大判例

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福岡高等裁判所 昭和27年(う)2254号・昭27年(う)1638号 判決

もとより多数の威力を示し集団共同の意思を表現しようとする集団行進又は集団示威運動の自由は憲法が集会等表現の自由として保障する基本的人権に属し、法律を以てしても一般的にこれを制限することを得ず、公共の福祉の見地からしても、これを制限するには特に慎重を期し、真に己むを得ない最小限度に止まるべきであることは言を俟たない。しかし本件条例が集団行進又は集団示威運動に届出でを要することとしているのは、街路を行進し、街路を占拠し、又は公共建物或はその周囲の敷地の使用権を排除し、若しくは妨害するものに限つており、且無届で行つた場合にこれが計劃者、指揮者、又は情を知つて参加した者を処罰することとしたのみであつて、公安委員会が適当な条件をつけ得ることを定めているのは、敍上のごとき特定の条件を備えた集団行進又は集団示威運動について、その秩序を維持し、公共の安寧を保持するために必要があると認めた場合に限られていることが明かであり、それは第一条に掲げた前述のごとき集団行進又は、集団示威運動に際し起ることが予想される暴行、脅迫、騒じよう等を制止し、公共の道路、施設の使用を調整し、集団行進又は、集団示威運動の秩序を保持するための対策を事前に講じようとするものであるから、本条例の規定するところは、行進又は示威運動を一般的に制限したものでなく、また所論の如く一切の行進又は示威運動を、公安委員会の許可の対象とし、同委員会に許否の権限を与える広汎な制限とは同一視し難く、まさに公共の福祉を保持するため必要己むを得ない制限といわねばならない。けだし本条例が掲げているような集団行進又は集団示威運動についてさえ事前に何等の対策も講じ得ないものとするなれば、公共の安寧、福祉に脅威を及ぼすような自由の限界を逸脱した行進又は示威運動をなすがまゝに放任するに等しく、憲法が権利の濫用を禁止した趣旨に合致しないからである。それで本条例が前述の如き届出制を採つている点において、憲法に低触し無効であるとの所論は、到底容認するを得ない。

(中略)

しかしながら、本件集会は本条例第一条の規定する場合に該当するに拘らず、届出をしないで行われたばかりでなく、当時の情況は判示のごとく公共の安寧秩序を乱す危険があつたので警察職員においてその解散を命じたところ、これに応じなかつたため、解散が強行されたものであることが原判決挙示の証拠により認められるので警察職員の右解散の措置が公安維持のためにする職務の執行であることは明白であるから、これを否定する所論は当らないのみならず、およそ警察職員がその抽象的職務権限に属する事項に関し、法令の方式に遵拠してこれを行うものである限り、その職務執行の原因たるべき具体的事実を誤認し又は当該事実に対する法規の解釈適用を誤つたとしても、真実その職務の執行を信頼してこれをなしたものであれば、それが著しく常規を逸したものでない限り、一応適法な職務執行行為と解すべきであるから、仮りに所論のごとく該集会が無届であることにより、所定の者が処罰されることは格別、集合そのものを解散せしめることは集会の自由を不当に制限するものと解し得られまた当時該集会を解散せしめることを必要とするまでの公安を害する緊迫した明確な危険は存しなかつたがゆえに該解散の措置は適法でないとしても、警察職員が無届を理由に解散を命じ得るものと考え、且当時の情況から公安を害する危険ありと判断して、該集会の解散を命じ、これに応じないため、解散を強行したものである。以上、該解散の措置はその職務権限に属する職務の執行というに妨げはないから、本件の集会を解散せしめた措置が適法な公務の執行であることを否定すべき理由は存しない。してみると、警察職員の右解散の執行に対し、これを認識しながら暴行を加えてこれを妨害した被告人等の本件所為は公務執行妨害罪を構成し、よつて傷害の結果を生ぜしめたことにより傷害罪が成立することは明白であり、所論のように被告人等の所為が正当防衛に該当するものとは認め難いので、原判決が判示のごとく認定して、被告人等を公務執行妨害罪並びに傷害罪を以て問擬したことはまことに正当であり、原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

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