福岡高等裁判所 昭和25年(う)119号 判決 1950年4月28日
被告人
板井彌信
主文
本件控訴は之を棄却する。
理由
弁護人豊田孝知の控訴趣意について。
弁護人は原判決はその理由中「被告人兩名の右各暴行中前記各傷害を生ぜしめたもの及びその輕重を知ることが出來ないものであると」しながら同時に暴行者である原審相被告人板井滿雄(控訴人の実弟)には懲役二年、三年間執行猶予の寬大なる判決を言渡しながら何等の理由を附せずして被告人に対しては懲役三年の実刑を科しているのは判決に理由を附しない違法がある許りでなく憲法第十三條第十四條の精神にも反すると主張しているが刑法第二百七條の所謂同時暴行の場合傷害を生ぜしめたもの及びその輕重を知ることが出來ない場合においても法は決して常に必ずしも同時暴行者に同一処刑を要求している訳ではないこと勿論であつて裁判所は各暴行に及んだ動機加害時間の長短、暴行の態容、暴行者の年齡、暴行者と被害者との身分上その他の関係その他各般の事情を參酌の上、科刑上差等を設け得べきこと勿論であり又斯る処置が憲法第十三條第十四條の精神に反しないことも殆んど言を強いないところである。