福岡高等裁判所 昭和33年(う)193号・昭33年(う)194号 判決
原判決が認定したキヤバレー、エスカイア乗取りの為被告人等の採つた言動(原判決四枚目裏五行目から五枚目裏一行目まで)が一部は偽計に一部は威力(客観的にみて業務遂行の意思を制圧するに足る勢力)に該当すること明白である。そして本件の場合のように日時を異にし、且つ数個の偽計及び威力を用いて、他人の営業を妨害した場合には、各行為合せて刑法第二百三十三条、第二百三十四条の両条にあたる単純一罪たる一個の犯罪を構成するものと解すべく、所論の如き、四月十七日午前〇時頃、被告人等が阪東から引渡書の作成交付を受けた点同日午前中同人からキヤバレー営業の事実上の引継を受けた点のみが、犯罪の成否を決する上において問題とされ得べく、(仮に営業妨害罪が成立するとしても、)その後十七、八日両夜の被告人等の行動は営業引継による結果であつて不問に附すべきであるとの解釈は当らない。勿論営業妨害罪の場合においても、営業中の店舗に投石する場合の如く、投石なる行為によつて、犯罪は既遂の状態となり、その後は営業が妨害を受けているという違法状態が結果として続くにすぎない場合(即ち即時犯として成立する営業妨害罪)もあろうけれども本件の如き形態の場合には前説明のように各行為合して一つの犯罪行為を組成するものと解すべく、その一部を犯罪行為自体と解し、その後の行為を窃盗犯人が他人の財物を窃取し(これにより窃盗罪は既遂となる)その後その財物の所持を継続する場合と同様、既遂後違法状態継続中における放任行為と解すべきではない。
(裁判長裁判官 青木亮忠 裁判官 木下春雄 裁判官 内田八朔)