大判例

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福岡高等裁判所 昭和27年(ネ)674号 判決

控訴人は「原判決中控訴人の敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。(但し、遅延損害金の請求は昭和二七年五月二三日以降に減縮す。)

事実及び証拠の関係は、控訴人において「仮りに控訴人が本件債務を負担したとしても、該債務は昭和二三年一二月一日から二年を経過するとともに民法第一七三条第二号所定の消滅時効に罹り消滅している。原判決二枚目裏九行の『吉村孫吉』は『吉村彌吉こと椎葉彌吉』の誤記であるから訂正する。」と述べ、当審証人椎葉彌吉の証言、当審控訴本人の尋問の結果を援用し、被控訴人において、「本件債権は控訴人主張の時効によつて消滅していない。」と述べた以外は、原判決に示す通りであるからこれを引用する。

三、理  由

原審証人田代隆典・同岩永宏の各証言、当審証人椎葉彌吉の証言の一部(後記措信しない部分を除く)、及び当事者弁論の全趣旨を合せ考えると、被控訴会社は近代工業的機械設備の下に自動車や船舶機関の修理等を営むものであるが、昭和二三年一一月中控訴人は当時所有者楢崎佐一郎から賃借使用していた魚船大成丸の機関を取外して被控訴会社に持参し、その修理を依頼したので、同会社は数日内に修理を終えること及び修理代金は修理の上控訴人に引渡した後遅滞なく支払う約束でこれを承諾し、同月一二日頃オーバホール・運転装置分解修理その他記録四丁の請求書記載の如く金三三、六五四円相当の修理を加えてこれを控訴人に引渡したこと、従つて同代金は遅くとも同月末までには支払期限到来していること、その後同月三〇日頃と同年一二月三〇日頃の二回に、大成丸の機関長椎葉彌吉(同人は大成丸の賃貸借と共に控訴人に雇用され、賃金も控訴人から支払われていた)が控訴人を代理し、右機関の補修的修理を依頼したので被控訴会社は各その頃修理(クラクシヨン・ターミナル・カスケツトニスの修理と電気廻り調整)をなして引渡し、その修理代金は前者の分は金一、五七〇円で後者の分は金七〇〇円であつて、その支払期限について明確な取極めのあつたことは不明であるけれども、一般取引の慣例に照らし、前者の金一、五七〇円の修理代金は同年一二月末日まで、後者の金七〇〇円の修理代金は昭和二四年一月末日までには少くとも支払うべきものであることが認定される。これに反する前記椎葉彌吉の証言及び当審控訴本人の尋問の結果は措信しない。

以上の認定に徴し明らかなように、控訴人は被控訴会社に対し、金三三、六五四円は昭和二三年一一月末日までに、金一、五七〇円は同年一二月末日までに、金七〇〇円は昭和二四年一月末日までに支払うべきであるところ、控訴人は該債務はいずれも民法第一七三条第二号所定の消滅時効によつて消滅していると抗弁するので考えて見るに、同号の居職人とはいわゆる出職人に対する語であつて、理髪師、鍜冶職、裁縫師のように近代工業的機械設備を設置しないで単に自己の仕事場で他人のために仕事をする者を云い、同号の製造人も右と等しく靴屋、指物職のような要するに手工業的製造の範囲を出でない小経営の製造人を意味することはその立法の趣意に照らし明らかであるから、先に認定したところから窺知できるように、相当の近代工業的機械設備を利用して、船舶の機関を修理したる本件修理代金債権が同号の債権に該当しないのは固より当然であつて、本件債権は商事債権として五年の時効に服し、他の短期時効の適用なきものといわねばならない。しかして右債務の支払を求める本件訴状が昭和二七年五月一二日原裁判所に受理されている(このことは記録上明白である)以上控訴人の前記抗弁は到底採用し得ないのである。

されば控訴人は被控訴会社に対し前示三口の修理代金合計金三五、九二四円及びこれに対する支払期限後である昭和二七年五月二三日以降商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払う義務あるので、これが支払を訴求する被控訴会社の請求を認容した原判決は相当で控訴は理由がない。(但し被控訴会社は前記の通り当審において、遅延損害金の請求を昭和二七年五月二三日以降に減縮した。)

よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 桑原国朝 二階信一 秦亘)

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