福岡高等裁判所 昭和29年(う)775号 判決
パチンコ遊技において不正の方法によりパチンコ玉を当り穴に誘導して落し入れ、玉が当り穴に入れば自動的に流出するように仕掛けられた景品用のパチンコ玉を流出させて取得する行為は、玉自体、財産権の目的となることは論ないところであるから、不法領得の意思でパチンコ玉に対する権利者たる遊技店主の所持を排除し、これを自己の事実上の支配内に移すものとしてパチンコ玉に対する窃盜罪を構成するものと解するのが相当である。ところで、原判決の挙示した証拠によると、被告人は判示各パチンコ店で遊技をした際、いずれもパチンコ機の硝子越にひそかに磁石を用い、打つた玉が当り穴に入らずに外れて落下するのを途中で止め、それを当り穴に誘導して落し入れ、よつて機械の自動装置により一回に十五個又は二十個宛の景品用の玉を流出させる方法で、パチンコ玉を判示個数だけ取得した事実を認めることができるので、被告人の所為は前段説明したところによりパチンコ玉に対する窃盜罪を構成することが明らかであるから証拠によつて判示事実を認定しこれを同罪に問擬処断した原判決は正当であつて所論のように事実の認定に誤があるということはできない。論旨は被告人の本件所為は詐欺罪に該当するというけれども、被告人は判示のとおりパチンコ機械の自動装置を利用して玉を不正に取得しただけであつて、未だ遊技店の係員に対し、その玉を正当に取得したもののように装い、これを、商品と交換するため提出した事実は証拠上認められないし、他人に対する欺罔行為はないのであるから論旨は到底首肯し難い。
(後略)