福岡高等裁判所 昭和30年(う)286号 判決
よつて記録を調査するに、本件公訴事実は窃盗及び強盗未遂の訴因なるところ、原審はその第一回公判期日において被告人が起訴状記載の犯罪事実全部を自白し、検察官、被告人及び弁護人において簡易公判手続による審理に異議がなかつたので、本件訴因全部について簡易公判手続により審理する旨の決定をなした上該手続に基いて審理、判決したことが明らかである。然るに強盗罪は短期一年以上の懲役にあたる事件であるから、刑事訴訟法第二百九十一条の二但書により右強盗未遂の訴因については簡易公判手続によることができないのに拘らず、原審が同手続により審理判決したのは訴訟手続の法令に違反したものと謂うべく、従つて強盗未遂の原判示事実に関する挙示の被害者鳥羽フミエの司法警察員に対する供述調書外六通の書証はいずれも適式に取調べられた適法の証拠とは認め難く右事実については他に被告人の自白を補強すべき証拠がないから前記訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすこと明らかなるものと謂うべく原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。
(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 中村荘十郎)