福岡高等裁判所 昭和29年(う)58号 判決
原判決認定事実は被告人は窃盜本犯である相被告人豊田の委託によつて、賍物である本件自転車を、その情を知りながら、判示下村タマに担保に供し同人から三千円を借り受け、その金員を右豊田のため保管中判示のように擅に博奕に費消して、之を横領したというのである。然し、該委託契約は、民法第九〇条の規定があるため、無効に帰する結果、右豊田においては、該借受金の上に、所有権を取得する謂がないから、被告人の右判示所為は、右豊田に対する関係においては、横領罪を構成しない。又被告人が、牙保によつて、前記下村から受け取つた三千円については、之を不正に領得しても、下村に対して、別に横領罪を構成しないことは、なお窃盜犯人がその取得した物を第三者に売却して、代金を受け取り、之を費消しても之がために、別に横領罪に問われないのと、何等異るところはない。原判決が、右三千円の費消についても、被告人に横領の罪責を負わしめたのは、刑法第二百五十二条第一項の解釈適用の誤であり、その誤は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。本論旨は結局理由がある。
(後略)