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福岡高等裁判所 昭和25年(ネ)29号 判決

控訴代理人は「被控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人等の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する」との判決を求めた。

当事者双方の事実上竝びに法律上の主張、提出援用の証拠、及びその認否は、

控訴代理人において、「本件の争点は、被控訴人等が旧地方税法第六十三条第一項に所謂事業を行う個人即ち事業主であるか、又は所得税法第九条第一項に所謂賃金所得者即ち給与所得者であるかの一点である。

第一、(一)本件事業の実態は次のごときものである。

(1)  船、網、その他船具漁具を持つ所謂網主があり、

(2)  これが資金を出して、出漁に必要な燃料、電球、氷、魚函、食料、薪炭その他の出漁用資材を調達し、

(3)  先ず、船頭(漁撈長)を決める。

(4)  船頭は、船長以下の乗組員を集め、

(5)  右舟子をそれぞれの部署と役割に配置し、

(6)  網主から船と資材とを受取つて出漁期を待つ。

(7)  船頭は出漁の時期と場所とを定めて出漁する。

(8)  出漁中の漁獲作業は、船頭を首長とし、各部署役割に従う指揮命令によつて行う。

(9)  漁獲を終ると船頭は、網主と予め打合せた港に帰港する。

(10)  漁獲物のうちから、一定の割合の現物(所謂菜)を船頭を含む乗組員(所謂網子)に一定割合で配分し、

(11)  その残りを網主が、予め指定した出荷機関に引渡す。

(12)  出荷機関はこれを売却(販売を代行)し、所定の手数料、販売経費等を差引いた上で、残りを網主に支払う。

(13)  これを受取つた網主は、それから先ず右(2)に要した経費(仲持経費)を差引き、

(14)  次に、一定割合の金員を―一定条件のある場合に、「おとし」として差引き、

(15)  最後に残つたものを網主と網子との間に、予め定められた割合をもつて分割して歩金を定める。

(16)  右(13)の仲持経費と(15)のうちの網主の歩金は、網主の所得とし、(14)の「おとし」と(15)のうちの網子の歩金とは、網子の所得とする。

(17)  網子相互の間には、その部署役割に従つて定められた、一定の歩合があつて、網子の所得は、この歩合に従つて計算し、網主からそれぞれ支払う。

(二) 以上の事実は、これをどう解するかには争があらうが、事実そのものに関する限り多く争がない。控訴人が、被控訴人等網子が網主との共同事業者であると強く主張する理由は、次の通りである。

第二、

(1)  被控訴人等は第一記載の事業に所謂網子として労力を提供し、これに対して収益を得ている。右収益は賃金でなく、事業収益の分配である。即ち

(2)  網子が如何に長時間働き、それが如何に厳しい労働であつても、不漁で漁獲が少い場合、漁価が低廉で資材の仕入高が高いなどのために、事業全体としての利益が少い時は、網子の収入は少くなる。これに反して、豊漁であるとか、資材の仕入値に比し漁価が高い等の事由で、事業全体としての利益が多い時は、網子の労働は、短時間で、且つ比較的楽であつても、その収入は多くなる。即ち、網子の所得は、事業の収益に比例し増減し、労働の量に比例しない。雇傭は、労働力の売買であり、賃金は労働力の売買価格である。従つて賃金は、自ら一定の時価を持ち、労働時間、労働の種類、性質及びその程度に比例して、増減するものでなければならないからこの点からして、被控訴人等の収益は、網主との共同事業による収益の分配と見るべきである。

第三、被控訴人等の収益は、所謂「出来高払」又は「割増制」による賃金ではない。

(1)  「出来高払」又は「割増制」賃金においては、所謂基本給又は固定給が定められている。これに反し網子たる被控訴人等には、基本給固定給が存しない。尤も所謂最低保障たるものがあるが、これはその額極めて少く、しかもそれは網子が出漁しない時は、貰えないもので、本来の基本給、固定給とは性質を異にする。

(2)  「出来高払」「割増制」の場合は、労働者が熟練し、熱心に長時間働けば、これに応じて、賃金が増加しこれに反し、労働者が未熟で不熱心で怠れば、これに比例して賃金が減ずる。その増減は、一に労働の質と量とに比例し、それは飽くまで労働力の対価たる賃金の額を労働の成績によつて算定する賃金額の算定方法である。これに反し網子の収益は、前述の如く、労働の質量に比例することなく漁船装備の良否、経営の巧拙、漁撈技術の熟否、漁獲高の多少、漁価の高低その他諸種の要素の複合によつて生ずる。事業全般の成績に比例して増減せらるるものであつて労務の成績とは関係がない。

第四、被控訴人等は労務を出資する共同事業者である。

本件揚繰網漁業において網子は特殊の経験者、技術者である。これらの網子がその技術経験を提供し、これに対し網主が第一に記載した通りの財産を提供し、両者が漁業を営むものと云うべきである。

第五、共同事業においては、損失の分担は如何様にも定め得る。本件において、網子たる被控訴人等の労務出資に対して配当される利益の分配が、不漁の結果、その出資した労務の相当賃金に達しない時は網子はその差額だけ事業上の損失を負担したこととなる。そして前記の最低保障は、網子の損失分担に限度を定むるものに外ならない。

第六、事業上の指揮権を有しない共同事業主も存するから、網子が業務上の指揮権を有しないから、事業主と云えないと判断するのは誤りである。本件において網主は営業部門の業務を担当するに対し、船頭は漁撈なる作業部門を担当し、各その部門に属する業務について執行権を有する。舟子は何れの業務についても執行権を有しないけれども、このことの故に舟子が事業主たることを妨げられるものではない。

第七、共同事業主の一員が同時に従業員として、共同事業の一部に従事し、その業務について、業務執行権を有する他の共同事業者の指揮を受けることは、通例として行わるる所である。本件において舟子は漁撈作業に従事し、その作業について、船頭の指揮を受ける。けれどもその事実は、一面において、舟子が本件の事業主たることを妨ぐるものではない。

第八、共同事業において事業の実権が甲に属することは、甲だけが事業主であることにはならない。

甲が設備、資材、資金を出資して、営業部門を担当し、乙が労務を出資して、作業部門を担当する場合は甲が屡々乙を圧倒して全業務について、事業上の支配を行う結果となつている例を見る。この場合でも業務の実権が何人に在るかということ、事業主は誰かということは、別個の問題である。本件においても網主が物的資本の出資者であり、営業々務を担当し、社会的経済的に有力であり、伝統的勢力を持つことの故に、網子に対し事実上の圧力を有し、事業全部について、実権を握つていることが考えられる。かゝる意味において、網主は舟子の選定についても、又漁撈作業の計画或は方針の策定についても、事実上船頭に干渉することがあり得るものと考える。然しながら、仮にその事があり、網主が本件事業の全面に亘つて事実上の支配を行うものであるとしても、本件事業が網主の単独事業で網子との共同事業でないと言うことはできない。

第九、網子は業務執行権を網主に委せているときでも事業主権を有する。

何処に、如何なる時期に出漁するか、又漁獲物を誰に、如何なる価格で売るかの決定に業務執行の一部として、執行権者の権限に属する。これに対し、出漁するかしないか、漁獲物を売却するか廃棄するかという事業の根本問題は、業務執行の問題でなく、事業主の決定する事業主権の問題である。網子は業務の執行を網主に委せてあるが、事業自体の根本問題については、これが決定に参加する権利を有する。

第十、所謂労働協約の存在することをもつて、網子と網主との関係が雇傭であるとは断じ得ない。

本来の意味における労働協約は、各事業場毎に、その事業場に現に雇傭されている労働者によつて作らるる労働組合と使用主、又はこれら単位労働組合の連合体とこれらを使用する使用主の団体との間に締結せらるゝ団体契約であるところ、被控訴人等の結成している労働協約は一の網主とその網主の持船に乗組んでいる網子の作る単位労働組合との間の団体契約でもなく、同組合の連合体との間の団体契約でもない。被控訴人等の労働協約は、野母、或は脇岬という一定地域に居住し、鰮揚繰網漁業についての特殊技術を有する漁民が相集つて、一つ団体を作り、これらが一定の条件を定め、この条件に依らなければ、網子として、乗船しないことを申合せ、同地域の網主にこれを承諾させ、もしこれらの網主がこれと異る条件をもつて網子を募集するときは、ボイコツトする旨を協定したものに過ぎず、右は寧ろ労務提供の条件の準則を定めた「カルテル」の一種と見るべきである。従つて、労働協約存するが故に、網主との雇傭であると断定するのは、本末を顛倒するものである。右の所謂「労働協約」が準則として定むる労務提供の形式は、これを法律上解すれば、雇傭、請負でなく、労務出資契約である。

第十一、被控訴人等が網主に雇傭される者とすれば、労働基準法所定の、一定の労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、休業手当の支給、保障基本給、災害補償の支払等の規定が適用さるべきであるのに、被控訴人等に対しては、敍上の規定は何れも実行されていない。本件事業は未だ現段階においては、未だこの性質が、賃金制度に親しむ程度に発達していない。

第十二、然しながら、網主と網子とは、物的資本の出資者と、労務の出資者として、対立する。この対立関係は、雇傭における労働者と使用主との関係と相似の性格を持つ関係上、労働行政の面において、本件網子を労働者とみなすを至当とする場合が屡々あるであろうが、この故に本件網子を雇傭による労働者とすることはできない。

第十三、被控訴人等の請求は、信義則と禁反言の法則に反する。被控訴人等は、昭和二十二年の所得税申告に際しては、本件所得を事業所得として申告納税し、国税庁によつて、この事が認められている。然らば、同一の被控訴人等が、本件において同一年度の、同一所得を事業所得に非ざる給与所得と主張し、事業税の賦課処分に異議を述ぶることは、信義誠実の原則に反し許すべからざることである。而して、被控訴人等が、所得税申告において、事業主として申告納税し、これが認められていることが、控訴人が本件事業税の賦課を決定した最も有力な事由であつた。然らば、被控訴人は、禁反言の法則に従つても、本件において、事業主でないと主張することは許されない。」と述べた。(各証拠省略)

三、理  由

控訴人が、昭和二三年七月七日法律第一一〇号地方税法(以下単に旧地方税法と称する)及び長崎県税賦課徴収条例の定めるところに従つて、控訴人等に対し、同人等が第二種事業たる水産業を行う者と認定の上、被控訴人主張の通り昭和二十三年度の第二種事業税を賦課したこと、被控訴人等がこれを不服として異議の申立をなしたところ、控訴人が、昭和二十四年三月二十五日これを却下したこと、被控訴人等が何れも肩書地を住居とし、原判決添付別紙第二書面上欄記載の者等を網主とするその網子で、揚繰網漁業に従事する者であることは当事者間争なく、当事者弁論の全趣旨に依れば、前記異議の申立は法定の期間内になされたことが認められる。

被控訴代理人は、被控訴人等は網主に対し、労務を提供しその対価として報酬を得る網主の被傭者であつて、前記税法に謂う所の事業を行う者ではないと主張し、控訴代理人は、被控訴人等は、網主と共同して漁業を営むか(若しくは網主との請負契約により漁業をなし、もつて漁業を行う者であると主張する。よつて被控訴人等と網主との関係、同人等の揚繰網漁業における地位、その業務の実態について考察するに、当事者弁論の全趣旨により当裁判所が真正に成立を認める甲第一、二号証、成立に争ない甲第四号証の一、二ないし甲第八号証に、原審証人山崎安勝、草野秀吉、荒木寅吉、遠藤光司、当審証人久宗嵩、松本威雄、松本六郎、柴原正己、田岡卯一郎の各証言及び当審における態本源一本人の供述並びに当事者弁論の全趣旨を合せ考えると、

一、事業の経営者である網主が経営に要する船舶、網その他の船具漁具等の附属品、漁撈に必要な燃料、電球、氷、魚函、薪炭その他出漁用の資材を調達(控訴人の前顕事実摘示番一の(一)の(1)(2)参照)提供し、右船舶、網その他船具漁具等の修理も自己の負担においてなし経営上所要の資金を出し、先ず漁撈全搬の指揮者たる船頭(漁撈長)と本船の指揮者たる船長(船長は網主の委任により船頭において雇入るることあり)を雇入れ、次に右船頭及び船長等の幹部と協議の上舟子を雇入れ(舟子は網主と委譲により船頭等の幹部において雇入るることあり)ている事実、

二、本件野母村脇岬村、樺島村には地域単位の舟子(従業員)を構成員とする漁民労働組合が結成され、同組合と網主の団体たる漁船団との間、或いは網主単独と同人に雇われている従業員のみの団体との間に、労働協約が締結されている事実、

三、右一記載の如く漁業の生産手段は総て、網主が負担するに対し、舟子は単に労働力のみを提供し、網主の雇人であり、その委任を受けた船頭の指揮の下に沖作業に従事している事実。(控訴人主張の様に、共同事業で被控訴人等が事業主権を有するから、網主が自己一存で全然漁業をやらないとか廃止することが法律上不可能なのではなく、通常そんな不利益なことをしないのが人間の性質であり、又被控訴人等が雇傭契約上の債権関係、同人等の労働請求権(労働権)をもつている関係から、しないだけのことである)

四、漁獲物の所有権は網主に存し、網子はこれに対し共同事業者としての持分を有することを観念せず、これが処分も専ら網主においてなし、網子はこれに関与しない事実(控訴人主張の如く漁獲物が共有であるからこれを放棄し又無償で処分し得ないのではなく、網子が歩合制による報酬請求権を有するからと、人間である以上、網主が左様な馬鹿げたことをしないまでのことである。)

五、漁獲高が所定の量を超ゆるときは、先ず網子の自家消費に充てる菜或いは「おとし」(各網主と網子との間で異るも通常五パーセント位)と称する部分を差引き、更に一ケ月間の仲持経費(操業費)を控除して、残り純水上高の五割五分内外を網主、四割五分内外を網子に各分配し、網子は右四割五分の中から、その出稼率に応じ、所定の報酬の支給を受けている事実、

六、不漁の場合は、網子に対しては最低給与保証を支給され、仲持経費は網主の負担となり、経営上の損失は全部網主において責任を負担している事実、

七、網子の下船は民法組合の規定に従い組合員の除名の規定たる「組合員の除名は、正当の事由ある場合に限り他の組合員の一致を以つて之を為す」のではなく、労働協約の存しない場合又はその締結せらるるまでは、網主(又はその代行者)において解雇をなしてきておることが認められ協約後は協約の制限下になすことが推度せられ、所謂除名の方法によつてなしたることなき事実、(即ち雇傭の規定によりなされ組合の規定によりては理解し難い事実)

を各認めることができる。そして以上の認定事実に依ると、本件漁業は、全く網主の事業であり、被控訴人等は、網主に雇傭され、その所得(歩合)は、雇傭による労務提供の対価として、網主から支払われる報酬であつて、控訴人主張のような、網主との共同事業ないし請負による収益でないと認むるのが相当である。(若しこれを控訴代理人主張のように共同事業であるとすれば、反証ない限り、民法組合の規定が適用され、または少くとも類推さるべきであるが、民法第六百六十八条、六百七十条第一、二項、六百七十二条第二項、六百八十一条、六百八十三条等の規定が適用ないし類推さるべき事情は毫も認むるに足るものがない。この点については後記を参照)以上の認定に反する原審並びに当審証人相良哲夫の供述、当審証人奥野誠亮、同鎌田要人、立石正之の各供述部分は信用しない。その外に、控訴人提出依用の証拠で右認定を覆えして、これを共同事業又は請負なりとするに足る措信し得るものはない。而して旧地方税法第六十三条(現行法第二十三条参照)に所謂第二種事業たる水産業たる漁業を行う者とは、漁業に従事し、その収支が法律上直接自己に帰属する者を云い、右事業者に雇傭される者は、たとえその労務の対価たる報酬が確定賃金でなく、事業者(雇主)との間に予め定まつている所に従う漁獲物の高に応ずる歩合制によつて支払われ謂わば間接に帰属する場合は、右法案の対象たる「事業を行う者」と解すべきではない。蓋し、本件漁業における歩合制は、共同事業などの利益の分配方法として、支給されるものではなく、前記証拠に徴し明らかなように網主の立場から如何に網子に効率的に、意のまゝに働かせ得るかという手段として、採られている賃金の支払形態である。鰮揚繰網漁撈作業の実際を考えて見るに、最重要な作業は、時間にすれば三十分ないし一時間足らずの揚網作業である網を揚げるのは、全く甲板に並んだ四十名ないし七十名位の人の同質の手労働によつてなされる、原始的域を全くは脱していない事業でもある。そしてしかも短時間のために数十人の舟子等を準備し、この間魚群はもとより風も潮流も生き物のように刻々に変化するから機に応じて、数十人の乗組員を狭い船の上で、思うまゝに使いこなすことが、漁撈指揮の任に当る船頭の腕であり、且又この作業が網主の目のとどかない沖合でなされることを留意せねばならない。所定の労働時間、比較的平均化された労働に従事する陸上の近代資本家的生産方法における労働に比して、この漁撈作業は、自然的事情に依存左右される特性を有し本質的に労働時間によつては、作業量や成果を規定し得ない性格を有する。この特質性格からして、全員が一糸乱れず、最大の成果を挙ぐるために編み出されたのが歩合制という賃金の支払形態である。従つて乗組員は全く不漁の時でも収入がない(最低保証があるときはその額を得るが然らざる限り無償で働いた)だけで、それ以上経営の損失までは負担しない。換言すれば、不漁で経営が赤字の時は、賃金を払わないという賃金制度である、という各般の事実が前段認定に供した証拠によつて認められる。

以上の認定に反し、被控訴人等を網主との関係を共同事業なりとし、又これを前提とする。控訴代理人の、事実摘示第二ないし第九及び第十二の主張は当裁判所の採用しないところである(第三の(1)において主張の、基本給、固定給は、雇傭の常態ではあつても、不可欠のものとは云えない)、第十の所論は労働組合に関する誤れる見解を基礎とし、本件被控訴人等の労働協約を条件カルテルの一種に附会せんとするもので、その採るべからざるは多言を要しない。(この点については米国におけるシャーマン法の労働関係への適用を排除したクレイトン法制定の経緯が考え合さるべきである)。加之、前認定に徴し明かなように、被控訴人等が労働組合を結成し、労働協約を締結したことのみをもつて、これを網主の雇傭関係にあるとするのではない右事実をもつて雇傭関係にありとする認定資料の一に供するものであるから、所詮、所論は採用の限りではない第十一の所論については、当審証人米沢克男の証言によれば、所論の各法規の適用あることが明らかであるから、同主張も採用に値しない。

前同第十三の主張について。被控訴人等が所論の如く、申告納税し租税官庁によつて、その事が認められ、又右事実が控訴人において、本件事業税を賦課するに至つた、最有力の事由であつたとしても、税法が税収入の確保を目的とする法律であり、しかもその目的達成の手段たる法の性格上、強度の強権性と強行性並びに技術法的色彩を有することに鑑みれば、被控訴人等が事業主に非ず、その所得が事業所得にあらざること前認定の如くである以上本件事業税賦課処分の違法を攻撃し、税法の正当なる適用を要求する本訴請求をもつて、信義則ないし禁反言の原理に反すとする論は到底理解し難いところである。蓋しこれを控訴人主張の通りに解せんか、納税義務者に非ざる者が一定の税について一度申告納税し、租税官庁これを容認せんか、ここに前記の性格を有する税法の規定を秩序は破壊せらるるに至るべく、これを換言すれば、私人と徴税官庁との合意をもつて、法律に違反する税を創設するの結果を招来するに至るであろう。

行政事件訴訟特例法第十一条により本訴を棄却すべき旨の主張については(一)右第十三の主張に対して説示した点、(二)当審証人大川益男、竹内清吾、相良哲夫及び被控訴本人熊本源一の各供述の一部より認められる。本件事業税の賦課については、条例を制定せんとする当初から反対あり、而も被控訴人等は挙つてこれに対し賦課処分後は固より、その前から不満を表明し異議を申立てていた事実よりして、控訴人が今少しく慎重に事案の真相を究明し、本件被控訴人等が網主の被傭者なりとの判断に到達しいたるにおいては控訴人の照会に対し政府(地方財政委員会)においても本件条例の制定を不可とし事業税を賦課すべからずと回答したるべしと推認せらるべき事情にありたる事実(成立に争ない乙第三号証参照)。(三)尚この点に関し、原判決の判断するところと同一の理由により(従つて、該記載をここに引用する)、控訴人の右主張を排斥する。

即ち原判決は相当で、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条によりこれを棄却し、訴訟費用の負担について同法第九十五条第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 仲地唯旺 二階信一 秦亘)

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