福岡高等裁判所 昭和24年(つ)579号 判決 1950年4月13日
被告人
松島時雄
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中百三十日を本刑に算入する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人三原道也の控訴趣意第一点について、
成る程原審公判調書を見ると、所論の如くその第一回公判調書には「検察官は起訴状を朗読した」と記載されている丈で、追起訴状を朗読した旨の記載は何処にもない。しかし所謂追起訴状も起訴状であつて、追起訴状という特別の起訴状が法律上存在する訳ではなく、只ある被告人に対する或る被疑事実について起訴があつた後更に同一被告人に対する他の被疑事実について起訴があつた場合前に起訴された被疑事実の記載してあるものを起訴状と呼び後に起訴された被疑事実の記載あるものを追起訴状と呼んで前後時を異にして起訴された二個の被疑事実を区別する便宜のための呼称に過ぎないのである。そして原審第一回公判調査に依つて検察官の起訴状朗読後の審理の経過を見ると、該公判調書上の「検察官は起訴状を朗読した」との記載は昭和二十四年六月一日附の起訴状の外所論の追起訴状をも朗読した趣旨であること、検察官も事実追起訴状の朗読によりそれに所載の被疑事実について審判を請求したことを窺知することができるから、原判決には所論のような審判の請求を受けない事件について判決をした違法はなく、論旨は理由がない。