福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1405号 判決 1950年7月11日
被告人
合名会社瓊浦器工具製作所
右代表社員 彌永寅之助
主文
原判決を破棄する。
被告会社を判示第一の罪について罰金十一万九千二十六円十錢に、判示第二の罪について罰金四万六千五十円に処する。
被告会社代表社員が会社の業務に関し昭和二十二年十二月中製造した税込移出価格十二万三千二百五十円(課税標準価格九万四千八百七円六十九錢)に相当する第一種丁類脇机その他の家具四十点を製造場より移出して販売しながら不正の行為により物品税二万八千四百四十二円三十錢を逋脱したといふ公訴事実については被告会社は無罪。
訴訟費用は被告会社の負担とする。
理由
弁護人和智昂、武井正雄の控訴趣意の第二点について
(イ) 1.昭和二十二年法律第一二四号施行(同年十一月十五日から施行)前の行為についてはなお刑法第五十五条の規定を適用すべきであることは右法律第一二四号附則第四項の明規するところであるが、物品税の如き賦課課税制を採る租税にありては申告は一つの資料であつて政府の側でする課税の処分決定を俟つて納税額が確定するのであるから、本件場合の如く詐偽その他の不正行為により、真実に反し一部の移出物品を除外して申告せず、結局その分につき課税がなかつたという場合においては、法定の納期限が経過した時に逋脱犯が成立するものと解するのを相当とする処、物品税は製造者において、毎月その製造場より移出した物品に付その品目毎に数量及び価格を記載した申告書を翌月十日迄に提出し、毎月分を翌月末日迄に一括納税しなければならないことは物品税法第八条第一項、第十条第一項に規定するところであるから、昭和二十二年十月中の移出物品に対する物品税の逋脱犯は法定納期限が経過する時、即ち同年十一月末日の経過と共に成立し、従つて同年十一月中に移出した物品に対する税金逋脱犯は同年十二月末日の経過と共に成立することとなるのである。それ故原判決が同年十月末日までに移出した毎月の移出物品に対する逋脱犯に連続犯の規定を適用し、同年十一月以降分については併合罪と認めたことは相当であつて、所論は当らない。
(ロ) 2.しかし、所論施行規則は之が適用されたことが判文上自ら明らかであれば足り、必ずしも之を明示することを要しないと解すべきところ、原判文を見れば課税物件となる物品の品目、数量及び種別、類別を明示し、旦つ課税標準価格と税込移出価格を併記して税率適用の根拠と、逋脱額を明らかにし以て逋脱犯の構成要件を判示している以上、更に犯罪構成要件を直接規定したものではない施行規則の条文を掲記する必要はなく、右判示事実に脱税罰則である物品税法第十八条を掲記するだけで罰条の摘示として十分と云うべく、所論は採るに足らない。
(本件は擬律錯誤により破棄自判)