大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(ネ)559号・昭26年(ネ)563号・昭26年(ネ)562号・昭26年(ネ)560号・昭26年(ネ)561号・昭26年(ネ)558号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人等の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出、援用、認否は、控訴代理人において、(一)被控訴人等には本件掛戻金の請求につき訴訟を提起する適格がない。(二)本件掛戻金債務は訴外五島化学工業株式会社が免責的に引受け控訴人は右債務関係より脱退した旨の抗弁はこれを撤回すると述べた外、すべて原判決事実摘示と同一であるからこれを引用することとする。

<立証省略>

三、理  由

控訴人並びに被控訴人等がいずれも福江町福江郷川口兼吉発起の一回金二千円掛の相互貯蓄組合と称する無尽講の会員であつて、控訴人が昭和二十四年八月十三日の講会において講金を落札したことは当事者間に争がなく、控訴人が右落札金を受領するにあたり講に対し同年八月三十日より昭和二十六年七月十三日まで毎月二回(十三日と三十日)一回に金七千円宛合計金三十二万二千円を掛戻すことを約したこと、及び被控訴人有川犬之助が右講の二口の加入者で昭和二十五年一月十三日と同年四月十三日の二回落札し、被控訴人塩塚利惣次、同岩本英一が共に同年三月三十日落札し、被控訴人真島馬吉は同年五月三十日、同津元久吉は同年四月三十日、同山田政治は同年二月二十八日各落札したが、控訴人は右各落札の開会日における掛戻金の支払をしていないことは弁論の全趣旨に徴し控訴人の認むるところである。

控訴人は先ず本件講会は貸金業等の取締に関する法律に違反し、大蔵大臣の許可なくして組織されたものであるから無効である旨抗争するけれども成立に争のない甲第四号証(規約)と原審証人都々木権助、浦上茂平の各証言によると、本件講会は四十九名の会員が会員相互の金融を図る目的を以て組織した組合の性質を有する無尽講であつて、貸金業等の取締に関する法律にいわゆる貸金業を営むものに該当しないことは勿論であり、又同法の一部が非営業無尽にも準用されることは同法第十六条の規定するところであるが、本件無尽講会が同法による大蔵大臣の指定を受けたものであることについては控訴人の何等論証しないところであるから、本件講会は右取締法の対象となるものではなく、控訴人の抗弁は理由がない。

次に控訴人は控訴人が落札により受領した講金は金九万二千円に過ぎず、本件掛戻債務金三十二万二千円中これを超える分はすべて利息であるから、利息制限法所定の制限利息を超過する部分の請求は失当である旨抗弁するのでその当否を検討する。

成立に争のない甲第一号証及び前示都々木、浦上両証人の証言によると、控訴人は本件落札により金十一万七千円の講金の給付を受け、これに対し金三十二万二千円の返済義務を認め一回金七千円宛を合計四十六回に亘つて掛戻すことを約し、講に対して借用証書を差入れたことが明かであつて、この事実だけから見ると右落札金の受領及びその掛戻の約定は高利を以て金員の貸付を受け、これを分割して弁済することを約した消費貸借契約であるかの如き観がないでもない。然しながら前示甲第四号証及び当審証人山田伊勢松の証言によると、本件無尽講においては講金の受領者を入札の方法で定め、掛戻金額を標準としたせり上げの方法で最高額入札者を落札者とする結果、前示の如く掛戻金額が手取金額に比し著しく高額である場合が生じ得るけれども、勿論常にこのような場合のみでないことが認められると共に、元来無尽講の会員は無尽契約に加入すると同時に契約所定の掛金を満会に至るまで支払う義務を負担するものであつて、落札後においてはこれに掛戻金又は返掛金なる名称を附しているけれども、特に別個の性質を有するものではないと解すべきである。

而して一般に落札者は講金を受領するにあたつて、講世話人に対し形式上消費貸借に基く借用証書を差入れるのを通例とするけれども、これは単に将来の掛戻義務を明示し、掛戻金取立の際の証拠を提供するに過ぎないのであつて、旧来の掛金債務を消滅せしめ、新たに消費貸借上の債務を負担する更改的性質を有するものではないと解するのが相当である。

そうすると本件掛戻金債務は、組合契約たる性質を有する無尽契約によつて発生した債務に外ならないのであつて、消費貸借契約に基くものではないと断ずるのが相当であるから、右債務については利息制限法の適用される余地はないものというべきであり、控訴人の抗弁は採用に値しない。

而して前示甲第四号証及び都々木、浦上両証人の証言並びに成立に争のない甲第三号証によると、本件講会においては会員の選出した理事二名が総代として講会事務全般の処理に当り、掛戻金の如きも理事がその名においてこれを取立て、落札者に交付していたのであるが、掛戻金の不払が増加し総代だけではその取立が困難となつたので昭和二十四年十一月十三日の講会に集会した三十数名の会員により、爾後落札者が直接不払者に対し掛戻金の取立をなすことに講規約を変更したことが認められるから、落札者たる被控訴人等は右新規約により控訴人に対し本件掛戻金の支払を請求する権利を有するものといわなければならない。

よつて控訴人に対し被控訴人有川犬之助より二口分の掛戻金一万四千円、爾余の被控訴人等よりそれぞれ同金七千円宛及びこれに対する支払命令送達の翌日であることが記録上明白である昭和二十五年六月七日以降各完済まで年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める本訴請求は全部正当としてこれを認容すべきであり、右と同旨の原判決は相当であつて控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 森静雄 竹下利之右衛門 中園原一)

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