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福岡高等裁判所 昭和26年(う)1782号 判決

刑事訴訟法第三百一条は同法第三百二十二条及第三百二十四条第一項の規定により証拠とすることができる被告人の供述が自白である場合には犯罪事実に関する他の証拠を取調べられた後でなければその取調べを請求することはできない旨規定しこれは裁判官の予断偏見を避け検察官に対し先自白に関する証拠の取調に先立ち公訴にかゝる犯罪の罪体が客観的に存在することを証明せしめんとしたものであるが本件において検察官は先長崎税関支署口ノ津出張所長大蔵事務官五島半次の検察官宛告発書続いて本件密輸出入に使用された機帆船第八北辰丸の差押目録の各取調を請求し次で被告人松茂亮一の検察官に対する前記供述調書の取調を請求したもので告発書は訴訟条件に関するものではあるが右の順序に証拠調が行われたものと解する外ないのであるのみならず検察官が公訴にかゝる犯罪の罪体が客観的に存在することを立証するに当り被告人の供述調書以外に取調を請求すべき証拠が何も存在せず一人の被告人の供述調書をその当該被告人のみならず他の共同被告人に対する公訴にかゝる罪体の存在をも証明しようとする場合は直に被告人の自白を内容とする供述調書の取調を請求するも己むを得ないことで当該被告人以外の共同被告人の各供述調書は当該被告人において証拠とすることに同意し又は刑事訴訟法第三百二十一条各号に当る場合であれば当該被告人の公訴にかゝる罪体の証拠に供し得るのであるから検察官が直に被告人の自白を内容とする供述調書の取調を請求し証拠調がなされても刑事訴訟法第三百一条の規定に違反するものとは言へない。本件について見ると本件の供述調書の取調請求並証拠調は正に之に該当し被告人松茂亮一の検察官に対する本件供述調書は(一)で説明の如く証拠能力があるので右供述調書の取調請求並証拠調は同法第三百一条に違反しない右供述調書取調後なお長崎税関支署鑑査課長の犯則物件鑑定書や被告人の身上取調書の取調請求がありその取調が行われてはいるが右鑑定書は直接本件公訴の罪体そのものに関するものでなく罪体物件の価格に関するものであり又身上取調書は被告人の身上に関し公訴の罪体そのものに関するものでないから最後に取調べられても前記法条に違反するものでなく寧被告人の身上取調書の如きは最後に取調ふべきものであろう。

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