福岡高等裁判所 平成5年(ネ)664号 判決 1994年3月16日
控訴人(被控訴人Z補助参加人)
Y
右訴訟代理人弁護士
加藤修
被控訴人
X
右訴訟代理人弁護士
大村豊
被控訴人
Z
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
1 昭和四〇年一月一一日熊本県上益城郡矢部町長に対する届出によってされた被控訴人両名間の協議離婚が無効であることを確認する。
2 控訴人と被控訴人Xとの間において前号記載の協議離婚が無効であることの確認を求める訴えを却下する。
二 訴訟費用は、一・二審を通じ、被控訴人ら間に生じたものは被控訴人Zの負担とし、被控訴人Xと控訴人との間に生じたものは被控訴人Xの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人Xの請求を棄却する。
3 訴訟費用は一・二審とも被控訴人Xの負担とする。
二 控訴の趣旨に対する被控訴人Xの答弁
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者双方の主張及び証拠の関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 被控訴人Xの控訴人に対する協議離婚無効確認請求について
離婚が無効であることを確認する旨の判決には対世的効力があると解するのが相当であるから(人事訴訟手続法一八条一項の類推)、本件で併合審理されている被控訴人Xの被控訴人Zに対する本件離婚届に基づく協議離婚(以下「本件協議離婚」という。)の無効確認訴訟において同協議離婚が無効であることを確認する旨の判決が言い渡され、これが確定すると、同協議離婚が無効であることは対世的に確定され、第三者といえどもその効力を争うことはできなくなる。従って、本件協議離婚につき、控訴人との間で別途その無効を確認すべき利益はないものといわざるを得ず(なお、本件では、前記のとおり控訴人及び被控訴人Zに対する各訴えが併合審理されていて、控訴人としても本件協議離婚の効力を実質的に争うことのできる地位にあったものである。)、本件訴えは、訴えの利益を欠く不適法な訴えとして、却下を免れない。
二 被控訴人Xの被控訴人Zに対する協議離婚無効確認請求について
1 被控訴人Zに対する本件協議離婚の無効確認請求については、同協議離婚を無効とする旨の原判決が言い渡されているところ、これに対して被控訴人Zは控訴を提起していない(当裁判所に顕著である。)。ところが、控訴人は、同請求について、控訴状に「被控訴人Zについても被控訴人としている点については、同人の控訴が期待できず、仮に同人が控訴しなければ控訴人としては人事訴訟手続法一八条により本件協議離婚が無効であることを争うすべがなくなるためである。」旨記載し、被控訴人Zをも被控訴人としているので、この点についてまず検討する。
被控訴人らは、後記認定のとおり、昭和三〇年一月一六日に婚姻しているところ、昭和四〇年一月一一日付で本件離婚届が提出され、その後、昭和四四年一〇月一五日付で控訴人と被控訴人Zとの婚姻届が提出されている。右認定の事実によれば、控訴人は、被控訴人ら間の本件協議離婚の無効が確定することにより、控訴人と被控訴人Zとの婚姻が重婚に該当することになって、同婚姻が婚姻取消訴訟の対象になってしまうことになるから、本件協議離婚の無効確認訴訟の結果に重大な法律上の利害関係を有するものであり、従って、少なくとも同訴訟につき、補助参加の利益があるというべきである。従って、控訴人は、被控訴人ら間の本件協議離婚の無効確認訴訟の当事者ではないものの、講学上の共同訴訟的補助参加人として、補助参加の申立てと共に同訴訟につき控訴の申立てができるものと解される。そして、控訴人の控訴状記載の前記主張は、右補助参加の申立てと共にする控訴の申立ての趣旨を包含するものと理解するのが相当である。
そうすると、右控訴の提起により、被控訴人ら間の協議離婚無効確認訴訟は当審に移審していることになるから、この点について以下判断する。
2 当裁判所も、被控訴人Xの被控訴人Zに対する請求を認容すべきものと判断する(但し、協議離婚無効確認訴訟の実質は確認訴訟であると解すべきであるから、原判決主文一を主文一1のとおり改める。)。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決書の理由一、二に記載のとおりであるから、これを引用する。
(一) 原判決書二枚目裏一三行目の「乙第一号証」の次に「(甲第三ないし第六号証及び乙第一号証については、弁論の全趣旨によってその成立と原本の存在を認めることができる。)」を加える。
(二) 同三枚目表一〇行目の「嘉熊」の前に「で、当時Z家を取り仕切っていた」を、同一三行目の「婚姻届を提出した」の次に「(なお、同届出は被控訴人Zの一存でなされたものであるが、控訴人は、後にこれを追認した。)」を、同裏一二行目の「嘉熊」の前に「で、当時Z家を取り仕切っていた」をそれぞれ加える。
三 以上のとおりであって、原判決中、被控訴人Zに対する本件協議離婚の無効確認請求を認容した部分は相当であるが(但し主文一1のとおり改める。)、控訴人に対する本件協議離婚の無効確認請求を認容した部分は不相当であるから、原判決を主文のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条本文を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官足立昭二 裁判官有吉一郎 裁判官奥田正昭)