福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1705号 判決 1950年7月18日
被告人
大和久
主文
本件控訴を棄却する。
理由
弁護人松岡益人の控訴趣意第二点(訴因変更)について。
刑事訴訟法が起訴状記載の公訴事実に訴因の明示を求め、訴因の変更に関して厳格な手続規定を設けたのは、訴訟における被告人の防禦権の保護に欠くるところなからしめようとする趣旨にほかならず、およそ犯罪の未遂の事実は既遂の事実のうちに包含せられるのであるから、起訴状記載にかかる窃盜既遂の公訴事実に基いて、判決において窃盜未遂の事実を認定されることがあつても訴訟における被告人の防禦権の行使上、何ら実質的な不利益をもたらす虞なく、従つて、このような場合には、訴因変更の手続をふむ必要がない。所論は右と異る見解を前提とするものであつて採用し難い。