福岡高等裁判所 平成4年(ネ)306号 判決 1994年3月24日
控訴人(原告)(選定当事者) 増田献治 外三名
被控訴人(被告) 三菱重工業株式会社
主文
一 控訴人らと被控訴人との間において、平成六年二月三日現在の別紙選定者目録記載の選定者らの年次有給休暇保有日数が別紙選定者別年次有給休暇保有日数一覧表(7)欄記載のとおりであることを確認する。
二 控訴人らのその余の確認請求を棄却する。
三 控訴人草野光善の賃金請求に係る控訴を棄却する。
四 当審における控訴人らの新請求及び控訴人草野光善の賃金請求に係る控訴に関する訴訟費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人ら
1 控訴人らと被控訴人との間において、平成六年二月三日現在の別紙選定者目録記載の選定者らの年次有給休暇保有日数が別紙選定者別年次有給休暇保有日数一覧表(2)欄記載のとおりであることを確認する(当審において交換的に変更された新請求)。
2 原判決中控訴人草野光善の賃金請求に係る部分を取り消す。
3 被控訴人は、控訴人草野光善に対し、金一万一五一七円及びこれに対する平成元年一二月二九日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 控訴人らの新請求をいずれも棄却する。
2 主文第三、四項同旨
第二事案の概要
当事者双方の主張は、控訴人らの確認請求について、原審では平成三年一二月二四日現在における本件選定者らの年次有給休暇保有日数が別紙選定者別年次有給休暇保有日数一覧表(1)欄記載のとおりであることの確認を求めるものであったのに対し、当審では平成六年二月三日現在における同日数が同一覧表(2)欄記載のとおりであることの確認を求めるものに交換的に変更されたことに伴い、本件選定者らの年次有給休暇保有日数が右(2)欄記載のとおり改められたほかは、原判決の「第二 事案の概要」欄記載(二枚目表末行目から七枚目裏一〇行目まで)のとおりであるから、これを引用する。ただし、二枚目裏末行目から三枚目表二行目にかけて「昭和五九年以来、夏季における一〇日程度の連続休暇を実施する一貫として、有給休暇(昭和六一年からは二日)の一斉取得の措置をとってきたが」とあるのを「昭和五九年以来、夏季における連続休暇を実施する一貫として、有給休暇(昭和五九年、六〇年は一日、昭和六一年からは二日)の一斉取得の措置をとってきたが」と改める。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、平成六年二月三日現在における本件選定者らの年次有給休暇保有日数が前記一覧表(2)欄記載のとおりであることの確認を求める控訴人らの請求は、同一覧表(7)欄記載の保有日数の限度で理由があるが、これを超える部分は失当であり、控訴人草野光善の賃金の支払を求める請求は、失当であると認定、判断するが、その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」における理由説示(七枚目裏一二行目から二〇枚目裏六行目まで)のとおりであるから、これを引用する。ただし、二〇枚目表五行目の「労基法二九条五項」を「労基法三九条五項」と改める。
一 乙第五六ないし第六〇号証、第六一号証の一、二、第六三号証、第六五号証の一、二、第六六ないし第六八号証、第六九ないし第七一号証の各一、二、第七二号証の一ないし三、第七三、第七四号証、第七五号証の一によると、被控訴人は、平成四年の計画年休についても、従前と同じ手続きを経て、平成三年一一月二七日、重工労組との間で、平成四年七月二九日及び三〇日を計画年休とする旨の書面による協定を締結し、平成五年の計画年休についても、同様の手続きを経て、平成四年一二月二六日、重工労組との間で、計画的付与日数を二日から四日に改め、平成五年七月二七日、二八日、八月一三日及び一六日を計画年休とする旨の書面による協定を締結したこと、平成六年二月三日現在における本件選定者らの年次有給休暇保有日数は、右四日の計画的付与による取得分を含め、前記一覧表(7)欄記載のとおりであることが認められる。
二 控訴人らは、当審において、平成六年二月三日付け第三準備書面に基づき、本件争点一について詳細な主張を展開しているが、その骨子は、原判決に対する批判を除き、原審における主張と同一である。
これに対する当裁判所の判断は、既に述べたとおりであるが、これを要するに、被控訴会社長崎造船所における本件計画年休は、労基法三九条五項の規定により年次有給休暇の計画的付与制度が新設されたことに伴い、その趣旨に則り、年次有給休暇の取得を促進するため、平成元年から、全体の約九八パーセントの従業員によって構成される重工労組との間の書面による協定に基づいて実施されたものであるところ、本件協定の締結に当たっては、昭和六三年一〇月以降、三つの労働組合との団体交渉を通じて、右制度導入の提案、趣旨説明、意見聴取等適正な手続きを経由したことが認められる。そして、本件計画年休は、その内容においても、事業所全体の休業による一斉付与方式を採用し、計画的付与の対象日数を二日(平成五年からは、四日)に絞るとともに、これを夏季に集中することによって大多数の労働者が希望する一〇日程度の夏季連続休暇の実現を図るという法の趣旨に則ったものであり、現時点において年休取得率の向上に寄与する結果が得られていると否とを問わず、本件選定者ら(長船労組組合員)について適用を除外すべき特別の事情があるとは認められない以上、これに反対の本件選定者ら(長船労組組合員)に対しても、その効力を有するものというべきである。
第四結論
よって、当審において交換的に変更された、平成六年二月三日現在における本件選定者らの年次有給休暇保有日数の確認を求める控訴人らの新請求は、前記一覧表(7)欄記載の保有日数の限度で正当であるから、これを認容し、その余は、失当であるから、これを棄却し、控訴人草野光善の賃金の支払を求める請求を棄却した原判決は、正当であって、右請求に係る控訴は、理由がないから、これを棄却することとし、当審における控訴人らの新請求及び控訴人草野光善の賃金請求に係る控訴に関すする訴訟費用の負担について民訴法九五条、八九条、九三条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 鍋山健 小長光馨一 西理)
選定者目録
長崎市田上町四〇四番地の二
選定者 石尾卓
同新中川町七番一〇号
選定者 歳田忠顕
同新戸町一丁目三番八号
選定者 中西紀久男
同大浜町四七三番一 ブルーハイツ大浜一〇〇二号
選定者 氏家久博
長崎県西彼杵郡長与町高田郷二五三二番地の三三
選定者 野中義民
長崎市北浦町二〇一八番地の一
選定者 長谷川広
同鳴滝一丁目一一番四一号
選定者 増田献治
同戸町三丁目二六二番地の五
選定者 田浦幸勝
同昭和町六番七号
選定者 久保田達郎
長崎県西彼杵郡長与町岡郷一二八番地の三
選定者 進藤成志
長崎市福田本町一四七〇番地の一
選定者 中村博
同飽の浦町一六番四号
選定者 草野光善
同高尾町六番六三号
選定者 宮副武夫
同芒塚町一八三番地の六
選定者 黒田徳一郎
長崎県西彼杵郡長与町岡郷一二八番地の三
選定者 野田英彦
長崎市大園町一〇番五―二〇六号
選定者 高比良宏
同辻町七〇番地
選定者 堀田敏之
長崎市西山台二丁目一五番三号
選定者 吉川幸雄
同城栄町二二番三号
選定者 寺田耕二
同西山台一丁目一番二八―六〇二号
選定者 本村多恵子
同京泊町三番地六〇
選定者 新郷大三郎
以上
別紙
選定者別年次有給休暇保有日数一覧表
選定者
控訴人ら主張日数
被控訴人主張日数
主文
(1)平成3年12月24日現在残存数
(2)平成6年2月3日現在残存数
(3)平成5年最終残存数
(4)平成6年初付与数
(5)平成6年2月3日現在残存数
(6)原審
(7)当審
石尾卓
7日
27日
0日
21日
15日
1日
15日
歳田俊顕
16日
42日
10日
21日
30日
10日
30日
中西紀久男
22日
49日
16日
21日
37日
16日
37日
氏家久博
7日
31日
0.5日
21日
19日
1日
19日
野中義民
16日
37日
6日
21日
25日
10日
25日
長谷川広
7日
32日
1日
21日
20日
1日
20日
増田献治
7日
25日
0日
21日
13日
1日
13日
田浦幸勝
22日
41日
9.5日
21日
29日
16日
29日
久保田達郎
16日
38日
6日
21日
26日
10日
26日
進藤成志
17日
40日
8日
21日
28日
11日
28日
中村博
12日
37日
5日
21日
25日
6日
25日
草野光善
5日
15日
1日
21日
8日
4日
8日
宮副武夫
11日
35日
4日
21日
23日
5日
23日
黒田徳一郎
9日
32日
1日
21日
20日
3日
20日
野田英彦
10日
28.5日
0.5日
21日
16.5日
4日
16.5日
高比良宏
19日
49日
17日
21日
37日
13日
37日
堀田敏之
10日
38日
6日
21日
26日
4日
26日
吉川幸雄
23日
50日
18日
21日
38日
17日
38日
寺田耕二
15日
47日
15日
21日
35日
9日
35日
本村多恵子
8日
35日
3日
21日
23日
2日
23日
新郷大三郎
24日
48日
20日
21日
38日
20日
38日