福岡高等裁判所 昭和28年(う)962号 判決
記録につき調査するのに、所論の通り原審第三回公判調書には主任弁護人の異議の申立として「第一回公判期日における公判調書記載の正確性につき別紙の通り異議の申立があつた」と記載してあるが、記録には「別紙」の異議申立書がないから、右第一回公判調書の如何なる部分につき如何なる趣旨の異議の申立が為されたのか明かでなく、右は刑事訴訟規則第四十八条が刑事訴訟法第五十一条の規定を受けその前段において公判調書の記載の正確性についての異議の申立があつたときは少くともその要旨を調書に記載すべきことを命じている趣旨に添わないのみならず、裁判所書記官が前記異議の申立についての裁判長の意見を調書に記載して署名押印し且裁判長が認印した形跡も記録上全く見受けられないから前記規則第四十八条後段の法意をも無視したものであり、結局原審の訴訟手続は以上の二点において法令違反の瑕疵があるものと言わねばならない。而して右異議の申立の対象たる事項及びその申立の趣意内容並びに之に対する裁判長の意見如何は爾後における訴訟進行上被告人側或は検察官側の攻撃防禦の方法等に影響するものと考えられるから、原審訴訟手続の前記の様な法令違反は延いて判決に影響を及ぼすことが明らかなものと言うべく、従つて右第一点の論旨は理由がある。
(後略)