福岡高等裁判所 平成6年(う)55号 判決
漁業法第66条第1項は,魚種につき何らの限定を付すことなく中型まき網漁業を営むことを都道府県知事の許可にかからしめており,法律上,その許可がなければ,およそ同漁業を営むことはできないこととされている。他方,同法第65条第1項には,都道府県知事は,水産動植物の採捕に関する制限又は禁止等の事項等に関して,漁業取締りその他漁業調整のため規則を定めることができる旨規定されており,大分県では,この規定及び水産資源保護法第4条第1項に基づき,水産資源の保護培養,漁業取締りその他漁業調整を図り,漁業秩序の確立を期するという目的の下に,本件の大分県漁業調整規則が制定され,その規則中に同漁業の許可手続きについての規定が定められていることに徴すれば,同漁業の許可をするにあたって制限を付するには,右の目的に沿うものであることが要求されているというべきであるが,右の目的に沿うものである以上,知事が,同漁業の許可を与えるに際し,その裁量により魚種による制限を加えることも可能であるといわざるをえない。すなわち,漁業法第66条第1項は同漁業を一般的に禁止しており,その禁止を解除するか否かのみならず,どの範囲で解除するか否かについても,知事の合理的な裁量に委ねられているものと解される。
本件告示(大分県知事の昭和60年7月16日付告示第917号)は,同漁業の許可について,申請の期間を定めるとともに,その申請を「いわし・あじ又はさば」を目的として採捕するものに限定しているのであり,これに応じて,被告人会社は,「漁獲物の種類」として「いわし・あじ・さば」と記載した申請書を提出した上,漁業種類として「いわし・あじ・さばまき網漁業」と明記された本件許可証の交付を受けているのであるから,右掲記の魚種の採捕を目的とする同漁業に限って許可が与えられたというべきであり,被告人会社が,同漁業によりそれ以外の魚種を目的として採捕することは,禁止されていたものと認められる。
同漁業は,網に入った大量の魚を根こそぎ捕獲することのできる極めて効率的な漁法であるから,一本釣り漁業者等との調整や漁場の立体的な利用の調整をはかる趣旨の下に,従来から同漁業が対象としてきた浮き魚(回遊魚)である「いわし,あじ,さば」を他の魚種と区分し,これに限定して一個の許可の対象とすることは,実質的に見ても,合理的な措置というべきであって,知事の裁量の範囲内にあるということができる。