福岡高等裁判所 昭和29年(う)366号 判決
又一個の窃盜罪として起訴されている事実を裁判所において二個以上の併合罪として認定するには刑事訴訟法第三一二条第二項の規定に基き訴因の追加又は変更を命じ被告人をして防禦権を尽させる手続を経べきものであるのに、かような手続を経ないで一個の起訴事実を二個の犯罪として認定した点において所論の如く審判の請求を受けない事件につき審判をしたものとは認められないが訴訟手続に法令の違反があるものというべく、しかして右の違法が判決に影響を及ぼすことが明らかである。更に窃盜罪は財物に対する他人の所持を侵し、その意思に反し自己の支配内に移す行為をなすことにより成立するのであるから犯人が同一犯意の下に同一機会に同一管理者の管理にかかる場屋内において数人各別の所有にかかる財物を窃取したときは、所有者であり且つ管理者である者の数個の財物を窃取した場合と同様一個の管理にかかる所持を侵害したものと解すべく、該財物中所有者において場屋内の机の抽斗内に施錠をして保管していたとしても該財物の窃取を以て別個の窃盜罪の成立するものということはできない。従つて原判決がその認定にかかる事実に対し併合罪の規定を適用したのは法律の解釈適用を誤つたものでその誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである。結局原判決は以上諸点の違法があるので刑事訴訟法第三九七条に則り破棄を免れない。論旨はいずれも理由あるに帰する。
(後略)