福岡高等裁判所 昭和30年(う)2764号 判決
原審第二回公判における証人平戸博(九電対馬営業所長)、同草野光(九電対馬発電所長)の各証言によれば対馬では昼間送電はしていないがなお誤送電に基く不慮の災害を防止する為本社業務要則に準じ九電対馬営業所は外線工事の請負会社である九工から提出される作業予定日報に基き遅滞なく作業の日時場所、作業内容を(その作業時間の昼夜の別なく)九電対馬発電所に通知すべき旨右営業所、発電所間の協定により定められ実施されて来て居り特に高圧線工事の場合には厳重に守られて来たこと、並右通知を受けた発電所においてはO、C、B(配電盤開閉器)担当者をしてO、C、Bが解放されているか否かを点検せしめなお営業所から通知のあるまで送電中止と記した木札を同盤に掛けさせる仕組になつていたことを明認し得る。そして被告人が営業所から発電所に対する前示通知の担当責任者であることは争のないところであるからして右通知を怠つた被告人は右業務上の義務違反に基く責を辞するに由ないこと勿論である。
よつて進んで被告人の右義務違反と本件災害との間に因果関係ありや否やの点に付、検討するに本件の誤送電は事故前日七日最後のO、C、B担当者柳沢寛二において同日午後十二時停電と同時にO、C、Bを開放すべき業務上の義務があるに拘らずこれを怠つたことと事故当日所内送電をなすに当り同担当者篠崎忠夫において右送電に先ちO、C、Bの開閉状況を点検すべき固有の業務上の義務を怠つたことに基因すること原判決の確定通りである。しかしながら原判決にも云つている通り被告人において前示通知を怠らなかつたならば篠崎忠夫は前示木札をO、C、Bに掛けたのであろうし、その際恐らくは新に注意を喚起しO、C、Bの開閉状況を点検することにより本件事故を未然に防止し得たことゝ思われる。そうだとすれば被告人の通知義務違反は直接本件事故の原因とはなり得なくとも篠崎忠夫の注意を喚起し得べきに拘らず通知を怠つた為注意を喚起し得なかつた点において本件事故の一条件をなし居るものと云うの外ない。
要するに本件は被告人及原審相被告人等の過失の競合によつて惹起されたものであつてその犯情に甲乙の差あることはともかくとして被告人において全然その責なしとの論旨は採用できない。なお所論は因果関係に付、所謂相当因果関係説の立場に立つもののようであるが同説は何にをもつて結果に対し相当なる原因となすべきや必ずしも明白でない以上当裁判所の遽かに賛同し難いところである。
(裁判長裁判官 柳田躬則 裁判官 青木亮忠 裁判官 尾崎力男)