大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(ネ)688号 判決

控訴人は本案前の控訴の趣旨として「原判決を取消し本件を原裁判所に差戻す。」との判決を、本案について、「一、原判決を取消す。二、被控訴村長が昭和二四年八月二〇日控訴人に対し昭和二四年度産小麦二俵を供出させた処分を取消す。三、被控訴村長が控訴人に対し、昭和二五年三月一日までに昭和二四年度産玄米二石四斗七升三合を供出させた処分を取消す。四、被控訴村長は、右二項の小麦二俵及びこれに対する昭和二四年八月二一日以降返還に至るまで年五分の割合による量の小麦と、三項の玄米二石四斗七升三合及びこれに対する昭和二五年三月二日以降返還に至るまで年五分の割合による量の玄米を、所要の費用を負担して控訴人の指示する原状に回復して引渡せ。五、若し右特定の小麦及び玄米を返還することができないときは、これと同量の代替物を控訴人の住所において引渡せ。六、もし右代替物の返還も不能のときは、被控訴村長は控訴人に対し、小麦については一俵(六〇瓩入)につき金二・四一五円、玄米については一石につき金一三・五〇〇円の割合による金員を支払え。七、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴村長は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

事実及び証拠の関係は、

控訴人において、(一)本案前の主張として、被控訴村長(第一審被告)の訴訟代理人として原審及び当審の訴訟行為を追行してきた弁護士水町新三に対する被控訴人宮野村々長の訴訟行為の授権は地方自治法第九六条第一項第一〇号に違反し、宮野村議会の議決を経ていないから、右授権は無効であつて、かつ追認をうる見込もないのである。従つて本件は第一審以来無権代理人たる右弁護士によつて訴訟行為がなされているので、民事訴訟法第三八九条第二項にいはゆる第一審裁判所における訴訟手続が法律に違背したることを理由として、事件を第一審裁判所に差戻すとの判決を求めると述べ、(二)本案について、小麦一俵(六〇瓩入)の時価は金二・四一五円で、玄米一石の時価は金一三・五〇〇円であるから、代償金の支払を求める予備的請求を控訴の趣旨第六項の通り拡張すると述べ、甲第二四号証を提出し、当審証人清水マサ、佐藤種雄、大塚丈之助の各証言及び当審控訴本人の尋問の結果を授用し、

被控訴訴訟代理人において、控訴人の前示(一)の主張に対し、訴訟代理の授権について宮野村議会の議決があつたか否かは知らないが、本件は被告・被控訴人として応訴する場合であるので右議決は不要である。同(二)に対し、小麦及玄米の点は認めると述べ、甲第二四号証は成立を認めると述べ、

た外は原判決の「事実」に示す通りであるから茲に引用する。

三、理  由

一、本案前の控訴人の主張について。

地方自治法第九六条第一項第一〇号によると、普通地方公共団体たる宮野村が当事者である訴訟事件に関して宮野村長が同村の代表者として訴訟行為をなすには、同村議会の議決を要するけれども(村が被告として応訴する場合でも右第九六条第一項第一〇号の適用があるけれども、しかし、たとえ議会の議決を得ることができず、また議会が応訴することを否決したとしても、被告たることを免れ得ないのは当然であるから、村が被告として訴えられた場合は、議会の議決の有無は村長と議会との内部関係の問題であつて、被告たる村の応訴行為の有効・無効とはかかわりのないものと云うべきである。)、本件におけるがごとく、宮野村長が当事者たる場合は、前示第一〇号の適用のないことは、同規定に照らし容疑の余地がないのである。従つて、当事者である宮野村長が、本件訴訟の第一、二審を通じ当事者として訴訟をなし又は弁護士水町新三にその訴訟委任をなすについて、宮野村議会の議決を経ていないのは固より当然であつて、これらにつき議会の議決を必要とすることを前提とする控訴人の主張は理由がない。

二、本訴が不適法であるとの被控訴人の主張について。

右主張の理由がないことは原判決説示の通りであるからこれを引用する。

三、玄米の売渡命令の取消を求める請求(本案の控訴の趣旨第三項の請求)について。

被控訴人が控訴人に対し昭和二四年度産玄米の供出割当量を三石四斗二升二合と定め、後これを二石四斗七升三合と補正減額したこと、被控訴村長の控訴人に対する昭和二四年度産玄米の売渡命令に基き、昭和二五年三月一日までに控訴人の供出として玄米二石四斗七升三合が供出されたことは当事者間に争がない。控訴人は、右補正前の割当量たる三石四斗二升二合全部について福岡県から供出義務の免除を受けた旨主張するけれども同主張に相応するかのように見える原審及び当審証人清水マサの証言部分は採用し難く、その他に右主張事実を認むるに足る証拠はない。しかして成立に争のない甲第六・第八・第九号証当審証人佐藤種雄の証言及び当事者弁論の全趣旨によつて成立を認め得る甲第七号証、原審証人清水マサの証言によつて成立を認め得る甲第一〇・第一一号証の各記載に、右清水マサの証言(但し前示採用しない部分を除く)、原審証人田中貞次の証言、当審証人佐藤種雄の証言を合せ考えると、昭二四年一二月二五日付で被控訴村長から控訴人に対し、食糧確保臨時措置法第八条の規定により控訴人の昭和二四年度産玄米の供出変更数量を三石四斗二升二合と指示したところ、昭和二四年一二月二四日付で嘉穂地方事務所長から管下町村長宛に、同年産米の供出について町村長から指示された供出変更数量を「真にやむを得ない者」として供出できない農家は、その不可能な事由及び数量等を町村長に届出ることができる旨通達されたので、控訴人は被控訴村長に対し昭和二五年一月二〇日付で、昭和二四年産米供出不可能数量届出書(甲第八号証)を提出し、同書記載のごとき事由のため同年度産米供出変更数量三石四斗二升二合全部の供出が不可能である旨届出たのであるが、その後控訴人の同年度産玄米の供出量は最終的に二石四斗七升三合と補正されたのであつて、右三石四斗二升二合全部について供出供出義務が免除されたものでないこと、を認定することができる。従つて、被控訴村長が控訴人に対し昭和二四年産玄米二石四斗七升三合を売渡すべきことを命じたことは正当であつて、なにら違法の点はなく、これが取消を求める控訴人の請求は理由がない。

四、控訴人のその余の請求が理由がないことは、原判決説示の通りであるからこれを引用する。右引用の原判決の認定に牴触する証拠は存しない。

五、されば原判決は相当で本件控訴は理由がなく、自然控訴人が当審において金員の支払を求める予備的代償請求を拡張した部分も排斥を免れないので、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 桑原国朝 二階信二 秦亘)

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