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福岡高等裁判所 昭和25年(う)295号 判決 1950年4月14日

被告人

藤勝美

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役一年に処する。

原審における未決勾留日数中六十日を右本刑に算入する。

但し本裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

原審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人久保田源一の控訴趣意は末尾添付の書面記載のとおりである。

同控訴趣意第一点について、

しかし、窃盜の既遂の時期は他人の占有する自己以外の者に属する所有物を、自己の実力的支配内に移し、これを排他的に自由に処分することができる状態におくを以つて足りるのであつて必ずしも永遠にかつ安全に、その物を自己に保持し得べき状態におくことを必要とするものでない。

とすることは既に大審院の判例の趣旨とするところで、当裁判所は今なおこれが変改を必要とするものとは認めない、そして原判示事実は被告人が原判示小窪龍一方店頭で同人所有の代用毛糸一封度を窃取したものであるというのであつて、原判決が挙示した証拠によると、被告人が右店頭で着用していた上着を判示毛糸にかぶせてこれをその上衣に包んだ上右手で抱いて帰ろうとしていたところを店主から捕えられたというのであるから、被告人の右の所為は正しく財物をその事実上の支配内に移したものといわなければならない。従つて原判決が被告人の右の所為を窃盜既遂罪に問擬したのは、まことに正当で、原判決には所論のような事実を誤認した違法はなく、論旨は理由がない。

(註、本件は量刑不当にて破棄自判)

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