福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1552号 判決 1950年5月11日
被告人
石田朝一
外一名
主文
原判決を破棄する。
被告人両名をそれぞれ懲役一年六月に処する。
押收にかかるゴム製品需要割当証明書二枚(証第六条の一、二)及びゴム印四個(証第七号乃至第十号)はいずれもこれを沒收する。
理由
鶴弁護人の控訴趣意第一点について。
九州ゴムベルト商業協同組合係員に対し、偽造にかかるゴムベルト需要者割当証明書を恰かも真正に成立した割当証明のように装うて提出行使し、同係員をしてその旨誤信させ、因つてゴムベルトを交付させようとして遂げなかつた所為は、たとえその対価として支払つた金額が目的物件相当の金額であつても、詐欺未遂の罪を構成するものと解するのが相当である。何となれば、詐欺罪は、他人を欺罔して財物を奪取することによつて成立しいやしくも欺罔による財物奪取の事実がある以上、その財物に対する対価の提供があつたか否か、若しくはその対価が相当であつたか否かのような事実は、詐欺罪の成立に何らの消長を及ぼすものではないと解すべきであるからである。
(註、本件は量刑不当にて破棄自判)