大判例

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福岡高等裁判所 昭和30年(う)2597号 判決

弁護人の控訴趣意第一点(審理不尽竝びに事実誤認)及び被告人の控訴趣意(事実誤認)について。

原審第一回公判調書(手続)によれば、被告人は冒頭陳述において、原審相被告人松野信次竝びに同池田重信と共に公訴事実は総てそのとおり間違いない、簡易公判手続によつて審判されても異議はない旨陳述し、他の共同被告人と共に簡易公判手続によつて審理せられるに至つたこと、該審理中引続き行われた被告人の供述中、原審裁判官のどうしてこの様なことをしたのかとの問に対し「池田がトラツクが要ると相談を受けたので話合つていたら、松野からの話合いでこの様な結果になつたのです。申訳ないことをしたと思つています。」との記載があり、更に弁護人春藤猪間吉の「君の方から盗むことは言い出したのか」との問に対し「池田が私に自動車の手配を頼んだので、私が松野に言つたのです。当時松野は生活が苦しかつたのですが盗むことは話合つたのではなく、松野から頼まれてやつたのです。」との各記載があり、原判示第一の被告人に関する窃盗共犯の訴因に関し、被告人が先にした有罪の陳述をひるがえし、これを争ふに至つたのではないかとの疑念を抱かせる供述記載のあることは、まことに弁護人指摘のとおりで、刑事訴訟法第二九一条の三に所謂「簡易公判手続によることが不相当であると認められる」場合ではなかつたかとの疑問はある。しかし、右供述記載を仔細に検討すれば、被告人が原判示第一の犯行を発議したのではなく、生活の苦しかつた松野に同情し松野に仕事口を与える趣旨で同人に運搬用トラツクの手配をするよう話してやつているうちに、松野が本件犯行のことを言い出したのであつて、被告人自身から発議したものではないことを弁解しているものとも解せられ、原審裁判官も亦右趣旨に解して前記簡易公判手続を取消すことなく続行し、訴訟関係人からも何等異議の申立もなくして訴訟手続を終結したことを窺知することができる。従つて前記供述調書の記載内客がその意味不明不正確な点のあることは否み得ないにしても、これを以て直ちに原審訴訟手続に判決に影響を及ぼすべき審理不尽訴訟手続違背の瑕疵があつたとすることはできない。

更に原判決挙示の証拠特に原審相被告人両名の原審公判廷における供述記載、司法警察員竝びに検察官に対する各供述調書、及び被告人の司法巡査竝びに検察官に対する各供述調書によれば、原判示第一の窃盗の犯行は、被告人と原審相被告人両名との共謀による共同犯行であることが優に認められ、所論のような事実誤認の違法があるということはできない(但し原判示中「アーチ1場」とあるのは「アーチ工場」の誤記であり、レール三十本二、七五屯とあるのはレール三十本(二、七五屯)とすべきものである)。従つて論旨はいずれも採用できない。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 厚地政信 裁判官 大曲壮次郎)

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