福岡高等裁判所 昭和28年(う)675号 判決
不法監禁罪が成立するためには、必ずしも所論の如く暴行或は脅迫の手段を伴わねばならぬものではなく、苟くも物理的な力又は精神的な強制或は欺罔の手段等により、他人を一定の場所若くは施設内から脱出することを困難ならしめ、その意思に反して身体的自由を束縛する状態を継続すれば、ここに同罪が成立するものと解すべきであり、本件の着手行為が戸畑駅前の人目の多い場所で行われ且いわゆる暴行と目せられるほどの行為が伴わなかつたとしても、原判示の通り被告人等が同所において有形的な力を用いて前記森田小美江を貸切自動車内に押込みその両側に被告人及び前記宮崎清士が席を占めた上自動車を疾走させ(且右森田小美江の懇請にも拘らず同女を下車させず)一定の時間同女の脱出を困難ならしめ、かくてその意思に反して身体的自由を束縛している以上、不法監禁罪の成立を妨げるものではない。尚森田小美江の行状に面白くないものがあり、或は被告人に不義理を重ねているからと言つて同女が不法監禁に対し保護せらるべき法益まで失つているわけではなく、又所論のような本件捜査開始に関する動機如何の如きは本件犯罪事実そのものの認定を左右するに足りない。
(後略)