大判例

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福岡高等裁判所 昭和29年(う)421号・昭29年(う)419号 判決

現行刑事訴訟法が起訴状一本主義を採用同法第二百五十六条第六項に起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し又はその内容を引用してはならない旨規定していることは洵に所論のとおりであり又原審が昭和二十八年七月一日開廷された相被告人末廣薫の職業安定法違反及び窃盜被告事件の公判期日において右事件の訴因第二窃盜の点につき所論引用の証拠調を施行した後同年同月八日の本件第二回公判期日において被告人魯相發外一人の本件賍物故買等被告事件を前記相被告人末廣薫の被告事件に併合被告人魯相發外一人に対する公訴事実につき検察官立証に係る該証拠の再取調を許容これを終了したことは原審第一、二回各公判調書に徴し明白である。弁護人は原審の右の措置は起訴状一本主義の精神に反し裁判官に既に取調べた証拠により予断を生ぜしめる不な裁判の虞あるものであつて刑事訴訟法第二百五十六条第六項、憲法第三十一条第三十七条に各違反する訴訟手続であ公平る旨主張するけれども刑事訴訟法第二百五十六条第六項は検察官が公訴提起をなすに際し裁判官に当該事件につき予断を生ぜしむ虞のある措置を禁止する趣旨に止まり本件の如く別個の被告事件を併合審理する場合にまでこれをその対照としたものではない蓋し甲被告事件につき乙被告事件の内容を知り得る証拠の取調をなした裁判所が其の後乙被告事件を審理したとしてもその一事を以て該裁判所が同事件につき審理に先だち予断を抱いたとは謂われないのであつて当然同一裁判所が前記甲乙両事件の審理をなしうるものと解すべきところ被告事件の併合は裁判所が適当と認める場合に職権又は訴訟関係人の請求によりこれをなすものであるから右の甲乙両事件を甲被告事件の証拠調終了後に併合したとしてもこれを前記の如く別個に審理する場合と区別して考察するの必要は毫も存しないからである。従つて原審の本件措置は刑事訴訟法第二百五十六条第六項に違反しないのは勿論憲法第三十一条にも亦違反しない。次に憲法第三十七条に所謂公平な裁判所とは刑事訴訟法第二十条第二十一条所定の裁判官の除斥及び忌避原因の存しない裁判所を指称することは最高裁判所大法廷判決(昭和二四年四月一二日大法廷判決判例集四巻四号五三五頁参照)の趣旨とするところであり裁判官が他の公判審理により被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し知識を得たからとてその一事を以ては刑事訴訟法上の裁判官の除斥原因に該当しないのは勿論忌避の原因にも該当しない(最高裁判所昭和二八年一〇月六日判決判例集七巻一〇号参照)のであるからこれを目して憲法第三七条違反であるとの論旨は理由がない。(後略)

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