福岡高等裁判所 昭和29年(ネ)736号 判決
控訴人は適式の呼出を受けながら、昭和二九年一二月八日午前一〇時の当審最初の口頭弁論期日に出頭しないので、控訴状記載の事項を陳述したものとみなし、出頭した被控訴人に弁論を命じた。それによると、控訴人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を、被控訴人は主文第一項同旨の判決並びに原判決中仮執行免脱の宣言を取消すとの判決を求める旨申立てた。
事実及び証拠の関係は、控訴人において、「本件約束手形金債務については当事者間に分割弁済の契約成立したので、その弁済期いまだ到来せず、且つ、一部弁済をなしたので、全額の請求は失当である。」と抗弁し、被控訴人において「控訴人が被控訴人の主張事実を争わないのに、仮執行免脱の宣言をなすのは不当である。かかる宣言をなすのは徒らに上訴を促すに過ぎないので、原判決のなした仮執行免脱の宣言を取消すとの判決を求める」と述べた以外は、原判決の「事実」に示されてある通りであるからここに引用する。
三、理 由
当裁判所は以下に附加する外、原判決説示と同一の理由で被控訴人の本訴請求を正当として認容すべきものと認めるので、ここに原判決の「理由」の記載を引用する。控訴人の前記事実に摘示の期限未到来及び一部弁済の各抗弁事実は認むべき証左がないので該抗弁はいずれも採用し得ない。被控訴人の仮執行免脱の宣言取消の申立について考えるに、該申立が民事訴訟法第五一二条第一項の「強制執行を為すべきことを命ずる」裁判を求める申立でないのは固より、原判決の宣言した仮執行免脱の裁判を不服としこれに対し附帯控訴を提起してその取消を求めるものでないことは、被控訴人の弁論の全趣旨に徴し明らかであるところ、本件のように第一審が財産権上の請求に関する被告全部敗訴の判決につき被告(控訴人)に対し担保を供して仮執行を免れることができる旨宣言し、被告において控訴を提起した場合、勝訴の原告(被控訴人)が第一審のなした右仮執行免脱の宣言に不服であるときは、自から当該部分に対し控訴するか、あるいは被告の控訴に附帯してその取消、変更を求むべきであつて(民事訴訟法第一九八条第一項前段第三項、第三七六条第一項、第三八五条を相互に比照せよ)、右控訴、附帯控訴の方法によらないで、仮執行免脱の宣言の取消、変更を求めることはできないと解するのが相当である。裁判所が申立もしくは職権により仮執行の宣言又はその免脱の宣言をなしうること(同法第一九八条)から、右の方法によらないでただちに被控訴人において一旦なされた仮執行免脱の宣言の取消、変更を申立てうるとの解釈は導き出されるものではない。要するに被控訴人の本件申立は許されないものといわねばならない。(たとえ本件申立を前説示の附帯控訴であると解すにしても、原判決のなした仮執行免脱の宣言は相当でこれを取消す理由は認め難いので、該申立の排斥を免れない帰結に至つては軒輊がない)。
よつて、原判決は相当で控訴を理由なしと認め民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し主文の通り判決する。
(裁判官 二階信一 柳原幸雄 秦亘)