福岡高等裁判所 昭和32年(う)462号 判決
起訴状によれば起訴されているのは被告人の昭和二十九年五月二十五日から同年九月二十七日迄の百六十七回に亘る出脇未人外三名に対する合計二十一屯五百瓩の塩の販売行為である。しかるに原判決はその始期こそ同一であるが終期同三十一年二月末日頃までの被告人の塩の販売行為について判決している。尤も販売先、販売回数、販売総数量が両者一致しているところからすると実際には起訴状の販売終期は書損であつて真実起訴の目的としたところと原判決が審判したところのものとは具体的に一致しているのかも知れない。しかし販売行為は殺人、放火、等のように通常同一人により日を接して反覆されることのない種類の行為とは異り通常日を接しても反覆され得る性質のものであるから、行為の日時、期間を無視して単に全期間を通じての販売先、販売回数、取引総数の合致のみを捉えて直ちに同一訴因だと断ずることは理論上許されない。のみならず、これが為被告人の防禦権を害する惧が絶無だとも断言し難い。そうだとすれば被告人の本件販売行為を併合罪と解するか包括一罪と解するかを問わず、原判決は結局審判の請求を受けない事実につき審判したとの譏を免れない。本論旨は結局理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。
(裁判長裁判官 柳田躬則 裁判官 青木亮忠 裁判官 尾崎行男)