分を除く保険料の支払額は月平均で約七万円である。
エ その他の事情
東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上日動火災」という。)は、平成二〇年五月三〇日、訴外A24(以下「A24」という。)が運転し、訴外A25(以下「A25」という。)が同乗する車両が被控訴人運転の車両に追突した交通事故(事故日:平成一八年一二月二七日)につき、A25との間の保険契約に基づくA25及びA24に対する保険金の支払義務が存在しないこと並びに被控訴人との間の普通傷害保険契約(上記イ(ウ)①)に基づく被控訴人に対する保険金の支払義務が存在しないことの確認を求める訴訟を福岡地方裁判所に提起した(同裁判所平成二〇年(ワ)第一九五四号事件。以下「別件交通訴訟事件」という。)。その後、被控訴人は、別件交通訴訟事件において、東京海上日動火災に対し、二〇万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める反訴を提起したが、担当裁判官から請求原因の補正命令を受け、これを拒否したため、平成二一年一〇月八日、反訴状の却下命令を受けた。そして、同日、別件交通訴訟事件において、上記交通事故につき、上記普通傷害保険契約に基づく傷害保険金の存在及び金額について具体的主張及び立証を一切行わないことを理由に、東京海上日動火災の被控訴人に対する同保険契約に基づく傷害保険金の支払義務がないことを確認する旨の判決が言い渡され、同判決は確定した。
(9) 旧自宅建物の火災事故について
ア 出火日時 昭和六三年一〇月一七日 午後二時一六分ころ
イ 出火場所 旧自宅建物
ウ 結果 全焼(a荘一部焼き)
エ 出火原因
(ア) 被控訴人の説明(要旨)
「同日午後一時一五分ころ、台所の二口ガスコンロで天ぷらを揚げ始め、揚げ終わる少し前に芋を揚げ始め、芋の状態が少し硬かったため、芋を天ぷら鍋から揚げずにそのままにした。この時にガスコンロの火はとろ火にしており、消したものと思い違いをしていた。その後、所用のため外出した。」
(イ) 消防署の判定
被控訴人の説明を前提にして、過熱された天ぷら鍋内の油が発火温度に達して出火し、一挙に拡大し火災に至った。
オ 保険金の受領
(ア) 控訴人との間の火災共済契約に基づく共済金三〇七〇万円
(イ) 福岡県民火災共済生活協同組合との間の火災共済契約に基づく共済金一五〇〇万円
二 争点一(本件火災が被控訴人の故意によるものであるか否か)について
(1) 出火箇所と原因について
ア 上記一(2)認定の本件火災の出火状況等及び同一(3)認定の消防署の出火原因の判定を総合すると、本件火災の出火箇所は本件建物の三階南側付近と認めるのが相当であり、この認定を覆すに足りる証拠はない。
この点について、控訴人は、本件火災の出火箇所は本件建物の三階南側付近と同建物の一階南側中央の鉄製階段付近の二箇所であると主張し、乙一四一号証(A26作成の意見書)及び乙一四七号証(同人作成の追加意見書)中には、本件火災の出火部が本件建物の一階南側中央の鉄製階段付近であると判断する旨の記載が存在する。しかしながら、上記各意見書は、南部消防署隊員が本件火災現場を撮影した現場写真(焼きの状況等に関するもの)の一部を机上で分析した結果に基づく判断に過ぎず、これをもって、出火箇所の判断資料とすることはできないというべきである。
ところで、本件建物の三階南側は三階東側の部屋及び三階西側の部屋とその間に介在する屋外階段で構成されているところ、屋外階段には火源となり得るものは全く見当たらないことや、上記一(2)認定の出火状況等からすれば、本件火災は、三階東側の部屋ないし三階西側の部屋の内部(南側付近)から出火したというべきである。(本件火災原因判定書によれば、三階南側屋外に設置されていた灯油ボイラーからの出火は否定されており、A11も本件建物の四階東側部屋の南側窓から下方を見た際に灯油ボイラーの異常は目撃していないことからすれば、灯油ボイラーから出火した可能性はない。)
イ そこで、次に、出火原因について検討する。
(ア) 本件火災原因判定書によれば、たばこが出火原因であることは否定されており、これを覆すに足りる証拠はない。
(イ) 次に、電気器具類については、A8の使用していた電気式ポットからの出火が問題となるが、通常、電気式ポットの発熱体は容器底付けのスペースヒーターが多く使用され、リミッターサーモと温度ヒューズによる過熱保護が施されているし、A8は本件建物の三階部分北側にあるロフトで生活し、同所において電気式ポットを使用していたのであるから、同ポットが出火原因であるとした場合には、上記のとおり出火箇所が本件建物の三階南側付近であることと符合しないから、電気式ポットが出火原因であると認めることは困難である。そして、南部消防署による被控訴人(三階西側の部屋の居住者)及びA10(三階東側の部屋の居住者)に対する事情聴取によれば、同人らは、部屋内において、本件火災発生当時、火源となり得る電気器具類を使用していなかったというのであるから、上記各部屋に設置されていた電気器具類が出火の原因である可能性は極めて低い。
また、上記一認定のとおり、本件建物の電気メーターの配線には短絡跡は認められていないし、本件火災以前に、漏電ブレーカー及び過電流等の異常に伴う主電源ブレーカーの日常的遮断があった形跡もないことからすれば、漏電による出火の可能性も低いというべきである。
(ウ) その他、本件火災の火源となり得るものは三階西側の部屋ないし三階東側の部屋内においては見当たらない。
(エ) 本件火災は、午後三時ころ発生し、かつ、その出火箇所は四階建建物の三階部分であるが、これらの事情は放火を企図する者が本件建物を始めとする近隣建物の居住者の生命、身体の安全に配慮した結果であると考えれば説明がつくし、三階部分から出火したことについても、放火の方法や気象条件次第では、特に建物内部については耐火構造が全く施されていないと見られる本件建物にあっては、全焼させることは困難ではなく、現に短時間のうちに全焼に至っているのであるから、出火日時及び出火箇所は放火を否定する事情とはなり得ない。
(オ) 以上によれば、本件火災は、白昼、そのままでは火源となり得るものが存在しない本件建物の三階西側の部屋ないし三階東側の部屋の内部から生じたことになるから、何者かが、上記の部屋の一方ないし両方の内部に火を放ったことにより生じた可能性が高いというべきである。(被控訴人も、原審における本人尋問において、被控訴人に恨みのある者による放火であると推測する旨供述している。)
(2) そこで、次に、本件火災が被控訴人の故意によるものであるか否かについて検討を加える。
ア 上記一の認定事実によれば、以下の事情が認められる。
(ア) 被控訴人は、本件火災発生の三か月ほど前、本件放火依頼発言を行っている。
この点について、被控訴人は、公衆のいるファミリーレストランで、何の脈絡もなく、突然、放火の依頼に関する話を始め、かつ、A16及びA17もその理由を聞かなかったというのは不自然であるし、仮にそのような発言が行われたとしても、真剣に取り上げる価値のない発言である旨主張する。しかしながら、本件放火依頼発言に関する原審証人A16及び同A17の各証言は、その内容が具体的で一貫しており、少なくとも、核心部分において相互に一致している上に、A16及びA17があえて虚偽の証言をしなければならない理由は見当たらないから、その信用性は高いというべきである。そして、本件放火依頼発言は本件火災に対する被控訴人の関与の有無を判断する上で重要であるところ、被控訴人は、原審における本人尋問において、同発言につき、「言った記憶はないが、自信はない。」、「言っていない方が強い。」などと曖昧な供述をしている上に、被控訴人がA18から同発言を行ったことを指摘されながら反論していないこと(原審における被控訴人)も併せ考慮すると、被控訴人は本件放火依頼発言を行ったものと認めるのが相当である。
本件放火依頼発言は、他人に犯罪行為を行うことを依頼するものであり、通常、飲食店内で行われる性質のものではないことは確かであるが、店舗内での飲食の際の発言ということになれば、発言者の真意を確定的に把握することは困難な面があり、現に、A16及びA17は「冗談半分の発言であると理解」したのであって、かえって好都合であるということもできる(逆に、改まった場所で行われた場合、相手方から発言者の確定的な意思に基づくものであると受け取られる可能性が高い。)し、A16及びA17が、あえて、被控訴人に上記発言の理由を問いたださなかったのも、被控訴人の真意を測りかねていたためであるということができるから、被控訴人の不自然である旨の指摘は当たらないというべきである。
そして、本件放火依頼発言が行われた時期が本件火災発生の二、三か月前であり、かつ、本件火災共済契約が締結された直後であることからすれば、同発言は本件火災に対する被控訴人の関与を窺わせる極めて重大な発言であるというべきである。
(イ) 被控訴人は、控訴人との間で平成四年一一月に締結した本件自宅建物及びa荘の火災共済契約を平成一七年六月三〇日に掛金延滞により終了させた後、平成一九年六月ころ、上記両建物ではなく、本件建物につき、本件火災共済契約を締結している。本件自宅建物及びa荘の固定資産税評価額(平成二二年度)合計は三五〇〇万円を超えているのに対し、被控訴人自身が行った本件建物の評価額(平成一八年時点)は一〇〇〇万円程度であることや、月々の保険料は一〇〇〇円程しか差がないことを考えると、あえて、新規に本件建物のみを火災保険の対象としたこと自体、不自然な感を否めない。被控訴人は、本件火災共済契約を締結した経緯につき、原審における本人尋問において、銀行に備え付けられていたパンフレットを見て本件火災共済契約を申し込んだと供述するが、上記一(8)ア(ア)認定の被控訴人の控訴人との間の火災共済契約歴に照らして不自然である。
しかも、本件火災共済契約は、建物の保障額が被控訴人自身の評価額を著しく上回るものであった。
(ウ) さらに、本件火災は、本件火災共済契約締結の約五か月後、その保障開始日の約四ヵ月後という近接した時期に発生している。
(エ) 本件火災発生当時、被控訴人は、二〇〇〇万円を超える支払債務を抱え、明らかになっているものだけでも月々の約定支払額が五五万円を超えていた(久留米市宮ノ陣町の物件の売買代金債務を含む。)。被控訴人は、その一部(少なくとも月額九万三四〇〇円)の支払を遅滞し、他の一部(月額一五万六〇〇〇円)については支払停止の状態となり、債権者から支払の督促を受けていたばかりか、固定資産税等多額の税金を滞納し、その支払に窮する状況にあった。
もっとも、被控訴人の所有する本件各不動産については担保価値が存在しており、被控訴人も一旦は、金融機関に対し、これらを担保に追加融資を申し入れ、金融機関から融資可能額の提示を受けていた。しかしながら、被控訴人は、その後、追加融資の申込みを行っていないところ、当時、別件離婚等請求事件において、本件各不動産が財産分与の対象財産となっていたことや追加融資を申し込んだ後に申込先の金融機関に対する借入金債務の一部の支払を停止する事態となり、残部についても支払を遅滞し、同機関から支払督促を受けるに至ったこと等からすれば、結局、本件各不動産を担保に融資を受けることは困難であったと考えられる。
被控訴人が自ら進んで本件火災共済契約を締結したのは、まさに、このような状況下においてであった。
(オ) 被控訴人は、これまで、長期間にわたり、多数の保険会社との間で多数回にわたり保険契約を締結し、その結果、平成一一年から平成二二年までの間に支払を受けた保険金額は合計二〇〇〇万円を超えており、保険金が被控訴人の重要な収入源となっていたと言っても過言ではない。そして、被控訴人が、本件火災発生当時、債務や税金の支払に窮していたにもかかわらず、月額七万円前後の保険料(共済掛金)を支払い続けていたことは、被控訴人の保険金に対する依存の強さを示すものである。
(カ) 被控訴人は、本件火災の約一九年前に発生した旧自宅建物の火災事故により、控訴人他一名から共済金合計四五七〇万円の支払を受けた経験を有している。
(キ) 本件火災発生当日の被控訴人の行動(アリバイ)を裏付ける客観的資料はない。当日、被控訴人がA15に電話を掛けた事実があったとしても、そのことをもってアリバイの成立を認めることはできない。
かえって、本件火災の発生箇所である本件建物の三階西側の部屋ないし三階東側の部屋に関し、前者については被控訴人自らが単身で居住しており、後者については、入居者であるA10が、本件火災発生当日、早朝から外出して不在であり、被控訴人は、家主として同部屋の予備の鍵を保管していたというのであるから、自ら、ないしは第三者を使用して、これらの部屋の内部に放火することは十分に可能であったことになる。
イ 以上の各事情を総合勘案すると、本件火災は、被控訴人自らないしはその意を受けた第三者が、本件建物の三階部分の居室内に放火したことにより発生したものと推認するのが相当である。
なお、本件火災原因判定書には、「所有者(被控訴人)は、福岡県民火災共済に母屋(本件自宅建物)、a荘、e荘三棟の不動産物件に対して合計三九六〇万円の高額な保険契約があったが、二〇〇五年で解約になっている事実。従って、所有者がアパート(本件建物)に放火したと仮定しても、(本件建物には火災保険は付されていないので)何ら利益を得ることがないため、(所有者による)保険金放火は考えられない。」旨の記載も存するが、本件建物には、本件火災当時、本件火災共済契約が締結されていたこと等の正確な付保関係は前認定のとおりであって、本件火災原因判定書の上記記載はその前提が誤っていることは明白である。また、本件建物は平成一八年ころでも約一〇〇〇万円を超える程度と評価されていたことは上記のとおりであって、その価格は上記保険金額を著しく下回るものであったことや、被控訴人の本件建物における上記生活内容からすると、被控訴人は家財等についての実際的損害はあっても家財の保障額である上記四〇〇万円を客観的には著しく下回る額であったと推認されるので、被控訴人が本件火災によって本件保険金請求額に相当するような損害を被ったとは到底認められない。
(3) 以上によれば、本件火災は、被控訴人の故意によるものであるから、控訴人は、被控訴人に対して、本件火災事故について共済金の支払義務を負わない。また、被控訴人が本件火災事故について共済金の支払を請求したことは詐欺行為に該当するから、これを理由に、控訴人が、被控訴人に対してした本件生命共済契約を解除する旨の通知(上記前提事実(10))によって、同契約は解除されたことになる。そうすると、控訴人は、被控訴人に対し、本件転落事故、本件第一交通事故、本件暴行事故及び本件第二交通事故について、本件生命共済契約に基づく共済金の支払義務を負わない(上記前提事実(2)イ)。
したがって、被控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。
第四結論
よって、原判決は相当ではないから、これを取り消し、被控訴人の請求をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 廣田民生 裁判官 高橋亮介 佐々木信俊)
別紙一~四<省略>