福岡高等裁判所 昭和28年(う)7号 判決
記録によれば所論の精米機は清里村農業組合の所有物で不使用のまま保管のため同組合精米所の片隅に蔵置されていたものであり、被告人は同精米所の使用人として他の精米機を使用して稼働中のものであつて、なるほど同精米所の鍵を保管して居り自由に同精米所に出入していた事実は認められるがそれは単に稼働の便宜に基くものであり決して本件精米所又は精米機の保管を被告人に委託されていたがためではない。そのことは右委託の事実を認むるに足る証拠又は資料が存しない点からしても右組合事務所が右精米所に隣接して居り特に被告人に右委託をする必要があつたものと解し難い点からも推認できる。そうだとすれば本件の精米機は所有者たる組合の代表者の占有に属し、被告人には何等の占有権もなかつたこと明であるからこれを擅に処分した被告人に窃盜罪の成立を認めた原判決は正当であつて所論のように業務上横領罪の成立する余地はない。従つて業務上横領罪の成立を前提とする論旨は理由がない。
(後略)