福岡高等裁判所 昭和29年(う)337号・昭29年(う)335号 判決
一人の裁判官によつて構成された地方裁判所の公判調書には、同公判廷に列席した裁判所書記官が署名押印し右裁判官が認印し、その裁判官に差支があるときは裁判所書記官がその事由を附記して署名押印すべきもので、又公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみによつてこれを証明し得るものであること刑事訴訟規則第四十六条刑事訴訟法第五十二条の規定に照らし明らかである。公判調書に、公判廷に一人の裁判官として列席したものと記載された者と、認印者とが別異であることが、その調書で明白なときは裁判官として公判廷に列席し当該公判調書に認印すべき権限ある者が何人であるか不明であるというべく、斯る公判調書は無効のもので、之によつてその公判における裁判所の構成及び訴訟手続の適法であるか否かを知るに由ないものといわねばならぬ。原審第四回公判調書によると、同公判廷は裁判官高原太郎裁判所書記官補萩尾忠親が列席して開廷し、同裁判官が判決を宣告した旨の記載があるに拘わらず、裁判官認印欄には弥富の認印がしてあり、同認印が裁判官高原太郎の認印でないことは記録に徴し明らかである。従つて同公判廷に列席して本件判決の宣告をなした裁判官の何人であるか、同調書に認印すべき権限のある裁判官の何人であるか不明に帰し、右公判調書は無効たるを免れないから、原審第四回公判における裁判所の構成及び訴訟手続の適法であるか否かを認識するに由ないことになる。右の違法は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。
(後略)