大判例

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福岡高等裁判所 昭和33年(う)425号・昭33年(う)423号・昭33年(う)424号・昭33年(う)422号・昭33年(う)421号 判決

第二、被告人田中久勝に関する控訴趣意について。

原判示第二、(一)の昭和二十八年四月十日頃福岡市千代町所在の博多税務署に於て博多金物株式会社々員岩本澄一郎から被告人に贈られた現金一万円及び同(二)の昭和二十九年四月上旬頃同所に於て同会社々員阿部正男から同じく被告人に贈られた現金五千円は、いずれも被告人が係長をしていた同税務署法人税課法人第二係員の年度末慰安旅行等計費の一部として寄附されたもので、斯様な寄附は一般慣行上是認されているのに敢えて賄賂性を認めたものであるとし、同じく(三)、(四)、それぞれ歳暮、中元の贈物もしくは水害見舞品として受領されているのであるから同様原判示趣旨の賄賂でないのに拘らず、これを原判示収賄罪に問擬したのは、いずれも事実誤認の違法もしくは法令適用の誤りがあると主張する。

そこでこれらの点について審案してみるのに、公務員に対する贈与が社会的慣習乃至社交的儀礼にすぎないものと認められるか否(反面賄賂として犯罪を構成するものと解すべきか)を決する標準は、その贈与の種類、程度、時機、趣旨、人的関係、その他諸条件を参酌して慎重に判断すべきものであつて、結局社会通念による外はないのであるが、苟も公務員の職務の公正と品位を害し、法秩序と官紀の紊乱に亘る性質の行為は、当然違法性を具備し、賄賂の性質を有するものといわねばならない。そして、原判決挙示の関係証拠竝びに記録を検討しても、被告人と原判示各賄賂者との間には、原判示のような金品の授受を正当ならしめる私的交際関係、その他特段の事情があつたものとは認められず、すべて職務関係を介しての知り合であつて、歳暮、中元、水害見舞等の贈答を交換するような親密な関係にあつたものとは窺知されないのみならず、年度末慰安旅行もしくは宴会計費の一部として公務員が職務上関連のある特定業者に対し個別的に個人として寄附を求めるが如き行為は、まさに前記のような公務員の職務の公正と品位を害し、法秩序と官紀の紊乱を招来する危険のある行為といわねばならないのであつて、その賄賂性を否定する根拠とすることは到底できない。蓋し、官庁一般の催し、その他公共の施設等に対し寄附を求めることはあつても、それらの場合は概ね監督上司の許可諒承のもとになされ、且つそれを実証すべき書類形式等保存されているのが一般であるのに対し、本件に関しては斯様な手続がなされた形跡もなく、又元来寄附を求めらるべき性質のものでもないからである。

従つて原判決の認定はまことに正当であつて論旨はいずれも採用の限りでない。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 厚地政信 裁判官 中島武雄)

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