福岡高等裁判所 昭和29年(ネ)567号 判決
控訴人は原判決を取消す、昭和二十八年十二月三十日附及昭和二十九年二月十六日附で被控訴人が訴外山本ナヲの昭和二十八年度事業税に対する異議申立を却下した決定は之を取消す、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とすとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張証拠の提出援用認否はすべて原判決の事実の部に記載せられたのと同一であるからここに之を引用する。
三、理 由
控訴人は其の母訴外山本ナヲと共に菓子小売業を営み同訴外人と連帯して事業税納付義務を負ふものであるところ昭和二十八年度事業税として第一期分九百円年額千八百円を賦課され昭和二十八年九月十五日附昭和二十八年度事業税徴税命書の交付を受けたこと、同訴外人が之を違法として昭和二十八年十月八日被控訴人に対し異議申立を為したところ被控訴人は之を却下し、「再調の結果却下する」旨を記載した十二月三十日附昭和二十八年度事業税異議申立に対する決定通知書を同訴外人に宛発送し、右通知書は昭和二十九年二月十三日同訴外人に到達したこと、昭和二十八年度事業税課税標準算定の基準となる昭和二十七年中の訴外山本ナヲの総収入金額即ち年間の総売上高が金参拾六万五千円であつたことは当事者間に争がない。而して本件の争点は(一)控訴人は課税標準となる所得額の認定を争ひ、地方税法第七百四十四条第九項に依れば事業税の課税標準たる所得額の認定については、右総収入金額から必要経費及十二月分として五万円を控除すべきであるに拘らず被控訴人は総収入金額から必要経費として参拾万円及十二月分として五万円を控除したのみで左記の必要経費を控除しない金額を同訴外人の所得と認定して前記金額の事業税を賦課し、而も同訴外人の右賦課に対する異議申立に対しても之を維持したのは違法である。即ち控訴人主張の控除さるべき必要経費とは(イ)荷車税金年額弐百円(ロ)包装紙代金千五百円(ハ)営業上の電燈料金年額弐千円(ニ)多久村商工会費年額千百円(但し共同の利益をはかる為の任意団体である右会への加入費用で大売出の時の広告料、景品付売出費用等を含む)(ニ)従業員報酬二人分年九万六千円(但し営業者たる山本ナヲ及控訴人の報酬)以上総計拾万八千円であつて之を控除しないで為された前記所得額の決定は違法である。(二)控訴人の被控訴人に対する異議申立に対しては理由を附した決定書を交付しなければならないのに被控訴人は「再調の結果却下する」旨の決定通知書を交付したのみで理由を附してないのは違法であり且却下の理由は違法不当であるから取消を求めるというにある。
之に対する当裁判所の判断は原審判決の理由の部に示されたのと全く同一である。要之原審は、被控訴人は、訴外山本ナヲが信憑性ある記帳をしていなかつたので已むを得ず佐賀県に於て作成した昭和二十七年度所得標準率表を適用して其の所得を推計したこと、此の所得標準率表は合理的に正確に作成されているものと認められ、此の表に基く推計に依り被控訴人が山本ナヲの所得金額につき為したる認定は其の正当なることを首肯せしめるに足るものであり此の推定を覆して前記所得額の認定の過大なること認むるに足るべき証拠なきこと、なお控訴人が必要経費として控除を主張する前記(イ)乃至(ホ)については之を認むるに足るべき何等の立証なきのみならず、前記所得標準率表により算定された必要経費参拾万円は其の性質上控訴人主張の右(イ)乃至(ニ)の如き諸経費をも含めて総括的に算定したものと認められ更に之より控訴人主張の如き諸経費を差引くことは、二重控除となつて、不可なること。訴外山本ナヲと共に営業を営んでいる控訴人及山本ナヲに対する報酬の如きものは控除すべきものに非ざること地方税法及其の施行令の諸規定の解釈上明かなること等を判断したのであつて、当裁判所の認定及見解も右と同一であるから原判決の理由全部をここに引用する。
従つて被控訴人の為した事業税の賦課処分及之に対する異議申立を却下した決定は何れも違法な点がないから其の違法なることを主張して右決定の取消を求める控訴人の本訴請求は失当であつて之を棄却した原判決は相当であるから本件控訴は理由がない。
よつて民事訴訟法第三百八十四条第八十九条に従ひ主文の通り判決する。
(裁判官 野田三夫 中村平四郎 天野清治)