福岡高等裁判所 昭和26年(う)3082号・昭26年(う)3084号・昭26年(う)3085号・昭26年(う)3081号・昭26年(う)3083号・昭26年(う)3087号・昭26年(う)3086号・昭26年(う)3089号・昭26年(う)3088号・昭26年(う)3090号・昭26年(う)3091号 判決
関税法違反の犯罪にかかる貨物又は犯罪供用漁船の沒収及び追徴に関する関税法第八三条の規定が、沒収制度の有する保安処分的性質と刑罰的性質とのうち、特に刑罰的性質に重点をおき、刑法総則における沒収の裁量的であるのを排斥して特に必要的のものとし、本来犯人以外に所有者がある場合においては、その所有者の権利を尊重して沒収しないものとする刑法総則のたてまえを捨てて、いやしくも犯人の占有にかかるものは之を沒収すべきものとし、又犯罪の後犯人以外の者が取得した場合その取得の当時善意であつたことを認めることができないときはなお之を沒収すべきものとする等、犯人以外の者の権利を或限度制限して、なお違反物件の沒収を強行しようとするゆえんのものは、畢竟この種関税法違反の所為にかかる物件の犯罪関係人及びこれと同一視すべき者による保持を禁止し、取締を厳にして違反行為の禁遏をはかるにあるものと解せられ、右の法意に照らすときはいやしくも犯行当時において犯人の所有又は占有にかかるものであつて、其の後裁判当時沒収することが出来ないものは、犯人の責に帰すべからざる不可抗力等の事由により沒収不能に帰した場合を除き、すべてその原価(船舶についてはその価格)相当額を追徴すべきものと解するのを相当とする。
今、本件についてこれを見るのに、本件貨物は、原判示犯行当時被告人千葉末雄の占有にあつたこと記録上明白であり検察事務官の作成にかかる昭和二五年一一月一八日附同被告人の供述調書大蔵事務官松尾信人の作成にかかる同月三〇日附告発書等によれば本件貨物は原判示犯行の翌日昭和二五年二月五日日通倉庫において窃取された賍品ではないかとの疑により、長崎県東彼杵地区警察署に押収されたところ、その後その疑が解けて被告人に還付され、被告人において任意に原判示除某、趙某、朴某ら三名の親族又は兄弟と称する者らに交付し本件告発当時においては、既にその所在判明せず、原審判決当時沒収不能の状態にあつた事実を認めるに足り原判決が、本件貨物の原価相当額を追徴したのは相当の措置であつたと解せられる。関税法第八三条第三項に「前二項ノ規定ニ依リ沒収スヘキ物ノ全部又ハ一部ヲ沒収スルコト能ハサルトキハ其ノ没収スルコト能ハサル物」とは、単なる占有物を含まないと解すべしとする論旨には賛同し難い。