大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和27年(う)340号・昭27年(う)341号 判決

よつて昭和二十六年九月十六日附起訴状(以下第一起訴状と略称する)記載の公訴事実をこれに対応する原判決一の事実とを対比するに犯罪日時は、第一起訴状によると、昭和二十六年一月二十日頃とあるのに、原判決一の事実には、同年一月中旬頃とあり、又行為者は前者において、被告人及び原審共同被告人松葉昭二、同西村惣之助の三名は共謀してとあるのに、後者において、被告人及び原審共同被告人松葉昭二の両名は共謀してとあり、(右西村惣之助については原判示二において同人は被告人及び右松葉昭二の犯行を幇助したものと認定している)又第一起訴状記載の公訴事実は…………虚偽の公文書を作成し、その頃同市役所に備付け之を行使しとあるのに原判決一においては………虚偽の記載をなし以て虚偽の各公文書を偽造し、その頃同市役所に備付けてこれを一括行使し、とある点においてそれぞれ相違していることを認めることができる。

(イ) しかしながら、犯罪の日時はもとより訴因そのものではないので、前敍のごとき相違があつたからというて訴因に変更を招来したものとはいうことができない。又本件共犯者が公訴事実において三名とあるのを、判決において二名とし、他の一名につき幇助を認定しても訴因の同一性を害するものと認めることはできない。更に右第一起訴状には公訴事実として「昭和二十五年度市民税収納簿中第一七〇二号増田茂吉の市民税第一期分四十二万五百四十円、第二期分四十二万五百四十円が未徴収であるのに、消込印及西村並に北村の印鑑を使用し第一期分については、昭和二十五年十二月二十六日消込係北村厚、第二期分については昭和二十六年一月十二日消込係被告人西村惣之助が夫々収納した如く虚偽の記載をなし、その頃同市役所に備付け之を行使し」とあり、原判文には「昭和二十五年度市民税収納簿中第一七〇二号増田茂吉の市民税第一期分四二〇、五四〇円、第二期分四二〇、五四〇円が未徴収であるのに、同市役所徴税課事務員相被告人西村惣之助より消込印及びその認印、北原厚よりその認印を借用し、右消込印及び各認印を使用して、第一期分については昭和二十五年一二月二六日消込係北村厚、第二期分については昭和二六年一月一二日消込係相被告人西村惣之助においてそれぞれ収納した如く虚偽の記載をなし、以て虚偽の各公文書を偽造し、その頃同市役所に備付けてこれを一括行使し」とあるので、原判決は右公訴事実における二個の公文書の偽造と、該公文書の一括行使の事実を認定したもので右公訴事実と原判示事実とはその訴因を同じうするものであることは極めて明かである。尤も公訴事実には「備付けて之を行使し」と表示しているのであるが、一簿冊中の二欄の公文書を二回に亘り偽造した上該簿冊を行使した場合、該行使の事実を単に行使したと表現してもその実質において一括行使した観念を包含することは言うを須いないところである。従つて右のごとき表現をとらえて公訴事実が一個であるのに判決において二個の事実を認定したものというは表現の末葉にとらわれた皮想の観察たるの譏を免れない。

即ち第一起訴状記載の公訴事実には所論のような訴因に不明の点もなく、又原判決は審判の請求を受けない事件につき審判をした違法もないので論旨は採用することができない。

同第一点の二について。

(ロ) しかし、公務員の収賄罪は公務員がその職務に関し賄賂を収受し又はこれを要求し、若しくは約束することによつて成立するのであるから、その訴因は公務員がその職務に関し賄賂を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束することで、その賄賂の多寡は訴因そのものの範疇に属するものでないと解するを相当とする。従つて判決において収受した賄賂の額につき起訴状記載の公訴事実と異る認定をしたからというてその超過額につき審判の請求を受けない事件につき判決をしたものということはできない。論旨は理由がない。

同第四点について。

昭和二十六年十一月二日附起訴状(以下第二起訴状と略称する)記載の公訴事実第一によると被告人が賄賂として収受した金員はその(一)において五千円、(二)において二万五千円、(六)において五千円であるのに原判決がこれに対応する判示として、三の(1)において一万円、(2)において五万円、(4)において一万円と認定していることは所論のとおりである。

ところで原判決が右事実の認定に供した証拠によると、原判示のごとき職務権限のある被告人は原判示川崎真弘からその店主増田茂吉に対する原判示のごとき市民税の徴収に関し、将来便宜の取扱を受けたい旨の申出を受けこれを了承していたのであるが、その後原判示一のごとき職務権限を有する原審共同被告人松葉昭二に右川崎の申出を伝えていたところ、原判示三の(1)の日時場所で川崎から同判示の趣旨の下に金一万円を提供されるや被告人はその情を知りながら、内金五千円は自己に収受し、内金五千円は右松葉に交付し、以て同人をして被告人と相共に、右川崎の申出に応ぜしめる意図の下に右一万円の交付を受け、かつ、即日該金員中五千円を松葉昭二にその趣旨の下に交付し同人においてもその趣旨の下に収受したこと又原判示三の(2)の五万円は原判示日時場所において右川崎が同判示の趣旨で提供するや、被告人と松葉昭二は共にその趣旨を知りながら被告人において、これが交付を受けた上即日該金員中二万五千円を松葉昭二にその趣旨の下に交付し同人においてもその情を知りながらこれを収受したことをそれぞれ認めることができる。すると、右三の(1)及び(2)の各賄賂は被告人と原審共同被告人松葉昭二において共同して収受したものといわなければならない。

(ハ)しかるに原判決はその主文において原判決の認定にかかる被告人の収賄額全部につきこれを追徴しているのであるが、数人が共同して賄賂を収受し、その金員を分配した場合、その分配額に従つて追徴すべきものとすることは、夙に大審院の判例とするところであるから、原判決は判示三の(1)、(2)の収賄額の点については事実を誤認し且つ、その追徴につき法令の適用を誤つたものといわなければならない。そして右の各違法が判決に影響を及ぼすことが明かであるから原判決中被告人に関する部分は刑事訴訟法第三百九十七条により破棄を免れない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!