福岡高等裁判所 昭和24年(つ)450号 判決 1949年10月21日
被告人
諸景燮
主文
本件控訴を棄却する。
理由
前略
第二点に対する判断
賍物牙保の罪は賍物の有償的処分に関する媒介斡旋をする罪であつてその罪の成立に、賍物の有償処分の存在を要することは所論のとおりである。しかしその処分が賣買である場合においては賣買契約の成立を以つて足り必ずしも賍物自体の現実的な交付、移轉を要せず、且つ又一旦賣買契約が成立した以上後に至つて解約されたとしてもそれによつて既に成立した賍物牙保の罪が消減に帰することはない。被告人が本件洋服生地について買受人との間にその價格をとりきめて賣買の意思表示をした事実は原判決挙示の証拠によつて認められないことはないのであるから原判決に所論のような事実誤認若しくは擬律錯誤の違法があるといふことはできない。
(以下省略)