福岡高等裁判所 昭和30年(く)41号 決定 1955年10月27日
本籍 福岡県○○郡○○町○○番地
住居 福岡県○○郡○○町○○○
少年 畑二郎(仮名) 昭和一二年一〇月二五日生
抗告人 父
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の理由の要旨は、少年の本件非行は、父たる申立人の一時の不心得により、パチンコ等の不健全娯楽に耽り、妻子を顧みず、少年の愛撫訓育に欠くるところのあつたこともその一因をなしたものと思料されるのであるが、今や申立人は、飜然としてその非を悟り、家庭環境の調整に折角努力中であるから、中等少年院送致の原決定を変更されたい、というのである。
申立人において、自己の非を悟り、家庭環境の調整に努力中であるということであれば、申立人本人のためにはもとよりのこと少年のためにも誠に幸せなこととしなければならない。ところで、記録について調査するに、少年は性来意思薄弱であり、非行反覆の裡に看取される更生意欲の漸次的減退、浮浪盜癖の習性化の傾向は、ようやく顕著となりつつあり、原決定も認めるとおり、少年の健全な育成を達するためには、規律ある団体生活と適切な矯正教育とが緊要であつて、保護施設に収容するため少年院に送致する旨の原決定はまことに適切至当の措置であると認められる。少年を今直ちに申立人のもとにおき肉親の愛護に抱擁させることも、少年更生の方途の一であると思料されないこともないが、これによる方法が少年院における訓育にまさる良結果の招来を期待すべき格別の事由があるものとは認められない。原決定は相当であつてこれを取消すべき理由はない。よつて、原決定を不当とし、これが取消変更を求める本件抗告はその理由がないものとし、少年法第三三条第一項に則り主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 筒井義彦 裁判官 柳原幸雄 裁判官 岡林次郎)