大判例

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福岡高等裁判所 昭和29年(う)2214号 判決

然れども、原判示事実は要するに被告人は宇部港で貨物を船積して白島附近に回送し、同所において林秀次郎手配の朝鮮向け別船と落合つてこれに右貨物を積替え密輸出することを同人と共謀した上、昭和二十八年五月二十一日宇部港において貨物八十五梱包を機帆船厚陽丸に積込んで出港し、同月二十四日午後九時頃若松市脇田と白島間の海上に至つたが海上保安官に発見されてその目的を遂げなかつたと謂うのであつて、これを挙示の証拠と対照すれば、宇部港において密輸出貨物を積載した厚陽丸は貨物積替のため朝鮮向け別船を求めて既にかねての打合せ場所に到達して待機し貨物の積替をなし得る状態にまで手筈を完了していたことが認められるから、斯の如きは密輸出のための単なる準備行為の程度を超え海上積替という実行々為に接着した行為で密輸出の実行に着手したものと謂うべく、従つてその着手ありとするには所論の如く朝鮮向け別船が予定の場所に待機していたことは必ずしも必要でなく、判文に該事実を明示することも要しないから、原審が原判示第一事実を認定した上密輸出の未遂を以て処断したのはまことに相当であつて毫も法律の解釈を誤つた違法はなく、論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 中村荘十郎)

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