福岡高等裁判所 平成4年(ネ)628号 判決 1993年3月18日
控訴人
甲野一郎
右訴訟代理人弁護士
山喜多浩朗
被控訴人
乙川春子
右訴訟代理人弁護士
配川寿好
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一本件控訴の趣旨
一原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
二被控訴人の請求を棄却する。
第二事案の概要
次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」中、「第二 事案の概要」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人)
一1 控訴人は、決して豊とはいえない収入の中からも、被控訴人に生活費を渡しており、外食、ゴルフも数えるほどで、控訴人と被控訴人は、被控訴人の実家からの援助を受けなければ生活できないような状況ではなかった。
2 また、控訴人と被控訴人との間では、性交渉の回数は月二、三回程度と最初から少なく、これについて被控訴人から不満をいわれたこともない。控訴人の自慰行為は被控訴人の妊娠中のことであり、「女は子宮でしか物を考えられないのか」との被控訴人への発言も夫婦喧嘩の最中のことにすぎない。
3 被控訴人は、控訴人との生活が安定せず、性交渉が途絶えがちであったことに不満を抱き、現在生活の援助を受けている両親及び祖母の影響で本訴を提起しているにすぎず、控訴人と被控訴人との間には「婚姻を継続し難い重大な事由」は存在しない。
二控訴人は、婚姻の継続を強く望んでおり、被控訴人の態度如何によっては婚姻の継続は可能であるから、控訴人と被控訴人との婚姻生活は未だ破綻しておらず、被控訴人の離婚請求を認めた原判決は不当である。
第三判断
当裁判所も、被控訴人の本訴請求を原判決の認容した限度で認容すべきものと判断する。その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中、「第三 判断」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
一原判決三枚目裏二行目の冒頭から同裏三行目の末尾までを次のとおり訂正する。
「証拠(<書証番号略>、原審及び当審における控訴人、被控訴人各本人)を総合すると、次の事実が認められ、<書証番号略>の各記載及び原審及び当審における控訴人、被控訴人各本人の供述中、この認定に反する部分はにわかに採用できないし、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。」
二同三枚目裏六行目の「被告は」の次に「昭和五九年九月」を加える。
三同四枚目表七ないし八行目の「提出して」の次に「北九州市小倉北区内のアパートで」を加え、同裏五行目の「若松市」を「同市若松区」と訂正し、同裏一〇行目の「被告は、」の次に「不動産業の仕事柄、顧客の開拓のため交際が必要であるとして、被控訴人の納得を得ないまま、」を加える。
四同五枚目表七ないし八行目の「自慰行為をしており」の次に「(必ずしも被控訴人の妊娠中とは限らない。)」を加え、同裏三行目の末尾に次のとおり加える。
「 控訴人は不動産業を始めて間もなくであったため、顧客の開拓等のために不在であることも多かったが、被控訴人は、控訴人が在宅中も育児に協力的でなく、また、自己が生活費にも事欠く生活をしているのに、控訴人が家庭を顧みずに出掛けているとして、次第に控訴人を思いやりのない人間であると感じ、控訴人に対する愛情が薄れていった。」
五同五枚目裏九行目の「話になったが、」の次に「被控訴人の指摘する点を改めるのでやり直してほしいとの」を加え、同六枚目表初行の「自立神経」を「自律神経」と訂正する。
六同六枚目表八行目の「原告は」を「控訴人は」と、同表九行目の「若松市」を「若松区」と各訂正し、同行の「移転し」の次に「(なお、前記『B2』は、経費節減のため、平成二年一〇月に閉店した。)」を、同表末行の「原告及び被告は、」の次に「被控訴人の反対にもかかわらず、」を各加え、同裏初行の末尾に次のとおり加える。
「 しかし、被控訴人と控訴人の母親とは生活習慣等が異なることから、同居生活は被控訴人には苦痛であった。」
七同六枚目裏二行目の「平成三年六月」の次に、「、控訴人に対し、別居の意思を伝えて」を加え、同裏三行目の「祖父母」を「祖母」と訂正し、同裏五行目と六行目の間に次のとおり挿入する。
「11 控訴人の所得は、平成元年度が約二七〇万円、同二年度が約二〇〇万円であったが、同三年度は四二〇万円である。控訴人は、不動産業は次第に安定してきているとして、被控訴人との婚姻生活の継続を強く希望しているが、被控訴人は、控訴人に対する愛情を既に喪失しており、婚姻生活を継続する意思は全く無い。」
八同六枚目裏六行目の冒頭から同七枚目表七行目の末尾までを次のとおり訂正する。
「 右認定の事実によると、被控訴人と控訴人の婚姻生活は、控訴人が自営業であって収入に不安定な面があるため、当初からその生計に不安定要因を抱えていたものであるが、被控訴人としてもこれを納得しながら、他方では控訴人が被控訴人と話し合って十分な説明をしないまま、生活費に事欠く状態であるのに、交際と称して出歩くことから控訴人の態度に思いやりのなさを感じたもので、控訴人においても多忙であるとはいえ、家庭を顧みて被控訴人の不満を解消する努力が十分でなかったといえるし、また、被控訴人と控訴人との性交渉は入籍後約五か月内に二、三回程度と極端に少なく、平成二年二月以降は全く性交渉がない状態であるのに、反面控訴人自身はポルノビデオを見て自慰行為をしているのであって、性生活に関する控訴人の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかはなく、これらの点を指摘する被控訴人に対して、控訴人は、一旦は改善を約しながら依然として改めていないこと、被控訴人は、控訴人への愛情を喪失し、婚姻生活を継続する意思が全くないこと等の事情からすると、控訴人と被控訴人との婚姻生活は既に破綻しているものといわざるを得ず、被控訴人と控訴人との間には『婚姻を継続し難い重大な事由』があると認めるのが相当である。そして、前記の事情に照らせば、右破綻の原因については主として控訴人に責任があるというべきである(<書証番号略>、当審における控訴人本人の供述中には、被控訴人の両親らが控訴人と被控訴人の婚姻生活に過度に干渉したとする部分があるが、これを考慮しても、右の判断を覆すに至らない。)。」
第四結論
よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官柴田和夫 裁判官有吉一郎 裁判官山口幸雄)