福岡高等裁判所 昭和26年(う)2931号・昭26年(う)2932号・昭26年(う)2933号・昭26年(う)2934号・昭26年(う)2935号・昭26年(う)2936号 判決
原判決が本件罪証に供した所論ロバート軍曹作成芦屋町警察署長宛の書面は原審において適法な証拠調をしたものであるから証拠能力があることは勿論である。尤も同書面中所論の「政府の財産を窃取したものであると考えられる」旨の記載部分は同軍曹の意見を附したもので該部分の証拠能力のないことは所論のとおりであるが原判決は同記載部分を除く以外の部分を罪証に供する趣旨においての標目を掲げたものであることが推認されるので同書面を援用した原判決に違法があるということはできない。なお論旨は被告人及び原審弁護人において、同書面を証拠にすることに同意をしたのは錯誤に基くものであるというのであるが、刑事訴訟法上錯誤による書面を証拠とすることの同意を無効とすべき規定がないので右書面の同意が錯誤に出でたとの事由によつて一旦発生した書面の証拠能力を滅失させることはできない。しかも原判示第一の事実は原判決の挙示した証拠により充分これを認定することができるので原判決には所論のように採証法則違反乃至は事実誤認の違法はなく、論旨は理由ない。
(註。本件は量刑不当により破棄自判)