福岡高等裁判所 昭和24年(つ)974号 判決 1950年3月29日
被告人
星山初男
主文
原判決を破棄する。
本件を福岡地方裁判所に差し戻す。
理由
職権で調査すると、証人本村彦次は「金城載華は所在不明である」旨供述しているけれども、すべて証人の証言は公判期日において被告人の反対尋問を経たものでなければこれを被告人に不利益な事実認定の証拠とすることができないものとする証拠法の原則に鑑みると、他に右金城載華の所在を搜査したがその所在が判明しないため到底同人を公判期日に証人として喚問することのできないことを確認するに足りる資料のない本件においては未だたんに右所在不明の供述の一言のみを以つては右証人に対する伝聞事実の内容の供述者が所在不明のため、公判期日において供述することができないものと認めることはできない。
すると原審は前掲刑事訴訟法第三百二十四条第二項第三百二十六条第一項の規定に違反して漫然、証拠とすることのできない、いわゆる伝聞証言を証拠とした違法があるものといわねばならない。