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福岡高等裁判所 昭和25年(う)1220号 判決 1950年12月08日

被告人

椛田末男

主文

原判決を破棄する。

本件を田川簡易裁判所に差し戻す。

理由

弁護人村田利雄の控訴趣意第一点について。

原判決が挙示の証拠によつて被告人か判示の日頃判示場所で吉村明に対し硫酸亜鉛三百叺(五十瓩入)を判示の物価庁告示第七八八号所定の販売業者の統制額より六万四千二百七十五円を超過する代金二十二万五千円で販売契約し金二十二万円を受領した事実を認定していること所論のとおりである。そして右挙示せられた各証拠のみによるときは被告人が判示販売取引につき、判示のとおりの統制額を超過して判示金額の金員を受領したことを認めることができるが前記告示によれば硫酸亜鉛は九八%以上につき一屯当製造業者販売価格の統制額は九千三百円、販売業者販売価格の統制額は九千四百八十五円とし、この規格以下のものゝ価格は純分比例計算により算出した価格とする旨定められている。しかるに、原審において取調べた兵庫県衞生研究所技師辻本義夫作成の鑑定書によれば本件取引にかゝる判示硫酸亜鉛の純分は六六、二%強であることが認められる。そうだとすれば判示硫酸亜鉛の統制額は原判決で認定した統制額よりは著しく低位のものとなり、従つて判示金額の価格超過とはならないことが計算上明らかである。そもそも、統制額超過販売に関する物価統制令違反罪の事実摘示としては、被告人が統制額を超えて物品を販売した事実を摘示すれば足り、必ずしも、その超価額が何程であるかを明示する必要はないのであるが、原判決は本件取引契約につき具体的に数字を挙げて価格を超過したとする限りにおいては、その価格超過の基礎となる統制額を確定しなければならない。その統制額か果して何程であるかを確定しないで統制額より金六万四千二百七十五円を超過して本件取引をしたものと認定したのは結局事実の誤認があるものといわねばならぬ。そして、その誤認は判決に影響を及ぼすこと明かであるから此の点において論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

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