福岡高等裁判所 昭和26年(う)1281号 判決 1951年8月31日
控訴人 被告人 山崎弘
弁護人 杉村逸楼 堤牧太
検察官 山田四郎関与
主文
原判決を破棄する。
本件を佐世保簡易裁判所に差戻す。
理由
弁護人杉村逸楼が陳述した控訴の趣意は弁護人堤牧太及び被告人がそれぞれ提出した趣意書記載のとおりであるからここにこれを引用する。
職権を以て按ずるに原判決は被告人が賍物たるの情を知つていたことの証拠として被告人の司法警察員に対する第一回供述調書及び同じく検察事務官に対する第一、二回供述調書中の右に照応する供述記載を挙示している。然しながら訴訟記録第二回公判調書によれば右各供述調書はいづれも検察官から刑事訴訟法第三百二十八条により被告人の原審公判廷における供述(賍物に関する知情を否認する)の証明力を争うために提出され証拠調がなされたことが明かである。そうすると右各供述調書は供述の証明力を争うためにのみ用いられるべきものでこれを以て犯罪事実認定の積極的資料となし得べき限りではない。
而して右各供述調書以外には被告人の賍物に関する知情の点を認むべき証拠はない。然らば原判決は判決をするについて法令の適用を誤つたものと言うべく、この誤は判決に影響を及ぼすことが明かであるから刑事訴訟法第三九七条第三八〇条に則り原判決はこの点で破棄を免れない。ところで右各供述調書は自白調書であり刑事訴訟法第三百二十二条により証拠とすることができる性質のものであるから更に同条による証拠調をやり直させるため同法第四百条本文に則り本件を原審裁判所に差戻すべきものとする。
よつて各控訴趣意についての判断を省略して主文のとおり判決する。
(裁判長判事 筒井義彦 判事 川井立夫 判事 安東勝)