福岡高等裁判所 昭和27年(う)762号 判決
しかし原判示事実によると被告人は辻静香と共謀の上判示日時判示木曽論に対し同人が石炭の盜掘をしているのを奇貨とし同人等から金銭を喝取しようと企て判示盜掘の現場で、被告人において、「刑事が来とる、このことはうまく話をつけるから、一杯飲むだけのことをしてやれ、これが表向きになれば掘つた石炭の量の四倍の罰金を出さねばならん、それより来ている刑事に一杯飲ませれば、その刑事がうまく内証にしてくれる」旨、又辻静香においても「刑事が現場だけみるというて今日来ている。自分等も四万円使つたから貴方も刑事に一杯飲ませれば内々で済む」旨交互に申し向け、若しこれに応じなければ刑事々件とされる旨暗示して、同人を畏怖させ、因て即時同所で同人から金一万円の交付をうけたというのであつて、所論の害悪は第三者の行為によるものではなく、被告人は石炭の盜掘をしている木曽論の弱点に乗じ同人から金銭を喝取するために刑事が現場に同行していないのに同行しているように虚偽の事実を申し向け、若しその要求に応じなければ刑事々件とされるかもしれない旨暗示したため同人をして畏怖の念を生ぜしめその畏怖の結果同人をして金銭を交付させたというのであるから、たとい、被告人が木曽論を畏怖させる方法として施用した手段のうちに虚偽の事実を申し向けたとしても、その事実が、同人に畏怖の念を生じさせた一資料となり、その結果金銭を交付させるに至つたもので、その被告人の所為が恐喝罪を構成することは言をまたない。