大判例

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福岡高等裁判所 昭和25年(う)3054号 判決

原審第一回公判調書によると原審裁判官は検察官の起訴状朗読並に刑事訴訟法第二百九十一条第二項刑事訴訟規則第百九十七条第一項各所定事項の告知後或は自ら被告人と被害者との面談の模様、詐欺の手段とした手形の内容同手形の処分等犯罪の具体的手段方法について質問し或は検察官が同様の事項について質問するのを放置し被告人の陳述を求めその状宛も旧刑事訴訟法の被告人訊問に類する手続の一部を経た後初めて証拠調の段階に入つている事項を認めることができる。

惟うに現行刑事訴訟法は被告人の検察官と対等な訴訟当事者としての地位を強化し被告人訊問の段階を認めず裁判官が証拠調べの段階に入る前に偏見又は予断を懐くことは避けるため起訴状一本主義を採り第二百九十一条の手続が経つた後は直ちに証拠調に入ることにしている。黙秘権等の告知も主として被告人保護のためにされる手続でありこの機会に裁判官が被告人に対し公訴事実に対する認否を質し争点の整理をすることや又被告人をして自発的に被告事件の争点を明かにし或は弁明させることは差支ないがこの程度を起えて犯罪の具体的手段方法実行後の行動等につき自ら問を設けて被告人に質問し或は被告人と対等な当事者たる検察官が同様被告人訊問に類する質問をし被告人をして供述せしめるが如きは到底許されない所である(第三百十一条は被告人が任意に供述する場合は裁判長は何時でも必要とする事項に付被告人の供述を求めることができ検察官も裁判長に告げて前項の供述を求め得る旨規定しているけれどもこれは証拠調の終了後か或は証拠調の途中に於て必要と認めた事項について被告人の陳述を求めることができる旨を規定しているのであつて冒頭陳述以前において或は冒頭陳述に際して被告人の供述を述め得る趣旨ではない)。

そうすると前記認定の原審の訴訟手続は刑事訴訟法の前敍の建前に違反するもので、この違反は判決に影響を及ぼすことが明かである。

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