大判例

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福岡高等裁判所 昭和28年(う)2119号・昭28年(う)2120号 判決

案ずるに、制服を着用した警察官が勤務中、右腰に着装している拳銃には、常時たまが装てんされているべきものであることは一般社会に認められていることであるから、勤務中の警察官から右拳銃を奪取し、苟しくも殺害の目的で、これを人に向けて発射するためその引鉄を引く行為は、その殺害の結果を発生する可能性を有するものであつて実害を生ずる危険があるので右行為の当時、たまたまその拳銃にたまが装てんされていなかつたとしても、殺人未遂罪の成立に影響なく、これを以て不能犯ということはできない。

原判決の認定した原判示第一の三の事実は、被告人は昭和二十八年四月三日午前二時四十分頃、福岡市堅粕三笠町浄福寺南側道路上で、福岡市巡査寄川茂から、公務執行妨害の嫌疑で緊急逮捕されるに際し、逃走しようとして同巡査と格斗したが、同巡査から捻じ伏せられて手錠を掛けられそうになるや突嗟に同巡査を殺害して逃走するに如かずと決意し、隙を窺つて同巡査が右腰に着装していた拳銃を奪取し、直ちに同所において同巡査の右脇腹に銃口を当て、二回に亘り引鉄を引いたが偶々実弾が装てんしてなかつたので殺害の目的を遂げなかつたというのであつて、被告人が自分を緊急逮捕しようとした警察官から奪取した判示拳銃で、同警察官を射殺するためにした判示所為は、前段説明したところにより、その行為の性質上、殺害の結果発生の危険は十分あつたことが明らかであり、殺害の目的を遂げなかつたのは、証拠によると判示寄川巡査が多忙のためたまたま当夜に限り、たまを拳銃に装てんすることを忘却していたことに因るもので、それは右の行為の危険性に何等の消長を及ぼすものではなく、従つて被告人の右所為は殺人罪の実行に着手したものとみるのが相当であるから、原判決が被告人の本件所為を殺人未遂罪に問擬処断したのは、まことに正当であるといわねばならぬ。原判決には所論の違法なく論旨は理由がない。

(後略)

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