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福岡高等裁判所 平成5年(ネ)19号 判決 1994年6月30日

主文

一  一審原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  一審被告は一審原告に対し金一二七五万六九〇〇円及び内金一八三万円に対する昭和六二年五月一日から、内金一八八万一六〇〇円に対する昭和六三年五月一日から、内金一九一万三四〇〇円に対する平成元年五月一日から、内金一九八万五四〇〇円に対する平成二年五月一日から、内金二〇五万八六〇〇円に対する平成三年五月一日から、内金二〇五万八六〇〇円に対する平成四年五月一日から、内金一〇二万九三〇〇円に対する平成四年一一月一日から、各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  一審原告のその余の請求を棄却する。

二  一審被告の控訴を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審を通じてこれを四分し、その一を一審原告の、その三を一審被告の各負担とする。

四  この判決は第一項1に限り仮に執行することができる。

事実

第一  申立

〔平成五年(ネ)第一九号〕

一  控訴の趣旨

1  原判決を次のとおり変更する。

一審被告は一審原告に対し金一六一五万円及び内金二二九万五〇〇〇円に対する昭和六二年五月一日から、内金二三五万二一六四円に対する昭和六三年五月一日から、内金二四一万四七三九円に対する平成元年五月一日から、内金二五一万七五三五円に対する平成二年五月一日から、内金二六三万一七五円に対する平成三年五月一日から、内金二六三万一七五円に対する平成四年五月一日から、内金一三一万五〇八〇円に対する平成四年一一月一日から、各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。

2  仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  一審原告の控訴を棄却する。

2  控訴費用は一審原告の負担とする。

〔同年(ネ)第二二号〕

一  控訴の趣旨

1  原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。

2  一審原告の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  一審被告の控訴を棄却する。

2  控訴費用は一審被告の負担とする。

第二  主張

双方当事者の主張は、以下に訂正するほかは原判決「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。原判決三枚目裏五行目の「一日以降の不当利得分の返還を求めている。」を次のとおり訂正する。

「一日から平成四年一〇月三一日までの不当利得の返還を求めている。また、一審原告は、土地共有者の一方が自己の占有部分を除く他の土地部分を他の共有者に使用収益させる旨一方的に宣言したからといって、他の共有者がこれに同意しない限り、当該占有部分の単独使用による不当利得返還義務が減縮されることはあり得ない旨主張する。」

第三  証拠(省略)

理由

一  当裁判所は一審原告の請求は本判決主文において認容した限度において正当であり、その余は失当と判断する。その理由は以下に訂正するほかは原判決の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六枚目裏七行目の「算定することとするが、」から同八枚目表五行目までを以下のとおり訂正する。

「算定することとする。ところで、原審記録によれば、一審被告は原審第四回口頭弁論期日(平成三年一月三〇日)において、本日をもって原判決添付物件目録(五)記載の建物を一審原告に引き渡し、事実上その使用は一切しない旨陳述し、これに対し一審原告は、一方的な提案であり、公平な二分の一の建物使用の提供ではないから応じかねる旨答弁したことが認められ、また、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙三号証及び川崎鑑定によれば、一審被告は遅くとも同年二月末日までには同建物から退去し、その使用を止めたが、なお同目録(四)、(六)記載の二棟の共有建物の単独使用を継続していること、三棟の建物の総床面積は二七一・七四平方メートルであり、そのうち同目録(五)記載の建物の床面積はその約四三パーセントを占めるが、同建物は公道から最も奥まった位置にあり、公道に出入りするには一審被告が現在も使用している通路を通行するほかなく、同建物のみを独立して使用することは事実上極めて困難であることが認められる。

原審口頭弁論期日における一審被告の右陳述は、同目録(五)記載の建物に対する共有持分権の放棄の意思表示とまでは認められず、また、一審原告は同建物の引き渡しを受けることを拒絶したのであるから、その占有権が一審原告に移転したこともあり得ない。もとより、共有者の一人が自己の共有持分の割合を越えて共有物を使用収益したことによる不当利得返還の債権債務関係は、共有物の使用収益という事実行為ないしは客観的状態に基づいて発生するのであるから、その者が使用せず、支配も及ぼしていないために他の共有者において使用し、もしくは使用可能であった共有物の全部もしくは一部分については不当利得返還の問題は生じない。しかしながら、共有者の一人による共有物の単独使用が一定期間継続していた場合は、その使用を廃止し、他の共有者が使用可能な状態においたといえるためには、単に事実上使用を中止するのみでは足りず、共有物そのもの、もしくは鍵などこれに代わる物の引き渡しなどによる占有の移転が必要であると解される。本件の場合、同目録(五)記載の建物の占有が一審被告から一審原告に移転した事実は認められず、しかも、前述のような各建物の配置、公道との位置関係、通路の状況に照らすと、一審被告が同目録(五)記載の建物の使用を中止したからといって、直ちに一審原告が代わってこれを使用し、もしくは他に賃貸して収益することができる状態になったとは認め難い。そうである以上、一審被告の従前からの同建物の使用収益がこれによって終了したと認めるのは困難であり、したがって不当利得返還義務の範囲が縮小したと解することはできないというほかない。」

2  原判決七枚目裏六行目冒頭から同一二行目の「となる。」までを、以下のとおり訂正する。

「(6) 平成三年五月一日から平成四年四月三〇日まで

月額金一七万一五五〇円 年額金二〇五万八六〇〇円

(7) 平成四年五月一日から同年一〇月三一日まで

月額金一七万一五五〇円

六か月分の合計金一〇二万九三〇〇円

右の(1)ないし(7)の合計は金一二七五万六九〇〇円となる。」

二  よって、一審原告の請求は右の限度において正当であり、その余は理由がないから、一審原告の控訴に基づきこれと異なる原判決を変更し、一審被告の控訴は理由がないから棄却することとし、民訴法九六条、九二条、一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

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